北海道知床半島沖で観光船が消息を絶って5日目。運航会社の社長がようやく会見を行った。2度土下座をした社長は、当日の出港について「判断は間違っていた」と述べた。

事故後初の会見 土下座で謝罪

4月27日午後5時前、観光船「KAZU I(カズワン)」の運航会社、知床遊覧船の桂田精一社長が記者会見を行った。会見は土下座での謝罪から始まった。

知床遊覧船・桂田精一社長:
事故の原因究明に向けての協力を全力で行っていきます。このたびは大変申し訳ございませんでした。

この記事の画像(16枚)

会見に先立って会社側は、事故に関する資料を配布。2021年の座礁事故で「KAZU I」の船体にできた傷跡の修理状況の写真などを公開した。

さらに、事故当日の出港について次のように説明した。

知床遊覧船・桂田精一社長:
(船長の)豊田氏から、午後の天気が荒れる可能性があるが、明日午前10時からのクルーズは出港可能と報告がありました。海が荒れるようであれば引き返す、条件付き運航を豊田氏と打ち合わせ、当時の出港を決定いたしました。

北海道の知床半島沖で「KAZU I」が消息を絶って5日目。これまで沈黙を貫いてきた桂田社長。
会見に先立ち、桂田社長は午後1時半から乗客の家族に対する説明会に出席した。

当初1時間の予定だった説明会は大幅に伸び、約2時間半が経った午後4時前に終了した。その後、記者会見に臨んだ桂田社長。

知床遊覧船・桂田精一社長:
被害者の家族の方々への対応と救助活動を第一に考え、ご家族に…誠心誠意尽くすことと思っていましたが、私ひとりの力ではうまく対応できませんでした。申し訳ございません。

無線アンテナは壊れ、GPS機器もなく

消息を絶った「KAZU I」はどこに消えたのか。

切り立った崖の奥から回り込むように入ってくる船。事故当日、出発から約10分後の「KAZU I」とみられる映像だ。

海面はまだ穏やかだが、当時現場海域には波浪注意報が出され、周囲に船はない。天候の悪化が予想される中で、なぜ船は出港したのか。適切な安全管理は行われていたのか。

「KAZU I」の運航をめぐっては、船首部分の傷や無線アンテナが壊れ、船との交信ができなかった点など、運航体制の不備を疑わせる数々の問題点が明らかになっている。

新たな問題点も浮上した。事故2日前、網走海上保安署が「KAZU I」を点検した際、船の位置を示す「GPSプロッター」と呼ばれる機器が取り外されていたことが分かった。

船のカーナビとも言われる「GPSプロッター」は、設置の義務はないものの安全運行には必要なものだという。ウトロ漁港の漁師はこう話す。

光洋丸 船長・中田祐介さん:
今の船であれば大概みんなついている物だと思っています。観光船だと、岸の方を見せるために行くわけですから余計危険。

海上保安部に対し、会社側は「整備のために取り外している」と説明したという。この機器が、事故当日に取り付けられていたかはわかっていない。

「最終的な判断は私。間違っていた」

会社の安全管理体制について、桂田精一社長はどう説明したのか。

知床遊覧船・桂田精一社長:
午後に天気が悪くなる場合は、それを船長判断で戻ってもらうことを長年やっています。

ーー社長は(船長に)大丈夫か聞かなかった?

知床遊覧船・桂田精一社長:
やっぱり一番このような先端まで来て、お客さまも「できればちょっとでも走ってほしい」という言葉がすごいあります。ですので、体感していただければ揺れて帰ってくれみたいな、納得していただく方法をなるべくとっていました。

ーー4月23日という早いタイミングで出港を決めたのは誰?

知床遊覧船・桂田精一社長:
最終的に判断は私であります。

ーー2021年に事故があってアンテナが壊れたが、会社として安全管理はできていた?

知床遊覧船・桂田精一社長:
結果として、安全管理は行き届いていなかったということになると思います。今となれば、このような事故を起こしてしまったので、判断を間違ったと感じています。

ーー実際問題、人手不足などあったのか?

知床遊覧船・桂田精一社長:
フェイスブックでそう書かれている?ブラック企業…私はわかりませんでした。

民事・刑事での法的責任を考えざるを得ない過失

加藤綾子キャスター:
社長は、「出港を決めたのは私の判断だ。それが間違っていた」と認めていました。一方、会見では「お客さんから行ってほしい」という強い要望もあったとしていて、悪天候の時に会社がきちんと運行停止など安全対策を取っていたのか、疑問に思ってしまうような言葉も出てきました。

住田裕子弁護士:
まだ船も見つかっていない、被害者の方もまだ全員発見されてない中ですが、この会見を見ただけで法的責任、民事も刑事事件も考えざるを得ない過失ですね。元従業員の証言などで「今までもこういう形でやっていた」と。

住田裕子弁護士:
それから安全について、船長の判断をある程度認めるべきなのに押し切った可能性もあるのではないか。お客さまのためと言いながら、実は利益を追求していた可能性があるのではないかと私は感じました。

(「イット!」4月27日放送より)