デスクトップPCを自宅に持ち帰る社員も
新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートワークによる在宅勤務の導入が各企業で進む中、会社で使用するパソコンを自宅に持ち込んで仕事を進める動きも出ている。
フリーランスIT人材仲介や、ゲーム開発を手がける「ギークス」では現在、管理部門など一部を除いて、9割以上の社員がリモートワークを行っている。
3月末からは、営業部門だけではなく、社内の開発に携わる社員や、エンジニアなどが業務に使うパソコンを自宅に持ち帰ることを許可している。
ゲーム開発業務を止めるわけにはいかないという考えに基づいた判断で、パソコンを運ぶためにかかる費用は会社で負担している。
これまでにテレワークを行う社員のほぼ全員が、ノートパソコンやモニターを持ち帰った。中には、デスクトップ型のパソコンを自宅に持ち帰った社員もいるという。
例えば、ある社員は普段会社で2台のモニターを使い仕事をしているというが、モニター1台を自宅に持ち帰った。

モニターを自宅に持ち帰った社員;
自宅のネット環境に不安があったため、持ち帰る前に担当部署に相談した。普段はモニター2台で作業しているが、自宅ではモニター1台でやっている。
会社がリモートワークを許可してからも、しばらく出社していたが、緊急事態宣言が発令されてからはやはり自宅で作業しようと思って持ち帰った
また、こちらの男性社員はモニターを段ボールで、ノートパソコン本体をかばんに入れて持ち帰った。

モニターとノートPCを持ち帰った社員;
仕事で作業するには、やはり大きいモニターがあったほうが作業効率がよいため、ノートパソコンと一緒に持ち帰った。
ただ、個人的には自宅より会社のほうが仕事は捗る
「良かったこと」も「困ったことも」…
リモートワークをめぐる試行錯誤、社員からは次のように「良かったこと」と「困ったこと」が寄せられているという。
「良かったこと」
・満員電車や通勤時間がないのは楽。
・朝起きてすぐに仕事を始められる、終わってすぐに家事に取り掛かれる。
・集中して制作することができた。
・料理の仕込みができるのがよい。
「困ったこと」
・マンション住民にリモートワークの人が多そうで、たまにマンション共用のネットワークが重たくなったりする。
・椅子が長時間座る仕様ではないため腰がいたい。
・会社だと2画面モニターでやっているが、在宅だと1画面になってやりにくさはある。
・日付、曜日感覚がなくなる。
・運動不足になりそう。

また、会社にかかってきた電話をクラウド経由でそれぞれの社員の携帯電話に転送するシステムも導入した。
これまでは本社に電話がかかってきても、リモートワークのため出社している人が少なく、電話を取るのが大変だった。電話を取り次ごうにも、取り次ぎたい社員が出社していなかった。
今回システムを導入することで、両方の問題の解決につながりそうだ。
業務効率化も…コミュニケーションに課題
ギークスでは、今回のリモートワークの成果と課題を次のように分析する。
【成果】
・もともとリモートワーク導入を要望する声も一定数あったので、新型コロナ感染症の拡大以前から導入を検討していた。
・チームで業務を行っているので、リモートワーク導入前は懸念もあったが、思ったよりうまくリモートワークに移行できたのではないか。
・働く環境整備をする側と、働く側のみんなが柔軟に対応できたことで、大きな問題なく事業継続できている。
・全社的にオンライン面談・商談・会議となったことで、移動時間を省くことができ、営業部門では、場所にこだわらずにセミナーもできるようになったので、業務効率化にもつながっている。
【課題】
・やはり対面で話す機会が少なくなったため、コミュニケーションの希薄化が生まれているかもしれない。
・それを改善するために、「Zoom飲み」などのオンラインでのコミュニケーションも新たに生まれている。
・いつまでこの状態が続くかわからないが、みんなで改善案を考えていきたい。
家庭の環境整備のための費用も支給
ソフトウェアデザインやアプリ開発を手がけるIT企業「フェンリル」では、2月から時差出勤やリモートワークを取り入れ、会社のパソコンの持ち帰りを認めている。
4月からのフルリモートワーク開始の際には、会社で使っているモニターやマウスなどの備品を、希望する社員が自宅で使用できるように発送したという。リモートワークを始めた社員から当初、モニターがないなど職場と違う仕事環境へ不満があがったためだ。

社内ではノートパソコンが多く、セキュリティなどの要件を満たした社員から、パソコンを自宅に持ち帰ったという。
また、システムの動作検証を行う部署では、デスクトップ型のパソコンが多かったが、部署のマネジャーがノートパソコンに設定を再セットアップして、そのノートパソコンを発送したという。
社員が多く出社すると感染リスクが高まるため、マネジャーのみが出社して作業にあたったそうだ。
また、フェンリルでは、自宅でリモートワークを行う際のネットワーク構築や机の購入など、仕事の環境整備に充てられるよう、社員に5万円の一時金も支給した。
パソコンや周辺機器を持ち帰れば、職場と同じ環境が再現されて問題なく仕事ができるという訳ではないという考えに基づいている。

パソコンを送る動きは最近増えているとみられる。
パソコンや周辺機器を配送するサービス「パソコン宅急便」を提供しているヤマト運輸では、ウェブサイトに「ご注文を多くいただいているため、お届けまでにお時間をいただく場合がございます。」と断り書きを記載している。(4月21日時点)
社内の仕事環境を自宅に持ち込むにもいろいろな苦労がうかがえる。
長期化が予想されるリモートワークをめぐる試行錯誤は今後も続きそうだ。
(フジテレビ報道局経済部 西村昌樹記者)