安倍首相とアメリカのペンス副大統領は2月7日、首相官邸で会談し、北朝鮮の核ミサイル開発の放棄に向け、あらゆる手段で圧力を最大限まで高める方針を確認した。

一方、北朝鮮は平昌オリンピックの開会式に金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正氏を北朝鮮高官代表団の一員として派遣した。

 ほほえみ外交を展開する北朝鮮に対して、今考えられる最大の圧力とは何なのか?
元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

(聞き手:ニッポン放送『あさラジ!』高嶋ひでたけ)

北朝鮮のほほえみ外交はすでに成功している

高嶋:
オリンピック憲章ではオリンピックの政治利用はいかんと言っているわけです。

過去にもいろいろ妥協はありましたが、今回ほどこんなに色濃く、主催国のトップが率先して北朝鮮に対して、言いなりと言ったら怒るんだろうけども、いろいろ便宜を図って一緒にやること、これはどう思いますか?

佐藤:
文在寅大統領からすると内政基盤を強化するというのが目的。

例えば、このサムジヨン管弦楽団を観に行きたいという応募はものすごい数になっちゃった。それを考えると草の根から支持されてるんですよ。それだから、文大統領にとっては合理的ですよね。

それから北朝鮮に関しては、これによってほほえみ外交を成功させてはならないじゃなくて、成功しちゃってるんですもう。

高嶋:
既に。

佐藤:
ええ。例えばです、万景峰号が来るときに片道の燃料だけで来ることはない。燃料がたっぷり入ってるんです。

そこで、燃料を入れてくれっていうのは何かというと、そこで国際社会の制裁に対して韓国がどの程度それを破るか、そこのところを見たいわけですよね。

こういう風にして少しずつチェックを入れていく。

高嶋:
踏み絵を踏ませていく。

佐藤:
そうです。それでチェックをして良い感じだなと思うから、妹に行かせると、こういうことですよね。

この妹は隠し玉ですから。昔、プリコフスキーっていうロシアの大統領極東代表が長時間、お父さんの金正日をアテンドしたわけですね。

その時にうちの家族の中で二人、政治適正があるのがいると、子どもの中で。金正恩と金与正。

「でも彼女(与正氏)は女の子だからね」、「これがすごく政治適正あるんですよ」ということを言ってたという話があるんです。帝王学を受けて、きちんと国家を運営するということはどういうことだっていうことを彼女も受けてる一人なんですね。

ですから、(与正氏が)来るっていうのはデカい意味ありますね。

高嶋:
ということは、北側は南の行動、あるいは実際にやってくることに対してどういう答え方をするか判断して、今のところは上手くいってるから金与正を出そうということになった。

佐藤:
そういうことです。トランプさんにしても別途会談の日程は付けなくても、皆で集まるところで顔を会わせることはあるんですね。

そういう所で「やあ」「やあ」っていう自然発生的な形で接触は行われる。すなわち交渉はしないけども会話はする。こういうような形での接触の可能性は十分にありますね。

でもそれ日本もやってるわけでしょ。要するに日米韓の3カ国で交渉するような状況にはいま無いので、日本が中に入って3人で写真を撮ると。

写真を撮るときに仏頂面で一言も話をしないことはないんで、その意味においては3人で会話はするわけですよね。

北朝鮮に対する最大の圧力は「仮想通貨ハッキング問題」の追及

高嶋:
ペンスさんとか安倍さんは最大級の圧力をということを確認し合ってますけども。

佐藤:
でも最大級の圧力を確認し合うって言ったってね、これじゃ何の圧力があるかと。

いま加えられる圧力があるんです。

例えばこういう言い方。「仮想通貨市場に対する北朝鮮によるハッキングと不正流出に関し両国で協力し、真相究明に努める」とかやれば、これは新しい圧力になるし、北朝鮮はカンカンに怒りますよ。

日本の国民だって関心持ってるでしょ、このテーマだったらいま。

高嶋:
北朝鮮が出て来てますからね、韓国がそういう報道してますからね。

佐藤:
韓国の国家情報院が「証拠はないけども」と。あんな話、証拠が出てくるのは最終段階ですからね。

情報機関は全く根拠のないことは言わないですから。ということは、そういう最大限の圧力を切るカードがあるのに切ってないということは何かっていうことですよね。

やはり日本もこれ以上、ケンカしたくない、口先圧力だっていうことですよ。

いまのタイミングで仮想通貨問題を両国で取り上げるっていうのは物すごく意味がありますから、それを強くプレイアップして行けば、これは北朝鮮に対する新しい圧力になりますよ。

高嶋:
確かにそうですよね。前からそういうパソコンを操る軍団があって、世界中で悪いことをやってるわけでしょ。

佐藤:
ハッカーたちがいるわけですからね。

高嶋:
それも当然のように、今回の一件っていうのは関係している。

佐藤:
もしかしたら後ろでは話しているかもしれないけど、少なくとも報道で見る限りにおいてはそこが強くアピールされているとは思えない。

高嶋:
遠慮しているわけですか、いま。

佐藤:
二つの可能性は、一つは遠慮してる可能性だったらまだ外交戦略があると思うんですよね。もし気付かないでそういう話が出てないっていうことだったら、これは日本の外交戦略の能力の問題になりますよね。

だから、いまこの仮想通貨市場が急速に、特に日本で発展している中において、北朝鮮の関与を韓国は疑っているわけでしょ。

これについて日本としてあらゆる方法においてそういうような情報を友好国から調べるとか言えば、これは本当に圧力になりますよ。

高嶋:
安倍さんは、表向きはそういうことは言ってないんですよね。意地でもね。

佐藤:
でも意外と政府関係者がこのラジオ聞いて、おっとそれがあったかと言い始めるかもしれないですけどね。

文在寅大統領は北朝鮮に利用されたと見た方がいい

高嶋:
なんか北朝鮮の思うがまま、やりたい放題みたいなね。相撲を取られちゃう。

佐藤:
残念ながら勝っちゃってますね。ですからそれを認めないといけないんですよ。

北朝鮮のハイジャックを許さないじゃなくて、ハイジャックされている状況をどうするか、ハイジャック対策から入らないといけないと思うんです。

ちょっとね、半歩、日本もアメリカも遅れていると思います。

高嶋:
新聞によると、金与正と金永南さんですか、片やお飾りのお爺さんと片やトップにツーカーの妹と。3人で文在寅さんと話し合うっていうと成果は出るんですかね? テーマはなんですかこれ?

佐藤:
こういうことだと思いますよ。

「じゃあ兄に全部正確に伝えておくよ、それで私のルートからこの人を通じて返事するね」という、北朝鮮との間に非常に堅い正確な連絡ルートができますよね。個人的信頼関係に繋がります。

これは北朝鮮としても、いま切れる最大のカードを切って来たということです。

高嶋:
文在寅さんというのはそこまで深く読んで動いてるんでしょうかね。

佐藤:
読んでないです。

状況対応は結局、こういう風になって、北朝鮮に利用されたと見た方がいいです。だから怖いです。

高嶋:
じゃあ意識の差は非常に激しいじゃないですか。片や分かっていない。

佐藤:
激しいですよ。何も考えてなくて支持率の向上しか考えてないから。トランプに似てるんです。

高嶋:
とりあえずオリンピック、何事も無いように。


2/8(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』より
http://www.1242.com/lf/articles/program/asa/