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防衛省、特に陸上自衛隊が、またも、「日報」問題で揺れている。

すでに、破棄したとしていた文書が、実は「あった」ということが判明。そのまま、一年も放置していたとされる問題だ。
また、日報が存在しない航空自衛隊では「日報相当」の文書が存在したという。
小野寺防衛相は「調査の結果次第では、シビリアンコントロール=文民統制に関わりかねない重大な問題になる」と、重い言葉を吐露している。

この問題に関しては、事案の経緯と責任の追及が、今後、真摯に行われることを期待するが、筆者に気がかりなのは、公文書の一部はたった一年での破棄が、正当化され、ルール化されている点。
確かに、膨大な量の「書類」の保管は場所が必要であり、紙の保管は「空調」などのコストも掛かる。書類を利用するための「整理」、「検索」、「写し」の作成にも、人手とコストが必要だ。

だから、「破棄」がルール化されているわけだろうが、では、「紙」ではなく、「公文書データ」をすべからく、破棄せず、保管したら、どうなるだろうか。

防衛省の情報管理の非効率が露わに

河野統幕長は、この日報問題を受けて「大臣や国会に対する背信行為と言われても仕方がない」と極めて厳しい言葉を使い、対策として隊員の「意識改革」と「システム上の一元化」をあげている。

シビリアンコントロールという観点以外に深刻と感じるのは、文書を探す、報告するのに、時間が掛かっているという点だ。
自衛隊の情報管理は、これまでの三自衛隊ばらばらから、統幕参事官室が一元化して扱うことになっているとはいえ、道程は遠そうだ。
民間企業向けには、名刺の管理を一括化するシステムが販売されているというが、統幕参事官室が、どのようにシステムの一元化を図っているのか、筆者は、不詳だ。しかし、「システム上の一元化」は、前述の様な管理に掛かる時間とコストがどうなるかが重要だろう。

情報は、例えば、取引のツールにもなりえる。日本周辺の情勢が厳しくなればなるほど、多角的な情報収集が必要だろう。
日本国民、そして、日本国在住者の安全に直結しかねないからだ。

日本政府の機関が、外国の政府機関と「これを教えるから、あれを教えて」というような取引をしたくなっても、提供可能な情報についてあるかないか調べて、閣僚に報告するだけで、1年以上かかるというのが現状であるなら、取引になるかどうか、筆者には不明だ。

また、前述の一年で破棄というのも、整理された情報を残すから破棄ということかもしれないが、情報の整理は、往々にして細部の切り捨てにつながりかねない。だが、それこそ、取引相手が求める情報かもしれない。
「公文書データ」をすべからく破棄しなければ、情報の取引拡大につながるかもしれない。

海外での対処策は?

では、外国では、どうしているか。

アメリカ国防省と情報組織および一部の同盟国は、米国で解発された「ラジアント・マーキュリー」というシステムを、2015年現在、世界400か所で運用しているという。
トップシークレットから、メディアに載った記事やプレスリリースのような発表事項のように全くオープンになってしまった情報まで、文字情報や画像を複数の段階に分けてクローズド・サーキットの中で、保管し、個々の人間は、与えられたアクセス権限によって、複数の段階のうち、どのレベルまで見ることができるか決まるというもの。

「ラジアント・マーキュリー」の存在は、秘密ではないが、秘密の共有が、権限を与えられた者たちだけで可能になるというわけだ。

日本に、米国のラジアント・マーキュリー・システムが、リリース可能かどうかは不明だが、将来の日米、あるいは友好国との情報交換を視野に「ラジアント・マーキュリー」を参考に、導入、あるいは国産のシステムを開発することは可能だろうか。

折しも、日本の安全保障にとって重要な「防衛計画大綱」「中期防衛力整備計画」の策定作業が始まり、自民党は、大綱への「提言案」を発表している。
防衛省・自衛隊の情報管理システムについても、今回の「日報」問題を機に政府・国会で、検討することも重要ではないだろうか。