人の密集を防ぐため、チューリップ80万本を刈り取り
新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまなところに影響を及ぼしている。
千葉県佐倉市の「佐倉ふるさと広場」では、管理する佐倉市が感染拡大防止対策として、約100種類、約80万本のチューリップを全て刈り取ったことが4月16日に分かった。
佐倉市によると、佐倉ふるさと広場では4月1日から26日まで、関東最大級の規模とされるチューリップ畑で恒例の「チューリップフェスタ」を開催する予定だったが、7日に緊急事態宣言が発令され、8日からチューリップフェスタの中止を決断。
しかし、中止にしたにもかかわらず、その週の週末、花を見に訪れる来場者が絶えず、過密な状況が見られたうえ、周辺の交通状況にも混乱が生じたことから、週明けの13日(月曜)にチューリップを刈り取ることを決断し、準備が整った15日~16日に刈り取りを実行したのだという。
これを受け、ネット上では「花がかわいそう」という声があふれているが、一方で、「育てる側からしたら、1日も早く刈り取って球根を太らせた方がよい。佐倉市の判断は正しい」と擁護する声もある。
こうした声をどのように受け止めているのか?
佐倉市の担当者に話を聞いた。
佐倉市「苦渋の決断でした」
――80万本のチューリップを刈り取ったことに関して、どんな声が寄せられている?
賛同の声もあれば、反対の声もある状況です。
「チューリップを配布できないか」というようなご意見も頂戴しております。
――ネット上では「花がかわいそう」という声がある。これについてはどう思う?
私たちも同じ気持ちです。苦渋の決断でした。
――刈り取らず、チューリップ畑の出入りを禁止するという決断をするのは難しかった?
8日のイベント中止後、当初は刈り取りをせず、看板を設置し、コーンバーやロープによる出入口の封鎖を行いました。
ところが、11日(土曜)は天気も良く、多くの方が来てしまったため、翌週、やむを得ず、刈り取りに至ったのが実情です。
「1日も早く刈り取って、球根を太らせた方がよい」は常識
――ネット上には「育てる側からしたら、1日も早く刈り取って、球根を太らせた方がよい。佐倉市の判断は正しい」という意見もある。これはどう思う?
これはチューリップ農家の方の考え方で、佐倉市ではやっておりません。
――どういうこと?
チューリップ農家の方は、花を切り取って出荷し、球根は翌年のために育てる。それを繰り返します。
一方、佐倉市では毎年、新しい球根を購入して、育てているんです。そのため、毎年、「チューリップフェスタ」が終わったら、花を刈り取り、球根は病院や学校に配っています。
――「1日も早く刈り取って、球根を太らせた方がよい」は常識?
常識です。
チューリップは受粉が完了すると、めしべに栄養がいくので、めしべを摘み取る。
そうすると、球根に栄養がいくようになり、翌年、花が咲きやすくなると言われています。
――今回の球根はどうする予定?
しばらく育てた後、病院や学校に配れれば、と考えています。
緊急事態宣言が出ている中で、イベントを中止にしても春の花チューリップを見たいと来場者が絶えなかったことから、佐倉市にとっては“苦渋”と表現するほど、難しい決断となった。
ただ、刈り取らなければならなかったのはなんともやるせない結末なので、新型コロナ感染拡大を防ぐには、やはり一人一人の自制が求められる局面なことは肝に銘じておきたい。
【関連記事】
「中止イベント」のチケットを払い戻さなければ“税負担軽減”に…主催者をどう救済?文化庁に聞いた