シリアへの巡航ミサイル攻撃、米・英・仏、それぞれのアピール

「化学兵器の製造、拡散、使用に対する強固な抑止力の確立が目的だ」

トランプ米大統領は、日本時間14日午前10時過ぎ、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして、英・仏とともにシリアの化学兵器連施設に対する攻撃に踏み切った。米軍がシリアを攻撃するのは、昨年4月以来。

今回の攻撃で特徴的だったのは、米・英・仏は、航空機からであれ、軍艦からであれ、使用したのが、精密誘導の巡航ミサイルであったこと。
攻撃後、仏大統領府は、ツイートで、攻撃に参加した複数のラファール戦闘機の離陸の模様を伝える動画を公開した。

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ラファール戦闘機の機体の下には射程250~400㎞の空対地巡航ミサイル、スカルプEGを吊り下げられていた。

また、同国のParly国防相も「夜の地中海の汎用フリゲートから海軍巡航ミサイル(MdCN)が放たれた。標的:シリア政権の化学兵器生産現場」とつぶやき、発射の模様の動画を公開した。

このフリゲートの名前やミサイルの名前は、明らかにされていないが、軍事評論家の岡部いさく氏は「海軍のFREMMフリゲイト、オーヴェルニュ、プロヴァンス、アキテーヌの3隻からMdCN=スカルプEGナヴァル巡航ミサイルを発射」とみている。
つまり、仏空軍と海軍は、同じスカルプEG巡航ミサイルを発射していたというわけだ。

これに対して、英国政府は、複数(4機?)のトーネードGR.4攻撃機から、ストームシャドウ巡航ミサイル(参照:下写真)を放ち、シリア・ホムス西方約25kmの化学兵器関連施設を叩いたと発表した。
なお、ストームシャドウとスカルプEGは、英仏共同開発のミサイルで、同じミサイルを指す。

手の内を明かさず、相手の憶測を誘う米国

米国政府からは、14日18時現在、作戦に参加した艦艇や航空機、それにどんな巡航ミサイルが何発発射されたかの具体的な発表はない。
だが、USNI(米海軍協会)ニュースは「米海軍は東地中海の駆逐艦ドナルド・クックと、第5艦隊指揮下の巡洋艦からトマホークを化学兵器目標に対して発射」「複数のB-1B爆撃機も攻撃に参加」と伝えている。

結局、米軍の攻撃規模の詳細は不明だがロシアの通信社は、今回の攻撃に投入された近郊ミサイルの数を100発以上とし、米爆撃機も参加したと伝えている。
未確認だが、B-1B爆撃機が、射程370㎞のJASSM、または、射程900㎞以上のJASSM-ERステルス巡航ミサイルを使用したならば、史上初ということになるだろう。

いずれにせよ、米・英・仏は、自軍の兵士を犠牲にしない巡航ミサイル攻撃に重点を置いたともいえるだろう。

ロシア防空エリアに米・英・仏の巡航ミサイルが入らなかった謎

ロシアのインターファックス通信は、シリア国内でロシア軍が防空を受け持っているエリアがあるが、米英仏の巡航ミサイルは、そのエリアに入ってこなかったと伝えた。

ロシアは、シリア国内には、強力な防空ミサイルシステム、S-300やS-400を配置しているが、米英仏が、ロシアと事を構えないよう避けたのか。それとも、精密にロシアの防空システムを避けることができることを示したかったのか。それとも、JASSM-ERのようなステルス巡航ミサイルは、ロシアのS-400防空システムの強力なレーダーでも捕捉できなかったということなのか。筆者には不詳だ。

仮に、JASSMがS-400のレーダーで捕捉できないということになるなら、軍事バランス上、大きな課題をロシアに与えることになる。
ちなみに、シリアは、自国の防空部隊が、13発の巡航ミサイルを撃墜したとしている。

トランプ大統領は「アサド政権が化学兵器の使用をやめるまで対応を続ける用意がある」とも発言。
この言葉と関連があるかどうかは不明だが、空母ハリー・S・トルーマンと随伴のイージス艦が、11日に母港ノーフォークを出港している。

さらに、米大西洋艦隊には、最大154発ものトマホーク巡航ミサイルを連射できる巡航ミサイル原潜が2隻いるが、そのうちの1隻、フロリダ(参照:上写真)は、岡部氏によると、2月26日に出港。3月18日にスエズ運河を北上した後の行動が公になっていない。

対シリア巡航ミサイル攻撃と北朝鮮

今回の攻撃は、国連安全保障理事会で、拒否権を持つP5のうち、3か国が足どりを揃えた行動でもあった。話し合いで解決できなければ、米英仏は、団結して、実力行使を行う能力も意思もあるということを敢えて言葉にしないメッセージとして、アサド政権のみならず、全世界に伝えたということかもしれない。

今回、攻撃に参加した英国は、11日、「これから、極東に展開する強襲揚陸艦アルビオンとともに、今後数ヶ月、違法な核計画の資金源となる北朝鮮の海上での取引禁止を監視する国際的な取組に貢献する」ためとして、タイプ23型フリゲート、サザーランド(参照:上写真)を横須賀基地に入港させた。
いわゆる瀬取り対策に英海軍も参加するというわけだ。

そして、翌12日には、横田基地に初めて、英空軍のC-17輸送機(参照:下写真)が飛来した。米国だけでなく、英国も北朝鮮に対応するための行動を始めている。

南北首脳会談、米朝首脳会談を控えた、北朝鮮の金正恩委員長が、今回の米英仏三か国のメッセージをどのように受け取ったのかは、気になるところではある。


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