ロシアの億万長者が友人に借金頼み回る

ロシアの億万長者「オリガルヒ」の中でも最もリッチと言われるロマン・アブラモビッチ氏が、友人たちに借金を頼んで回っていると伝えられ、ロシアに対する経済制裁が効果をあげていることを伺わせる。

英国の複数の大衆紙が伝えたもので「デイリー・メール」電子版4月9日の記事によると、アブラモビッチ氏は「100万ドル(約1億2400万円)を貸してほしい」と知り合いの間を回って必死に頼んでいるという。

アブラモビッチ氏は石油取引で財をなし、ブルームバーグ通信によれば143億ドル(約1兆7700億円)の純資産を所有し、ロシアのいわゆる「オリガルヒ」と呼ばれる億万長者の中でも最もリッチな一人で、プレミアリーグのチェルシーFCのオーナーとしても知られていた。

英チェルシーFCのオーナーだったアブラモビッチ氏
英チェルシーFCのオーナーだったアブラモビッチ氏
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しかしロシアによるウクライナ侵攻が始まると、プーチン大統領に近いこともあって欧米諸国の政府が同氏の資産を凍結や渡航禁止令などの制裁を課したため資金繰りが極めて困難になっていると言われていた。

今回の借金は、アブラモビッチ氏の使用人に対する週75万ドル(約9300万円)の給与が支払えないためだと言われるが、かつては豪華ヨットをポンと約20億ドル(約2480億円)出して買ったことを想起すると、今は本人にすれば「無一文」の窮状なのかもしれない。

アブラモビッチ氏の交友関係はハリウッドやウォール街にも及び、同氏は数多くの資産家に借金を依頼しているようだがいまのところ好意的な反応は得られていないようだと伝えられている。

手元不如意なのはアブラモビッチ氏だけではないようで、「デイリー・メール」紙は別のオリガルヒで新興財閥の最高幹部ピョートル・アーベン氏が、使用人の給与が払えずに解雇すると自家用車の運転手も辞めてしまい、自らは自動車を運転できないので家に閉じこもったきりだと伝えている。

この他、ロシアのオリガルヒたちの自家用ジェット機が制裁を逃れるためにアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに飛来したまま置かれており、その数は100機にも及ぶと米紙「ウォールストリート・ジャーナル」電子版が9日に伝えている。

西欧諸国のロシアに対する3本立ての制裁

今回のロシアによるウクライナ侵攻に対して西欧諸国は…

①ロシアの銀行の国際的決済ネットワーク(SWIFT)からの除外など金融制裁

②ロシアとの輸出入規制など通商制裁

③プーチン政権と蜜月関係の「オリガルヒ」の資産凍結

の3本立ての制裁をおこなった。

ロシアのプーチン大統領
ロシアのプーチン大統領

このうち「オリガルヒ」に対する制裁は間違いなく効果を上げてきていることを英大衆紙などの記事が証明しているようだ。借金に駆け回っている「オリガルヒ」がプーチン大統領に圧力をかけてウクライナ侵攻をやめさせるとは思えないが、社会的に影響力の大きい彼らの没落はに何か大きな変化が迫っていることをロシア国民に気づかせるきっかけになるとも思える。

また、経済活動は変化が起きるまでに時間がかかるものだ。金融や通商面での制裁の効果が出て来ればロシア経済は機能不全に陥り、一日2兆円とも言われるウクライナでの戦費調達ができなくなる日もそう遠くないのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。