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4月14日、米英仏の三カ国がシリアの化学施設を空・海から発射した巡航ミサイルで攻撃した。

米国防省でブリーフを行った 統合参謀本部のケネス・マッケンジー中将によると、標的になったのは、シリアのダマスカス近郊にある、「バルザ研究開発センター」と、ホムスの西にある「ヒム・シンサル化学兵器貯蔵施設」及び、そこから7㎞離れた「ヒム・シンサル強化貯蔵施設」の3か所。
この3か所が選ばれたのは、一般市民への攻撃に伴う、巻き添え被害を最小にするためだったという。また、この3か所の他に、ダマスカスのビル、3棟を破壊した。

「バルザ研究開発センター」は後述するが、特に「ヒム・シンサル化学兵器貯蔵施設」は、今回の作戦の象徴のように、米国のトマホーク巡航ミサイル9発、英国のタイフーン戦闘機に護衛された同国のトーネードGR.4攻撃機が発射したストーム・シャドウ巡航ミサイル8発、そして、仏のラファール戦闘機が発射したスカルプEG空中発射巡航ミサイル2発、そして、スカルプEGをベースに開発され、地中海東部に展開した仏フリゲートLanguedocから発射したMdCN巡航ミサイル3発で破壊された。
つまり、米英仏の3カ国が共同してオペレーションが出来ることを象徴するかのようであった。

さらに、「ヒム・シンサル強化貯蔵施設」は、フランス軍のミラージュ2000戦闘機に護衛された、ラファール戦闘機が発射した7発のスカルプEG巡航ミサイルで破壊された。フランス軍単独の作戦である。

「バルザ研究開発センター」についてだが、ここは米国が攻撃を実施した場所で、トマホーク巡航ミサイル57発、B-1B爆撃機が発射した19発のJASSM-ER巡航ミサイルで攻撃した。射程900㎞余りのJASSM-ERは、今回が実戦初投入である。

なお、アメリカ軍のトマホーク巡航ミサイルは、紅海に展開していたイージス巡洋艦モントレーが30発、同じくイージス駆逐艦ラブーンが7発を発射。また、アラビア海に展開していたイージス駆逐艦ヒギンズが3発を発射していた。また、地中海に展開していた、ヴァージニア級原潜ジョン・ワーナーが6発、発射していた。

これらのうち、JASSM-ERは、今回初めて実戦投入され、ステルス性の高いスタンドオフ巡航ミサイルで、マッケンジー中将が示した概略図によれば、イラク上空に護衛されたB-1B爆撃機から発射されている。
なお、B-1Bを護衛していたのは、EA-6Bグラウラー電子戦機とも言われている。

ところで、JASSM-ERは、航空自衛隊が島嶼防衛などを前提に、採用を検討しているミサイルでもある。

ロシアやシリアは、米・英・仏の巡航ミサイルをシリアの防空システムが迎撃に成功していると強調したが、マッケンジー中将は、シリア軍は、40発以上の対空ミサイルを発射したが、大抵は、米英仏の巡航ミサイルの着弾後に発射されており、これらの迎撃ミサイルは、弾道を描いて飛んでいて、誘導がなかったとみられている。
つまり、旧来のシリア軍の防空システムは、JASSM-ERに歯が立たなかったということだろう。

ロシアは、14日、今回の攻撃の結果から、シリアにS-300防空ミサイル・システムをシリアに供与することを検討し始めたとも伝えられているが、このことは、今回の作戦が、一面では、米・英・仏の地上攻撃用巡航ミサイルが、旧ソ連の対空ミサイルで構築していたシリアの防空システムに完勝したというところだろうか。

なお、ロシアはシリアにS-400防空システムが展開していたが、マッケンジー中将は、シリアに展開していたロシアの防空システムが使用されたという兆候はなかったという。

JASSM-ERに対し、露S-400システムが迎撃ミサイルを発射しなかったとすれば、探知距離400㎞とも言われるS-400の強力なレーダーが、JASSM-ERを捕捉していたものの、ロシア軍に対する攻撃ではない、と判断したのか。
それとも、JASSM-ERのステルス性の高さから、捕捉すらされていなかったのかは不明だが、日本周辺には、S-300システムの流れを汲むとみられる中国のHHQ-9対空ミサイル・システムや北朝鮮のKN-06対空ミサイル・システムが存在する。

防衛省・航空自衛隊としては、JASSM-ERをF-15J戦闘機、または、F-2戦闘機に搭載可能かを中心に検討を進めているようだが、今回の米軍のJASSM-ERの運用から、学ぶことは多いかもしれない。