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南北首脳会談を4月27日に控え、4月20日開かれた、朝鮮労働党の中央委員会総会で、金正恩委員長は、「国家核戦力の建設という歴史的大業を5年もならない短期間に完璧に達成した奇跡的勝利は、朝鮮労働党の並進路線の偉大な勝利であると同時に、英雄的朝鮮人民だけが収められる輝かしい勝利」として、「核の兵器化の完結が検証された条件の下で、今や我々にいかなる核実験と中・長距離、大陸間弾道ロケット試射も不用となり、それによって北部核実験場も自己の使命を果たした」と述べ、20日以降、核実験と中・長距離弾道ミサイル、ICBMの発射実験を中止し、さらに北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場も廃棄する決定書を採択したという。

トランプ大統領「大変よいニュース」と評価

日米防衛首脳会談のため、ワシントンを訪れていた小野寺五典防衛相は「日本にとって、中距離、短距離の弾道ミサイルの放棄がなければ意味がない。核の放棄にも触れていない。これでは不十分」と述べた。

しかし、トランプ米大統領は21日、早速「北朝鮮がすべての核実験停止と主要実験場の閉鎖で合意した。北朝鮮と世界にとって、大変良いニュースだ。我々の首脳会談が楽しみだ」とツイート。

北朝鮮は核兵器開発が完結したので、核実験も、中・長距離弾道ミサイルおよびICBMの発射実験はしない、という理屈のようだが、小野寺防衛相が指摘するように、放棄には触れていない。つまり、これまでに作った核弾頭やミサイルは、放棄しない可能性もあるのだろう。
では、なぜトランプ大統領は、「よいニュース」とツイートしたのだろうか。また、なぜ金正恩委員長は、核実験の停止や弾道ミサイルの試験発射不用としたのだろうか。

B-2Aステルス爆撃機保有数の半分投入「ネプチューン・ファルコン演習」

アメリカの19日夕方、北朝鮮にとっては、朝鮮労働党の中央委員会総会が開かれる20日の朝だろうか、米国・中西部ミネソタ州の都市、ミネアポリスの上空で、複数の飛行機雲が線を成している画像がSNS上に流れた。
米国の防衛専門誌「ディフェンスニュース(4/21インターネット版)」は、米戦略爆撃機B-2Aが10機とKC-10空中給油機4機以上が参加した「ネプチューンファルコン/ネプチューン・ホーク」が実施されたと伝えた。

B-2Aスピリット・ステルス戦略爆撃機は、米軍が20機しか保有していない、戦略戦力の中でも虎の子的存在。火薬を使う通常爆弾なら80発、核爆弾(B-83、B-61)なら16発搭載可能。この他にも、巡航ミサイルやGPS誘導爆弾等、多彩な武器を搭載・運用できる。
つまり、敵側にとっては、レーダー画面上、何もなかった空間に突然、通常爆弾や核爆弾が現れて落ちてくるということに。20機の中には整備中の機体もあるはずだから、10機ともなると、その数は半端ではない。

また、B-2A爆撃機は、全機、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地に配備されていて、そこから、全世界に出撃。作戦終了後は、基本的には、他の基地に着陸せず、ホワイトマン基地に帰ってくるという。
今回、ミネアポリス上空を飛んでいたということは、北北西に向かっていたということだろう。北極圏方向だったとすれば、そこから南へ下れば、ユーラシア大陸の様々なエリアがある。
また、空中給油機が参加していたということは、長時間の飛行が前提ということだろう。同誌によれば、以前、同規模のネプチューンファルコン演習が実施された際には、1機当たりの平均飛行時間は16時間だったという。それだけの時間を掛ければ、朝鮮半島にも十分、届くだろう。

北朝鮮労働党中央委員会総会とネプチューン・ファルコン演習のタイミング

ディフェンスニュースの記事は、演習が4月16日から5月5日までであることと、空軍のGlobal Strike Commandの広報官が「このようなトレーニングの機会は、空軍の即応性を高める」と答えたことを伝えているが、米空軍が、公式には、爆撃機を何機参加させるのか、なぜ、ミネアポリス上空を飛ばしたのかは明らかにしなかったという。

周辺人口も加えれば、300万人を超えると言われるミネアポリスの上を、敢えてB-2Aが10機も飛んだのであれば、それは、メディアやSNSを通じて、全米、全世界に、たちまち、B-2Aが大量に飛行していることを、飛行機雲の画像とともに知られることが前提だったのかもしれない。
タイミングを考えれば、北朝鮮労働党中央委員会総会の直前、あるいは、その最中に、金正恩委員長が知ることになったとしても不思議ではないだろう。

昨年、北朝鮮は、核兵器の運用が出来ないB-1B爆撃機の動向にすら、神経を尖らせていたが、以前、北朝鮮のレーダーは、日本海側を飛行したB-1B爆撃機を捕捉できなかった可能性が指摘されていた。
ステルス爆撃機であるB-2Aは、B-1Bよりはるかにレーダーに捕捉されにくく、核兵器を搭載すれば、その破壊力もはるかに大きい。

北朝鮮メディアを通じて伝えられた金正恩委員長の言葉が、従前に練られたままのものなのか。それとも、事態の変化に合わせて修正されたものなのかは分からないが、万が一にも、修正があり、それが、米政権の目指す目標そのものではなくても、その方向に修正された、と米側が確認したのなら、トランプ米大統領には「大変、よいニュース」ということになるのだろう。


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