目玉政策の異例の見直し
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急経済対策の柱とされる現金給付。「収入が減った世帯向けに30万円」としていた政府の方針は、「1人一律10万円」へと一転した。
この転換により、「30万円給付」の時と比べ、もらえる額が少なくなる世帯が出てくることになった。どのようなケースだろうか。
「1人10万円」で給付額が減る世帯
該当するのは、「30万円」の対象だった世帯のうち、単身世帯や、扶養家族が1人いる2人世帯の場合などだ。
単身で、月収が去年から減り10万円以下になったり、半減して20万円以下に落ち込んだりしたケースだと、当初策だと30万円もらえたところ、今度の給付額は1人分の10万円になる。
夫・専業主婦の夫婦2人や、シングルマザーと子ども1人といった世帯では、月収が15万円以下に減少したり、30万円以下に半減するなどしたケースで、受け取れるはずだった30万円の給付額が、2人分の20万円へと3分の2に減る。
もらえる額が変わらないのは、扶養家族が2人いる3人世帯などで、30万円の給付対象だった場合だ。
夫・専業主婦と子ども1人の世帯で、月収が20万円以下に減ったり、半減して40万円以下になった事例だと、給付額は30万円のまま増減はない。
給付額が増える世帯も
一方で、給付額が増えるケースもある。30万円の給付が予定されていた収入減世帯のうち、扶養家族が3人以上いる場合などがあてはまる。
夫・専業主婦と子どもが2人いる4人世帯で、月収が25万円以下に落ち込んだり、50万円以下に半減するなどしたケースでは、当初もらえる予定だった30万円は、4人分の40万円へと膨らむことになる。
また、収入に関係なく一律給付となったことで、世帯主の収入が一定水準以上あるなどして、30万円の対象からは外れていた世帯も、給付金を受け取れることになった。
こうした世帯では、ゼロだった給付額が一転し、10万円×人数分がもらえる計算だ。
住民基本台帳に記録された全員に
今回の給付は、4月27日時点で住民基本台帳に記録されているすべての人が対象になる。
申請書は世帯主に郵送され、口座番号などを記入し、本人確認書類などとともに、市区町村に返送するしくみ。マイナンバーカード保持者はオンラインでも申請が可能だ。
給付金は原則世帯主の口座に振り込まれ、申請期限は、受付開始日から3か月以内となっている。
遅れの挽回が急務に
緊急事態宣言の対象地域が全国に広がる中、広範囲の人々が生活に負担を強いられるため、収入が減った世帯以外にも給付を拡大したというのが政府の説明だが、30万円から減額された世帯では、救済策としての効果が薄まってしまった面がある。
いったん決めた補正予算案を大幅に見直さなければならなくなり、さらに時間が費やされることにもなった。
政府は準備を急ぎ、5月にも給付を始めたい考えだが、異例の方針転換は幅広い層の生活支援に必要だったと理由付けをするからには、1人1人が早急に現金を手にできるよう、遅れの挽回が急務となる。
【執筆:フジテレビ解説委員 サーティファイド ファイナンシャル プランナー 智田裕一】
【表紙デザイン+図解イラスト:さいとうひさし】