人類共通の脅威である新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大された。全国民への直接給付金、緊急事態宣言の対象の全国拡大など、国内政策も急転回を見せている。今回の放送では、休業補償や緊急時のリーダーシップといったテーマを含め、自民党の石破茂元幹事長をお迎えして掘り下げた。

「ご遺体に触れてもいい」ということが伝わっていない

長野美郷キャスター:
新型コロナウイルスの感染拡大について、これまでの日本政府の対応の評価は?

石破茂 元自民党幹事長:
例えば志村けんさんが亡くなられ、お兄さんは「顔も見られず遺骨も拾えなかった」と悲痛なご様子だった。しかし、特別な収納袋に密閉して納めれば、手袋をした上でご遺体に触れて運ぶことができるということを、確か2月25日に厚生労働省から全都道府県宛に連絡している。火葬の際にすごい温度となりウイルスは死滅しますから。これがお一人お一人に伝わっていない。

石破茂 元自民党幹事長:
危機管理は、想像力を最大限に働かせて予期できないことを予期するというもの。もっと努力が必要。安全保障において徹底的に教え込まれるのは「とにかく悲観的に最も悪い状況を考えろ」ということ。そこまで考えるかというところまで考え、法律的に・オペレーション面はどうするかを考える。
その上で、対処は悲観的にやってはいけない。そのときに狼狽し右往左往してはダメ。そのときはこう変えようと判断する。防衛の仕事のとき、もしゴジラが、UFOが来たらどうするかという話をして批判・嘲笑された。しかし大真面目に、法律や日米安保がどうなるかきちんと議論しておけばいろんな事象に対応できる。

「一律10万円給付」はあるべき形

反町理キャスター:
直接給付について、2点伺いたい。対象者を絞って世帯に30万円を給付するという話からの変化をどうみるか。そして全国一律10万円という政策自体への評価は。

石破茂 元自民党幹事長
最初は「困っている人に20万」のはずだった。それが政治判断で世帯あたり30万に、そして全国民一律10万円に。どうしてこうなったのか。
制限をつけると、役所に行かなければ自分が対象かわからない。しかし今必要なのは迅速性と簡便な手続き。国会議員や高額所得者がもらえるのはおかしい、というのはその通り。でもその議論をしているうちに、本当に困っている大多数の人がどうなるのか。だからこの変化は、あるべき姿になったものと思う。

反町理キャスター
一律という選択肢については。

石破茂 元自民党幹事長:
迅速性・簡便性を重視するならば一律がいい。一つ一つ条件について聞いたら手間がかかる。公務員が減っている中で、その窓口はどうなるか。マイナンバーは一気に普及してはいないが、赤ちゃんからお年寄りまで皆さん番号を持っている。この番号とリンクした口座情報を登録していただければ、瞬時にできるのだが。

緊急事態宣言の全都道府県拡大、その背景とは

反町理キャスター:
緊急事態宣言の範囲が全国に拡大されたことについては。

石破茂 元自民党幹事長
何のために拡大するのか。医師・看護師・技術者やベッドの数にも限りがあり、医療崩壊の危険がある。感染が急拡大し医療崩壊し社会が大混乱し、ということを防ぐために緊急事態宣言をするんです。国民にご理解・ご納得いただくためにこの説明が何度も必要だと私は思う。

反町理キャスター:
例えば、石破さんの地元である鳥取県の感染者数はいまだ1名。緊急事態宣言を全国に広げる点に違和感は?

石破茂 元自民党幹事長
北海道から沖縄まで、その県の実情、医療体制がどれだけの状況におかれているか、医師やベッドの確保状況もそれぞれ違う。指示できるための法的権限を知事に与えるということ。

補償は「次世代からの借金」であることを説明すべき

反町理キャスター:
休業補償の議論は、国と都で押し付け合うような状況になっている。

石破茂 元自民党幹事長:
これは決断の問題。簡単に言えば「補償なくして要請なし」だと思います。ただ、誰の金かと考えたときこれは国民の税金であり、次の世代からの借金。これをこのようにつかわせていただきますという説明がなければならない。財政の持続可能性をどう見極めるか。今は有事、「戦時」であり、見えない敵と戦っている。これを早く終わらせることが政治の力量ではないか。

緊急事態における権力行使のあり方について

長野美郷キャスター:
緊急事態におけるトップの権力行使はどうあるべきか。各国において、権力は正しく行使されているでしょうか?

石破茂 元自民党幹事長
確か3月17日に、ドイツのメルケル首相がコロナ対応についてスピーチをした。これは見事だった。最悪の場合何が起こるか、避けるために何をするべきか。東ドイツ出身の科学者であるメルケル首相が「新しい価値観を作っていかなければいけない、ドイツはどうあるべきか」ということを大演説ではなく率直に淡々と国民に対して語った。一時期下がった支持率も上がった。あれは一つのモデルだと思う。

反町理キャスター:
日本は私権制限に踏み込めない。権力行使の方法に違いがある。

石破茂 元自民党幹事長:
国民がどれだけ政府を信じるかであり、政府がどれだけ国民を信じるか、両方の問題。罰則をかけなければならないのはある意味、強権国家。民主主義というのは信頼がなければ成り立たない。

反町理キャスター:
その物差しでいくと日本はどうなのか。性善説によって成立しているのか?

石破茂 元自民党幹事長:
それが崩れないように努力しましょうということ。政府の言うことは信用できる、出すべき情報が開示されている、と主権者たる国民が納得する為の努力を政府はやっていく。強権・罰則の形にすべきとのご意見もある。しかしその前に、政府の言うことに従い我慢した先にこういう世界があるよね、と議論すべき。全く新しい世界が生まれると思うが、そのリーダーに日本がなれるか。

反町理キャスター:
そんな壮大な話になるんですか?

石破茂 元自民党幹事長:
地球環境の維持の問題がある。そして行き過ぎた金融資本主義による格差の是正。企業とは何なのかという話。首都一極集中は本当に正しいのか。違う世界が展開するときに、日本がリーダーたりえるのか、落伍していくのか。これは政治の責任。

(BSフジLIVE「プライムニュース」4月16日放送)