新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、最前線で闘う医療従事者にむけて感謝を伝えようとする動きは、いま世界各地に広がっている。

日本のスポーツ界でも、あるJリーガーがインスタグラムを立ち上げ、医療従事者への感謝のメッセージとエールを送り始めた。

そしてわずか数日間で、ラグビーやボクシング界にも賛同の輪が広がっている。

 

サッカー選手が何か出来ないか

浦和レッズ 長澤和輝選手 (C)URAWA REDS
浦和レッズ 長澤和輝選手 (C)URAWA REDS
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「#医療従事者は私たちのヒーロー@thanksmedicalworkers」というメッセージと、背を向け左手を高々と挙げるスポーツ界のヒーローたち。

医療従事者に感謝のメッセージを込めたインスタグラムを立ち上げたのは、浦和レッズのMF長澤和輝選手をはじめとする5人のプロサッカー選手たちだ。

「医療機関で働く医療従事者の方とそのご家族が、偏見や差別があったり大変な思いをしているので、選手から何か発信できないかと友人から相談されて」

自身も医療従事者に対して何か出来ないかという思いがあった長澤さんは、早速チームの選手たちと、どのような方法で感謝のメッセージを伝えたらいいか話し合った。

医療従事者は私たちのヒーロー

5人のプロサッカー選手がZoomで意見を出し合った
5人のプロサッカー選手がZoomで意見を出し合った

長澤さんは言う。

「Zoom(ズーム)を使って意見を出し合って、キャッチフレーズを考えたり、お互いにポーズを取り合ったりして、それぞれの想いを一つにまとめていきました。その際には、誰も医療現場に行ってないので、現場が求めていないことや一方的にこちらが考えていることなど、現場との意識の差があってはいけないということを意識しました」

集まった5人はまず、この応援メッセージの目的をあらためて考え、次の3つに決めた。

1)日頃応援してもらっている僕たちスポーツ選手が、率先して応援する側となる

2)サポーターや子どもにとって”ヒーロー”である僕たちが、#医療従事者は私たちのヒーロー”というメッセージを発信することで、医療従事者を少しでも勇気づけ、また差別や偏見を無くす

3)一般の人たちを巻き込み、多くの感謝と応援を医療従事者に届ける

 

左手を突き上げてエールを送る

小野伸二選手のインスタより
小野伸二選手のインスタより

左手を突き上げるポーズは、漫画「ONE PIECE(ワンピース)」から、アイデアを得たと言う。

「みんなで心を一つにしてエールを送るぞという意思表示です。背を向けているのは、エールを送りたい気持ちはあるけど、個人情報が拡散される世の中なので、SNSに顔を出したくないという人も、みんなが一緒になって応援できる企画にしたかったからです」(長澤さん)

4月11日にインスタグラムのアカウントを作成した直後から、「選手が選手を呼んで」(長澤さん)、サッカー界から小野伸二選手、清武弘嗣選手をはじめとした多くの選手・チームが、そしてボクシングの井岡一翔選手やラグビー日本代表の稲垣啓太選手ら他のスポーツの選手達、さらにAK-69さんなど音楽や芸能界からも多くの画像とメッセージが届いた。

清武弘嗣選手のインスタより
清武弘嗣選手のインスタより

「頭が上がらねぇし感謝しても仕切れない」

井岡一翔選手は、リングに向けて左手を振り上げる画像とともに、「私たち日本の皆んなを守る為に、日々命を張って戦ってくださっている医療従事者の皆様 そしてその方達のご家族へ 感謝と私たちの声援が伝わりますように心から感謝申し上げます。」というメッセージを送った。

井岡一翔選手のインスタより
井岡一翔選手のインスタより

稲垣啓太選手の投稿には、日本代表のユニフォーム姿で深々と頭を下げている自身の画像に、「今世界で1番身体張ってるのは医療従事者の方々。頭が上がらねぇし感謝しても仕切れない」というメッセージが添えられていた。

また、一般の方からは「家族に医療従事者がいます。アカウントを見つけて涙が出ました」というメッセージもあった。

稲垣啓太選手のインスタより
稲垣啓太選手のインスタより

医療従事者のために自分たちができること

長澤さんは医療従事者への想いをこう語る。

「気の休まることが許されない緊迫した状況で、日々戦われていると思います。医療従事者の方々への負担を少しでも減らすために自分たちができるのは、まず自身がコロナに感染しないようにしっかりと外出を自粛して家で過ごすこと。そして微力ながらも、応援のメッセージを伝え続けることだと思います」

ファンや子どもたちのヒーロー達が、「医療従事者は私たちのヒーロー」とメッセージを送り続ける。

いまこの瞬間も、感染のリスクを負いながらウイルスと戦っている人々がいることを、私たちは決して忘れてはならない。

AK-69のインスタより
AK-69のインスタより

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。