いま、JR錦糸町駅前にひときわ注目を集めているという一羽のカラスがいる。
注目されたきっかけは4月29日、駅の券売機に乗ったカラスが、近くの女性が使っていたICカードをくちばしで器用に横取りし、さらに券売機に挿入しようと試みている様子が撮影された動画から。

ICカードをおもちゃ代わり!?

取材をした8日も、このカラスは券売機前に立った人からICカードを横取りし、口にくわえたまま堂々と駅から出てくると低空飛行でタクシー乗り場へ。
そのカードをタクシーの屋根に放置するなど、やりたい放題していた。

なぜ、ICカードに興味を示しているのか。
カラスの生態に詳しい、宇都宮大学の杉田昭栄教授は「このカラスは種類としてはハシボソガラス。キラキラしたものによく興味を持ちます。遊びですよね」とICカードをおもちゃ代わりにして遊んでいるのではないかと分析した。

「ほぼ間違いなく人に飼育されていたカラス」
また、このカラスはカメラで撮影している男性の手の上に躊躇なく飛び乗ったり、女性の肩に乗ったりと、人に慣れているという通常では見られない特徴があった。
その人懐っこさから杉田教授は「ほぼ間違いなく人に飼育されていたカラス」と話した。

さらに、駅前に自転車で現れた男性の存在に気付いた“券売機カラス”は、その男性の後を追っていく。
その後、姿を見せたカラスの口にはソーセージと思われるエサをくわえていた。
「たぶん、カラスはあの自転車に乗っている方を知っているようだった。何かしらエサをもらっているように見えたので。カラスは人の顔がよくわかります。一人一人の個性が」(杉田教授)

そして、くわえたソーセージを人間の手が届かない地下鉄の入り口の屋根に隠した。
また、近くの植木鉢でも、何かを取り出して食べていた“券売機カラス”。その植木鉢の中にはパンくずなど、食べ物が少し貯めてあった。
杉田教授によると、エサを分散させるのは、「行動範囲内のどこででも空腹を満たせるようにするため」で、カラスは食べ物を80か所に隠して、それを全部覚えているという研究もあるようだ。
これに対してJR東日本では注意喚起の看板を設置し、カラスを駅員が追い払うなどの対策をしているようだが、カラスを許可なく捕獲や処分はできないという。

理想的な条件がそろう錦糸町駅周辺
では、なぜ錦糸町駅に出没するのか。
「カラスは半径約500メートルといった範囲内でエサを探しているということを、1日中繰り返しています。水を飲める場所(横十間川)や夜にとまって安全に休息をとれるような公園(錦糸公園)など、そういった条件がそろっているのではないかと思います」(杉田教授)

人懐っこさから警戒心が緩んでしまう“券売機カラス”だが、接するときには注意も必要だ。
カラスがくちばしで突く力は強く、露出した部分を何度も突かれた女性スタッフの足首は傷だらけになっていた。
「怪我にもつながったりするので、エサをやったり、過度に人間がカラスに近づかないというのが基本的な対応の仕方かと思います」(杉田教授)
理想的な条件がそろっていることから、JR錦糸町駅に出没している“券売機カラス”。
物珍しさからついつい近寄りたくなってしまうが、杉田教授によると繁殖期を迎える5月は全国的にカラスが神経質になるため、近寄ることは避けたほうがいいという。
(「めざましテレビ」5月9日放送分より)