スーパーの主要3団体から「お願い」文書

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、スーパーや薬局などでよく見るようになったのが、利用客が従業員にマスクや除菌用アルコールなどの在庫があるかどうかを問い合わせている光景だ。

不用意な感染を避けるためにも、「外出の頻度はできる限り少なくして、外に出たときには必要なものを一度に購入したい」と考える人もいるはず。陳列棚にお目当ての商品がないと、つい「○○はないんですか」などと聞いてしまいたくなる気持ちも分からないでもない。

陳列棚にないとつい従業員に聞きたくなるものだが...(画像はイメージ)
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しかし、こうした状況が従業員を知らず知らずのうちに追い詰めてしまっているという。

国内スーパーマーケットの主要3団体(オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会)が4月14日、現場の従業員が過剰な要求に追われていることなどを訴える、お願いの文書を連名で公開したのだ。

過剰な要求に追われ、事業継続を脅かす懸念

「現在、我々スーパーマーケット業界は、新型コロナウイルス感染拡大が続く中、お客様の“食生活を守るライフライン”として事業継続を行うべく、業界をあげて各企業・各従業員が一丸となって、必死に営業を継続しております。
そのような中、政府による緊急事態宣言の発出や大都市圏を中心とする感染の更なる拡大を受けて、実際のお店(現場)では過剰な要求に追われ、また従業員が使用する業務用マスクすら枯渇しつつあり、今後の事業継続を脅かす懸念すら感じております。」
といった内容から始まる文書では3つのお願いが書かれている。
 

1つ目は「過熱報道をお控え頂き、お客様に冷静さを呼び掛けて頂きたい!」
客観的事実の薄い情報や不安感を必要以上に煽る情報が溢れ、利用客が過度に神経質になり、店への要望が膨大になっているため、冷静な買物行動を呼びかけてほしいと訴えている。

2つ目は「お店の営業継続の大切さをお客様に理解頂きたい!」
利用客の“コロナ疲れ”やストレス増加により、連日の買い占め等による品薄や欠品、混雑などに、心無い言葉をかけられることも増加傾向になっている。安定供給のために可能な限りの努力を続けているが、急激な需要増に対しては、商品供給に一時的に支障が出ることについての理解を求めている。

3つ目は「皆様にとってのお店の安心・安全を確保したい!」
販売を継続するための従業員を感染から守るため、利用客には来店時のマスク着用や咳エチケットを徹底、レジに並ぶ際に一定の距離を取ることなどをお願いしている。店も利用客もともに安心・安全な買い物空間を共有できることが最も大切だと訴えている。
 

報道機関に対して、そして報道を通じての自制を求める内容だが、実際、働く従業員はどのような苦悩を抱えているのだろうか。今回の文書公開に関する窓口を務める、オール日本スーパーマーケット協会の担当者に実情を伺った。

背景の1つに従業員からの悲痛な電話

――今回のお願いを発表した理由を教えて。 

二つの背景があります。一つは従業員から悲痛な電話が寄せられたことです。
内容は「会社には言えないが、本音は働くのに恐怖すら覚える。働けるだけましなので耐えているが、小さなことでのクレーム、マスクをせずにレジ前で咳込むなど、あまりにマナーの悪いお客様をどうしたらいいのか。店舗で注意しづらい状況なので協会でサポートいただけないか」というものでした。通常ならあり得ない相談なので、衝撃を受けました。

もう一つは協会の会員(スーパーの社長など)から、消費者が過度に神経質となっていて、それに報道も影響していると相談があったためです。例えば、感染対策としてレジにビニールシートがつるされたと報じられると、他のお店は追随しなければならない状況にあります。対策が広まるのはよいことでもあるのですが、従業員は対応で疲弊してしまっています。

このような背景から、今回のお願いを発表させていただきました。
 

――新型コロナウイルスの影響で、従業員の負担は増えている?

私たちの業界はもともと人手不足ですが、今はそこに販売量の急増や感染疑いのある従業員の休暇なども重なり、正常なシフトを組めない状態にあります。店長などはそのサポートで長期間休めていないはずです。営業時間の短縮などはしているものの、この状態が続くと店舗休業を考える企業も出てくるではないでしょうか。
 

――業界的にはどう影響している?

普段よりも販売量が増えていて、最初に緊急事態宣言が出された地域で110%~120%、全国的には105%程度です。ただ、宣言が出てからは逆に落ち着いた感もあるので、不安による異常購買と推測されます。また客数よりも客単価が伸びているので、一度に購入する量が増えているとも言えます。

家族から止められて辞めるケースも

――退職希望者は増えている?実際にはどんな反応が出ている?

個々の店舗に聞き取りしていないので、詳細な状況までは分かりません。ただ、アルバイト・パートなどには家族から止められて辞める人も出ているといいます。

ですが、退職者が多発しているわけではありません。むしろ採用への応募は増えていて、休業や解雇が多い中で仕事があるだけ幸せという声もあります。一方でマナーに欠ける来店者が怖くて辞めたいくらい恐怖を感じる、多忙で休めずに体が持たないという声もあります。

従業員には、食品のライフラインとしての使命感で頑張ってもらっているのが実情なのです。
 

 ――現場の従業員はどんなことで苦労している?

クレームやマナーなどで節度のないお客様への対応でしょうか。従業員のみならず、他の節度あるお客様の迷惑にもなってしまいます。その対応で従業員が感染となれば、一定期間の休業をせざるを得なくなり、多くのお客様がお買い物できなくなります。

報道についても、あれは危ないこれも危ないとあおると、従業員の負担が増えて売場を維持することの困難につながるので、節度ある報道をお願いできればと思います。
 

アルバイトなどでは辞める人もいるという(画像はイメージ)

「一人一人が少しだけ気遣いをしてほしい」

――来店時に気を付けてほしいことはある?

営業が継続できるだけでも恵まれているので多くはお願いしませんが、従業員の安全衛生を守るのが大前提なので、節度あるご来店をいただければと思います。

具体的にはこちらの4点をお守りいただければと願います。

1.マスクを着用していただくこと
2.他者との適切な間隔をとっていただくこと
3.必要最小限の人数で来店いただくこと
4.必要な商品を購入したらご出店いただくこと


一人一人が少しだけ気遣いをしていただければと思います。マスクがないなら咳エチケットを守る、滞在時間を短くするなどご自身でできることで構いません。息抜きにご来店いただく気持ちは分かりますが、緊急事態宣言も出ているので、もう少し我慢していたければと願います。店舗をクラスターにしないためにもお願いします。
 

マスクを着用し、必要最低限の人数で買い物しよう(画像はイメージ)

――このほか、お願いしたいことはある?

日本は幸い、工場も物流も停止していないので、食料品や日用品は入荷されます。うわさに惑わされず、必要以上の買いだめを避けてほしいですね。マスクやアルコール消毒液などは品薄・欠品が続いていますが、GW明けには充足するはずです。地域の皆さんが日常生活を取り戻すまで、スーパーマーケット業界も頑張るので協力していただければと思います。
 

 ――感染拡大が続く現状について、思うことはある?

商売ができるだけありがたい業界なので、多くのことは要望できません。ただ、業務用マスクとアルコール消毒液は平時より使用量がかなり増えています。ここが枯渇すると営業継続にも支障が出るので、早急になんとか解消いただければと思います。

感染者は医療関係者が守っていただいているので、全国のスーパーの経営者・従業員は非感染者の生活は我々が守るという使命感を持ち、踏ん張って営業していければと思います。

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活に大きな影響を与えているが、それは小売店で働く従業員の人たちも同じはずだ。自戒の念をこめて報道メディアはもちろん、利用客も冷静な行動を心がけたい。

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