日本政府は、ロシアの新興財閥「オリガルヒ」らの資産を新たに凍結。制裁の対象となっているオリガルヒたちは“制裁逃れ”ともとれる動きを見せています。

日本政府 新たに17人を“資産凍結” 対象者は「ある親族」

日本政府は3月15日、新たにプーチン大統領を支える新興財閥「オリガルヒ」の関係者ら17人の資産凍結を発表。これで資産凍結の対象は、プーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領を含めた80人と25の団体になります。

今回新たに追加された17人の対象者のリストをよく見てみると、17人中11人が、3月11日にアメリカが発表した対象者と同じ人物でしたが、「キリル・コヴァリチュク」「ボリス・コヴァリチュク」「ステパン・コヴァリチュク」“コヴァリチュク”とつく名前が多く並んでいます。

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残る6人のうち、5人がすでに日本の経済制裁の対象になっていたユーリー・コヴァリチュク氏の親族だったのです。コヴァリチュク一族とはどんな存在なのでしょうか。

資産1500億円 プーチンの“相棒”

ユーリー・コヴァリチュク氏は、2008年「ロシア版フォーブス」で、初めてロシアの富豪トップ100にランクインした大富豪。プーチン大統領がサンクトペテルブルクの副市長だった時に出会った友人だということです。さらに、ロシア銀行の筆頭株主であり携帯会社や保険会社の株式も保有。現在、その資産はおよそ1500億円。

そして今回、新たに資産凍結の対象となったのがユーリー氏の妻・タチアナ氏、息子のボリス氏、甥にあたるキリル氏にその妻・キーラ氏。そしてキリル氏の息子・ステパン氏です。

この一族の顔である、ユーリー・コヴァリチュク氏について、かつて世界的金融機関のロシア法人社長を務めたリンゲルバック氏は。

元バンク・オブ・アメリカ ロシア法人社長 リンゲルバック氏:
彼はオリガルヒ中のオリガルヒです。昔から、彼はプーチンと友人でありそして隣人でした。ニューヨークタイムズの報告によると、コヴァリチュクはプーチンの後継者という位置まで定着することができました。
 

一方、他のオリガルヒたちには“ある動き”が。インド洋に浮かぶ島、モルディブ付近で巨大なヨットがあります。ロイター通信によると、オリガルヒの1人アレクサンドル・アブラモフ氏が所有するというヨットだといいます。航行しているのが確認されたのは3月4日。近くには他にロシアの億万長者が所有するスーパーヨット5隻が存在しているということです。モルディブは、アメリカへの引き渡し条約がなく制裁回避が目的とみられています。さらに、オリガルヒのスーパーヨットはこんな所でも。

インド洋に浮かぶヨット「資産隠しが難しくなっている時代」

こちらは、以前、番組でも紹介したウクライナの被害状況や関連情報をまとめて3D化した画像。そこには、島と島の間に隠れるように浮かぶ一隻のスーパーヨットが捉えられていました。場所はインド洋のセイシェル諸島。オリガルヒの1人、アレクセイ・モルダショフ氏が所有しているヨットだといいます。

この画像を入手した東京大学・大学院の渡邉英徳教授は。

東京大学大学院 渡邉英徳教授:
例えば資産隠しっていう名目で大陸から遠く離れたこういう島のすぐ近くに停泊させていたとしても民間の地上を撮影する衛星は多数飛んでいるわけですよ。物理的に資産を隠すっていうことが難しくなっている時代だと思います。

経済制裁と“資産隠し”の攻防が繰り広げられる中、世界の注目を集めているのが、ドル建て国債の利払い期限の到来です。

ロシア “デフォルトXデー” 資産の抜け道に「中国」が関係

ドル建て国債の利払いが3月16日に期限を迎え、デフォルト、債務の不履行も懸念されています。では、デフォルトになるとどのような影響が出てくるのでしょうか。

野村総合研究所の木内登英氏によると、国内でルーブルがさらに下落をしていくことにより、輸出入にダメージが生じることや、よりインフレが強まる事態が考えられるそうです。さらに、国債を買った投資家たちが損失を被る可能性も。そのような中で、いま浮上しているのは“抜け道”の存在だといいます。

第一生命経済研究所 首席エコノミストの熊野英生氏によると、いま制裁対象者は、日本・アメリカ・EUに預け入れているお金は資産凍結なので、動かすことはできません。しかし、中国はロシアに対して制裁を加えていないので、人民元に代えることはできるというのです。そして、その人民元を、円やドル、ユーロに代えることで、資産の抜け道になる可能性もあるのではないかということです。

(めざまし8 3月16日放送)