安倍首相による星野源さんコラボ動画投稿の波紋広がる

新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」が発令されてから、14日で1週間が経過した。安倍首相は11日、人の接触削減について「もう一段の協力が必要だ」として、さらなる外出自粛や在宅勤務を呼びかけた。ここ数日、首相官邸でも、安倍首相を訪ねる面会者は最小限に減り、自身も夜の会合を3月中旬から自粛するなど、自ら模範を示している。そんな中、さらなる自粛を呼びかけようと首相が投稿したSNS投稿が波紋を広げている。

12日に安倍首相のツイッターアカウントに投稿された動画には、シンガーソングライター・星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」の動画にあわせ、安倍首相が都内の自宅で、愛犬を抱いたり、読書をしたり、テレビを観たりする様子が映っている。「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています」などと自宅で過ごすことを呼びかける安倍首相のメッセージが書きこまれ、14日時点で1700万回以上再生された。

政界でも賛否・・・菅官房長官「過去最高のいいね!」

この投稿をめぐり、様々な意見が飛び交った。政界では国民民主党の原口国対委員長が、「優雅にお茶を飲んでおられて、かわいいワンちゃんを抱いている姿を国民が見たかったとは思いがたい。感覚がずれているのではないか」と批判し、自民党の岸田政調会長は、「どう受け止められ、評価されるか、丁寧にみていかなければならないのではないかと思う」とやんわり苦言を呈した。

一方、ある政府関係者は「最近は、高齢者より若者の感染が増えている。飲み会にちょっとでも行くと危ない。若者は無症状だから普通に会話をしている感覚でうつしてしまうから怖いんだ」と動画投稿の意義を強調した。

菅官房長官は13日の会見で、動画投稿の経緯について「若者に外出を控えてもらうためだ」と述べ、批判があることについては「いろいろな見方があると思うが、過去最高の35万を超える『いいね!』をいただくなど大きな反響があった。なかなか手の届かない若者にSNSで発信をすることは極めて有効だ」と説明した。

若者も賛否 “もっと良い発信方法がある”

菅官房長官は、35万を超える「いいね!」があったと説明したが、厳密にはツイッターにおける「いいね!」は、喜怒哀楽を示せるFacebookとは異なり、必ずしも“賛同”を意味しているということではない。

そこで、実際に「いいね!」を押した“若者”たちに対し、安倍首相の投稿に共感したのか違和感を覚えたのか、そして首相の発信として有効だったのかについて話を聞いてみた。その受け止め方は様々だった。

「シュールで結構好きだったし、個人的には不謹慎だとは思わない。ただ、コメント欄をみると、批判の嵐で、特に所得がなくて困っている人にとってはイラッとさせる動画だったのかもしれない」(27歳・会社員女性)

「総理のくつろぎタイムには興味が無いし、演出も興ざめだ。逆効果だと思う」(23歳、男性会社員)

「この投稿を見なくても、外出自粛している」(18歳、男子高生)

「これで安倍首相がたたかれるのは可哀想。安倍さんだって、日本のことを1番に考えて、毎日神経をすり切らせて休んでいないのに。批判する人がこんなに多くて、悲しくなった」(17歳・女子高生)

「星野源さんのプロジェクトは、ダンスや楽器などとのコラボレーションであって、ミュージシャンをリスペクトしていない。若者に届けたいのなら、インスタライブでQ&Aに答えるほうが若者にも寄り添おうとしていると感じる」(20歳、女子大学生)

多種多様な国のトップのSNS発信

“やるならInstagramのライブで国民の質問に答えるほうがいい”という若者からのリアルな提案。実はこうした取り組みを既に実践しているリーダーがいる。ニュージーランドのアーダン首相だ。

39歳のアーダン首相は自身のFacebookやInstagramを駆使し、自らが撮影するいわゆる“自撮り”の手法で、動画を投稿している。時には、カジュアルな服装で、自宅で自身の子供を寝かした後にリアルタイムで首相自ら国民の質問に答える様子をFacebookで生配信するなど、その発信はまさに現代流だ。ニュージーランドでは、3月24日に緊急事態宣言が発出されると、25日に警戒レベルが最も高い「レベル4」に引き上げられ、4週間の「ロックダウン」に入った。

13日にアップロードされた動画では、「ロックダウン」後の国内の現状について、首相自らが国民に呼びかけた。このなかで、アーダン首相は次のように語った。

“We are doing really well. We just need to keep going. It’s so important. As the minister of Sports said to me-we don’t want to lose our half time advantage by changing tack or losing our strategy. We have just got to stick with it. Till then, please give me your feedback. What is it that you’ve found the hardest about level 4? Let me know what’s been the toughest for you, and I’ll keep those in mind. ”

「(ロックダウンは)本当に順調です。これを維持することは、とても重要です。(ロックダウンの)折り返し地点である今、この良い状態を台無しにしたくないのです。我慢しなければなりません。それでは、皆さんの声を聞かせてください。「レベル4」で一番苦労したことは何ですか?あなたにとって最も難しいことを聞かせてください。私は必ず心にとめておきます」

(4月13日、アーダン首相のFacebookより)

アーダン首相はこのように述べ、「レベル3」のへ引き下げはそう遠くないとの認識を示し、引き続き国民に対し自粛を求め、「自粛中で辛かったことは何か」などと国民のリアルな声に耳を傾ける姿勢を示した。

これまで、安倍首相は4回にわたり自ら会見を開き、国民に直接説明している。自民党内からは、「安倍首相は、(会見で)もっと生の熱意を出して欲しい。この危機に際して、各国の首脳は個性むき出しになっている」といった声が挙がっているのも事実だ。「緊急事態宣言」発令から1週間が過ぎ、今後安倍首相が、国民の不安や疑問に対しどのように応えていくのか、国民に寄り添ったメッセージを訴えられるか、その注目はさらに高まりそうだ。

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)