緊急事態宣言で休校の延長が決まり、「家の中で子どもにどう学習させようか」と悩んでいる保護者も多い。在宅学習について考えるシリーズ第2回のテーマは、小学生までを対象にした「家にいて英語ネイティブ脳みそになる」。おすすめの英語コンテンツをご紹介するのは、前回に引き続き「英語ネイティブ脳みそ」の著者で、日中英のトライリンガルである白川寧々さん。

第1回「休校は英語ネイティブ脳みそになるチャンス」子どもにおすすめ在宅英語学習法

今回もご自宅のあるサンフランシスコと繋ぎ、様々なヒントを伺った。

良質なコンテンツに触れて気を楽に

ーー第2回は、幼稚園や保育園、小学生までを対象にした「家にいて英語ネイティブ脳みそになる」ですね。特に子どもが小さい家庭では、休校・休園が長引いて、親子ともども気が滅入ったり、相当ストレスもたまっていると思います。

白川さん:
サンフランシスコもいま外出禁止ですが、日本のお父さんお母さんや子どもたちも、コロナまわりが一層厳しくなっていて、明るいことを考えにくいと聞いています。まず英語学習についても、「良質なコンテンツに触れたりするので、現実逃避にもなるよ」「身構えないで気が紛れるかも?くらいの気持ちでやってみたら」と言いたいです。

ーーそうですよね。なかなか「ピンチをチャンスに」という言葉もかけづらい時ではありますが、ここはぜひ英語学習で気を紛らせてもらいましょう。では、まず幼少期の子どもの英語学習について、気を付けることから教えてもらえますか?

白川さん:
日本人のお母さんたちからよく受ける相談が、「子供に英語できるようになってほしいけど、4歳そこらで英語に拒否反応を起こし始める」というものです。アレルギーの原因は様々ですね。「英語の教材だ!」と知育っぽいコンテンツにアレルギーを起こしたのかもしれないし、お母さんたちが「英語だわ(キリっ)」と身構えていたり焦ったりしていたのが、子どもに伝わるからかもしれません。

白川寧々さん
白川寧々さん
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「楽しいものは楽しい」姿勢が大事

ーー確かに「英語学習」というと、子どもより先に親が身構えるところがありますよね。

白川さん:
そういう皆様には、英語圏で大流行している、歌って踊るBaby Sharkや、テンション高すぎるワクワクさんみたいなBlippiを紹介すると、「一瞬でアレルギーが治った!」という報告を受けています。おそらく年齢に関係なく、肩の力を抜いて「楽しいものは楽しい」という姿勢が大事なのでしょう。私も子育てしているので、全く反省しているところなのですが。

ーーでは小学生くらいまでの子どもを対象にした、オンラインで楽しめる寧々さんおススメの英語コンテンツを教えてもらえますか。

白川さん:
同年代の英語圏の子どもたちや英語先進国の子どもが、小さい頃から当たり前のように触れているコンテンツから取り上げると、まず0歳から2歳児におススメの定番、Baby SharkはすべてYouTubeにありますね。

Baby Shark
Baby Shark

3歳から5歳はストーリー性を楽しんでくれる

ーー3歳から5歳の、年少から年長さん向けにはいかがですか?

白川さん:子どもたちが、ストーリー性を楽しんでくれる頃ですね。世界的にバズっている、英国の豚さん家族が主人公のPeppa Pigは、動物が服を着て歩いている謎ワールドですけど、2010年代生まれの子どもはみんな見ているので一般教養としてどうぞ。
4人家族の豚さんたちが、ほのぼのと生きている様子が微笑ましいです。いつもオチがあるので大人も楽しめます。他にも、アニメを見せても構わないのなら、子ども向け英語コンテンツはネットフリックスにも大量にあるので気に入ったものから見せればいいと思います。あとはディズニーも子どもによっては見始めるのかな?最近はディズニープラスも人気ですよね。

Peppa Pig
Peppa Pig

ーーなるほど。実写で面白いものはありますか?

白川さん:
先ほど言ったBlippiという、テンション高めのワクワクさんみたいなお兄さんが、歌ったり踊ったりしながら子どもの好きそうなものを解説してくれる動画シリーズも人気です。ワクワクさんのテンションが高すぎるバージョンだと思ってください。結構シュールですけど、ものの名前を教えてくれたり、かんたんな理科の実験もやってくれるのでバランスが良いですよ。YouTubeで無料です。

パパママは英語の絵本を読み聞かせしよう

ーーオンライン動画以外で、家で子どもが英語を学べる教材はいかがでしょう?

白川さん:
「動画だけでは不安だし、もっとガッツリやりたい」という方は、絵本も取り入れちゃいましょう。読み聞かせは大事ですよ。子どもの脳みそというのはよくできていて、親がDVDなどを見せっぱなしにしても、それを言語だとは認識してくれず、語学が身につくことはないそうです。身につくには子どもと一緒に大人も英語で発音したり、読み聞かせをしたり、会話をしたり、一緒に踊ったり歌ったりする必要があるそうですよ。

ーー読み聞かせですか!?それはお父さんお母さんが、英語出来る人以外は難しいですね・・

白川さん:
大丈夫。別に「全文きれいに発音しろ」ってことじゃありません。実は私も「お子さんが英語の重要性を理解していたら、ちょっとは見せっぱなしでもいい」と思っている派です。でもこの際、お父さんもお母さんもフォニックスをやりましょう。Starfall.comは、アメリカの未就学児〜3年生くらいまでの「こくご」の内容を、インタラクティブにブラウザで学べる上に、フォニックスも学べるスグレモノで、ブラウザだと無料です(*アプリは有料)。これで発音を強化したら、いろいろな本をお父さんお母さんが読み聞かせてあげましょう。小学生くらいのお子さんなら、一緒に発音やろうよって誘ってもいいと思います。

勉強アプリや絵本を親子で学ぼう

ーーオンラインはやはり親と子が一緒にやると楽しみが増えますね。

白川さん:
あと、同じく就学前から小学校低学年まで対象の、かわいい勉強アプリKhan Academy Kidsというのもあります。これはゲイツ財団などから出資を受けている、公益性が高いKhan Acadmyプロデュースなので内容が濃くて全部無料です。英語のインストラクションを聴いて簡単なタスクをこなすミニゲームからなっているので、お子さんと一緒にやっても楽しいし、内容がかなり真面目なので、しばらく放置してハマってもらう対象としても安心ですね。これはフォニックスだけでなく、「さんすう」や「ロジック」もあります。

Khan Acadmy Kids
Khan Acadmy Kids

ーー休校・休園は、親も一緒に英語を学ぶ機会ということですね。では読み聞かせのおススメは何でしょう。

白川さん:
おススメは、まずDr.Suessです。アメリカ英語を習得するつもりなら、60年代からの古典的絵本シリーズのこれがおススメです。アメリカ人なら知っているという一般教養の要素も高いので、ある程度大きくなったお子さんにもおススメできます。英文法が楽しく覚えられますよ。

Wayside School Seriesは、1978年出版の古典的な小学生の本ですけど、私が高校生の時に読んでもやたら笑えたのでおススメしておきます。主人公が小1なので、非常に平易な英語でシュールに面白い話が繰り広げられています。

パパママが児童文学を多読する

ーーこのへんになると、それこそ親世代も読みたいレベルになりますね。

白川さん:
無料で多読できるのは、Books should be free Loyalbooks.comです。子どもの頃に読んだ翻訳児童文学の若草物語、トムソーヤの冒険、ドリトル先生やエルマーシリーズが、実は全部パブリックドメイン(著作権切れ)であることをご存知ですか。エルマーシリーズやドリトル先生はその中でも英語が平易なので、親の多読の入り口や英検3級以上のお子さん向けとしては、懐かしいだろうしおススメです。オーディオ版も無料ですし。つまり、文章を読みながら聴き取ることによって、情景が脳内に浮かぶシチュエーションが、家の中で、しかも無料でつくれるのは、すごくないですか?

ーーこのレベルの英語の本を多読できるようになったら、親も子どもも英語ネイティブ脳みそに近くなっていませんか?

白川さん:
英語ネイティブの子どもと同じレベルの本を楽しく読めたら、学力的には近いですよね。子どもが家でエルマーの冒険を、日英両方で楽しく読めたら、家庭の英語教育はほぼおしまいです。その後からは英語「で」学ぶフェーズに入れるからです。そこから子どもは、勝手に本を読み、YouTubeを視聴し、ネットかリアルで友だちを作り、ニュースを観る人に英語力的にはなれるからです。

「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」に

ーー英語「を」から英語「で」に学びが変わるわけですね。

白川さん:
こうなればもう、「今年のサマーキャンプはコロラド州にしておいたわよ」って、親が勝手に子どもを英語でしゃべる環境に放り込めるし、子どもから「母さん、僕はデザインに興味があるんだけど」「へえ、じゃあQSワールド・ユニバーシティ・ランキングで、うちの予算的に大丈夫そうな大学を自分で調べておきなさいよ」となって、「国外逃亡に、もうちょい背中を押す」以外の労力がかかりません。

ーー英語は子どもであっても「見て聴いて楽しむ」だけでなく、「読む力」もしっかりないとだめですね。

白川さん:
「文法訳読」系の日本の「ダメ英語教育推奨」のおじさんやおばさんを私は大嫌いだけど、それでも「読む力までこぎつけないと本物の言語能力ではない」ことを強調しておきます。だって読めないと英語で情報の受信や発信ができないでしょう。仕事もできないし学校に通うこともできない。とはいえ、発音や動画や歌やコミュニケーションをまず取り入れずに、読む力だけ伸ばすのは本末転倒なので、読む力は大事だけどあくまでゴールだと思ってください。読む力「しか」ない英語力も、読む力がない英語力も、どちらも使い物にならない英語力なので。

ーーなるほど。それでは次回は、中・高生以上の「家にいて英語ネイティブ脳みそになる」方法に

【聞き手:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。