4月13日は、タイの旧正月「ソンクラーン」の初日。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、旧正月の3が日にあたる4月13日から15日までの祝日は平日となった。また、例年多くの観光客や地元の人たちが水をかけあう「水かけ祭り」も中止となった。タイでは4月末まで続く非常事態宣言の最中で、旧正月を迎えても、お祝い気分が全く感じられないまま1日が過ぎていった。

ックパッカーの聖地・カオサン通りも閑散

多くの安宿や土産物店、パブやレストランなどが軒を連ね、“バックパッカーの聖地”とも言われて来たバンコクのカオサン通り。例年、旧正月のこの時期は水かけ祭りが開かれ、大勢の外国人観光客も参加して、水鉄砲などで水をかけあう。タイではもともと、仏像や年長者の手に、水をかけてお清めをするという伝統的な風習があった。それが街で水をかけあって楽しむようになり、気温が高いこの時期の暑さをしのぐ理由もあって、各地でイベントとして定着するようになった。

水かけ祭りでにぎわうカオサン通り・2019年
水かけ祭りでにぎわうカオサン通り・2019年
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しかし、旧正月を迎えた今年の4月13日。水かけ祭りの会場の1つ、カオサン通りは例年と違い、観光客どころか人もほとんど歩いていなかった。通りに面した店も、コンビニエンスストアや持ち帰りの料理を販売する一部のレストランを除いて、すべて閉まっていた。観光客相手に声をかけてくるサソリやワニ肉などの串焼きを売る名物の屋台もなかった。観光客がいないからだろうか。舗装工事が急ピッチに進められていた。

観光客がいないカオサン通りは舗装工事中
観光客がいないカオサン通りは舗装工事中

タイ政府は旧正月の祝日を利用した帰省やお祝いの集まりなどを避け、新型コロナウイルスの感染拡大防止を図ろうと、3日間の祝日を延期した。だが、感染拡大が続く中で、多くのタイ人は非常事態として冷静に受け止めている。バンコクだけでなく、全国各地でおこなわれていた水かけ祭りも当然中止となった。しかし、タイ東北部のローイエット県では4月12日、若者5人が水をかけあって遊んでいたなどとして逮捕されている。

寺院に参拝する人もわずか

参拝客がわずかしかいない寺院ワット・トライミット
参拝客がわずかしかいない寺院ワット・トライミット

また、多くのタイ人はこの旧正月の祝日を利用して寺院に出かけ、仏像や仏塔に水をかけてお清めをしたり、お供えをしたりする。黄金の仏像で知られるバンコクの寺院「ワット・トライミット」。寺院での行事などもすべて禁止されていて、旧正月を迎えた4月13日も、参拝する人の数はわずかだった。もちろん黄金の仏像がある本堂の拝観も受け付けていない。タイ保健省は、自宅で年長者の手に水をかける行為もやめるよう呼びかけている。多くのタイ人は旧正月を迎えても、普段と同じような1日を過ごしたようだ。

黄金の仏像がある本堂も拝観中止
黄金の仏像がある本堂も拝観中止

中華街の市場通りは“マスク・消毒剤通り”に

マスクや消毒剤が並ぶバンコク・サンペーン市場
マスクや消毒剤が並ぶバンコク・サンペーン市場

バンコクの中華街にあるサンペーン市場。問屋街とも呼ばれ、さまざまな雑貨や玩具などを販売する店が並ぶ。旧正月を迎えた4月13日、非常事態宣言の影響もあって、シャッターを閉める店も目立った。しかし、多くの商店はマスクや消毒剤、フェイスガード付きの帽子など、新型コロナウイルスに関連する商品を販売していた。安いものでは5バーツ、日本円で約17円程度のマスクから、布製の手作りマスクまでさまざま。中には、シャネルやアディダスと書かれ、明らかに偽ブランド品とわかるようなものも並ぶ。いつもはぬいぐるみなどを販売していた玩具店も、マスクや消毒剤を大量に販売していて、自宅で使えるビニールプールなども、目立つ店頭に並べていた。問屋街ということで、地方などで販売する目的なのか、大量に購入する人の姿も目立った。

店頭に並ぶさまざまなマスクやフェイスガード付きの帽子
店頭に並ぶさまざまなマスクやフェイスガード付きの帽子
偽ブランド品とみられるマスク
偽ブランド品とみられるマスク

タイではここ数日、新たな感染者の増加が1日数十人となっていて、欧米などと比べ落ち着いた状況となっている。取材をすると、マスクをしていない人が少し増えたような感じがした。しかし、タイ政府は現在、規制を緩和する姿勢を示していない。旧正月期間中のビールやワインなどのお酒の販売は全土で禁止されているが、例年のように大勢で集まってお祝いするような旧正月を送れば、感染が広がるおそれがあり、旧正月後の感染者数が注目されている。

【執筆:FNNバンコク支局 武田絢哉】