新型コロナウイルスについて緊急事態宣言が発出された。外出の自粛要請や企業への休業要請という形で、経済活動の一部を停止させることになる。対象となる7都府県は日本全体のGDPの約半分を担うが、日本経済にはどのような影響があるのか。過去最大の事業規模108兆円規模の経済対策が行われるとされているが、そこに実効性はあるのか。現金給付の評価と課題を含め、自民党の甘利明税調会長を迎えて掘り下げた。

デジタル化の遅れが個人への給付に影響

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長野美郷キャスター:
「一世帯あたり30万円」の現金給付について、新たに給付基準が示された。金額や対象が一部の世帯になってしまうことへの評価はいかがですか?

甘利明 自民党税制調査会長:
迅速に行うべきで、全国民一律に支給した方がいい。高額所得者についても、課税所得として申告すれば半分以上が税金として返ってくるからよいと思ったのだが、やはり「大金持ちにも渡すのか」といったせめぎ合いはあったのでは。基準については、今までよりも今回のものがわかりやすいですよ。

反町理キャスター:
非課税水準に達しているかどうかなど、これまでに示されていた基準はわかりにくかった。スピード重視なのか、対象者をしっかり定めて手厚くするのかといった議論の結果、ルールも簡素化されたということがあるのでは?

甘利明 自民党税制調査会長:
生きながらえるために必要な人にお金が瞬時に届くべき。この事態で学ぶべきは、これだけデジタル化が叫ばれながら、国民にマイナンバーカードが届ききっていないこと。まだ2000万人ぐらいです。これに紐づいて銀行口座が届け出られていれば、給付は1分でできます。所得の把握ができていれば、電子的な処理で所得に応じた給付を瞬時にできます。日本がアナログであることの問題点を、全国民に共有してもらいたい。個人番号についてデジタル対応できている他国は、あっという間に給付できている。

事業者への給付金、200万円の背景は?

反町理キャスター:
現在のところ、個人や事業者へ給付金も先ほどの30万円も、すべて単発のもの。終息がいつになるかわからない状況で、単発の施策で済むのか。6月以降もこの状況が続く場合、再給付やその原資となる2次補正予算については?

甘利明 自民党税制調査会長:
企業への給付については、平均的に中小企業から毎月出ていくお金が50万円で、200万円あれば4か月は耐えてもらえるという粗い計算があるのでは。事態の推移を見て必要な政策を適宜打つと政府も約束している。本格的な経済政策打つまでの間、人も企業もなんとか耐え抜き繋いでほしい、その支援を政府も行うということ。

反町理キャスター:
それぞれの支給条件、知っていることと知っていないことによる損得の差が大きい。いわば情報格差が貧富の格差に直結するのでは。

甘利明 自民党税制調査会長:
いろんなところに窓口を設け、情報にすぐアクセスできるようQRコードなど頒布している。どんな人でも平等にアクセスできるよう全力でやっていますし、やっていきます。

なぜ協力金の給付はできて、休業補償はできないのか?

反町理キャスター:
東京都は休業に対する協力金の支給を発表した。都内の企業のほうが手厚い対応になっている。他の6府県の事業者に対する追加支援、その要請の可能性は。

甘利明 自民党税制調査会長:
休業店舗の取引先など際限がなくなってしまうため、国にも都にも「休業補償」はできない。都の「協力金」はまた別の種類のお金。そして、自治体が主体性を持って行う政策を全く均一にすることは無理。ただ、政策案件としてこの後様々な問題が出てくるかと思うが、緊急経済対策は事態の推移を見ながら適宜適切に行う。これで終わりというわけではない。

コロナ後も見据えた経済的な影響について

反町理キャスター:
宣言の期間が長引くことにより、経済の休眠生活が長引く。運輸・金融・サプライチェーンの停止状態がなにをもたらすのか。政府・自民党は、かつてなく厳しい淘汰状況が生まれる可能性が目の前にあると見ている?

甘利明 自民党税制調査会長:
そのように見ている。休眠後に駆け出す際の準備運動ができるだけ短くてすむように策を打っており、これからも打っていく。休眠前よりもバージョンアップしたものを立ち上げられるような施策。具体的には、より生産性が良い状態となって生まれ変わるために設備投資への補助金などを出している。

甘利明 自民党税制調査会長
甘利明 自民党税制調査会長

反町理キャスター:
世界経済を見据えるとき、コロナ後についてどこに注力すべきでしょう。

甘利明 自民党税制調査会長:
経済・安全保障の観点から見ると、早くコロナから回復した企業やファンドは回復していない国の重要企業を安く買えるチャンスと見る。これに警戒すること。企業にとっては、ダメージをどのように抑えるべきか学ぶ機会。国としては先に回復した国のファンドが何を狙ってくるかを注視する。中国が早く回復すれば、世界各国の重要企業を底値で買う手を打ってくる。傍観してはならない

反町理キャスター:
コロナ後に向けてのステップ、企業が構造改革すべきだという話を閣僚から聞いたことがない。政府が国民の痛みに配慮する政策・宣伝にエネルギーを割きすぎなのでは、というギャップも感じるが。

甘利明 自民党税制調査会長:
それは役割分担。政府は「今・そこ」にある問題を解決する責任がある。もちろん政府は先のことも考えているが、まず現状の問題解決に注力する。そして中長期的視点に立ったこれからへの提言は与党がしっかりやればいい。

(BSフジLIVE「プライムニュース」4月10日放送)