緊急事態宣言で休校の延長が決まり、「家の中で子どもにどう学習させようか」と悩んでいる保護者も多い。しかし休校も考えようによっては、子どもが学校から離れて自分のペースで学びを進めるいい機会でもある。

そこで今回はオンライン活用も含めた様々な在宅学習の可能性についてシリーズで考える。

初回のテーマは「家にいて英語ネイティブ脳みそになるには」。「英語ネイティブ脳みそ」の著者で日中英のトライリンガルである白川寧々さんに、ご自宅のあるサンフランシスコから様々なヒントを伺った。

「英語圏の住人」になる方法は?

「英語ネイティブ脳みそ」著者 白川寧々さん

ーーまず具体的な学習の話に入る前に、白川さんがどうやって英語をマスターしたのかを伺いたいのですが。白川さんは中国出身で6歳から日本。中学・高校時代に独学で英語を学んで、アメリカのデューク大学に留学、そしてMITのMBAを修了しているんですよね。

 白川さん:
新しい情報を取り入れたり、思考したり、思いを発信したり、友達をつくったりするのに、英語が足かせにならない状態のことを、私は著書で「ネイティブ脳みそを持っている」と表現しています。「ネイティブ脳みそ」を手に入れるには、自分を主体にして、「英語圏の住人」が触れているメディアを消費したり発信したりする必要があって、学校や塾によって与えられるのを待っていてはだめです。私が高校生のときはYouTubeもネットフリックスもTED Talksも無い時代でしたが、ウォークマンで通学途中ひたすらハリポタのオーディオブックを聴いたり、紀伊国屋に並んでいるペーパーバック小説を漁ったり、気に入った映画のDVDを英語字幕でくりかえし観たりしていました。

 

ーーなるほど。確かにネットが今ほど普及していなかった時代でも、本や映画など英語に触れる方法はありましたね。

 白川さん:
デュークやMITで出会った、英語が流暢な非英語圏の友人たちも、インターナショナルスクール出身などではない学生がたくさんいましたが、自分なりの方法で「英語圏の住人」になっていました。どうやって英語力を伸ばしたのか聞くと、「オンラインゲームで、英語圏プレイメイトと会話していた」「毎日3時間はオーディオブックを聴いていた」「カートゥンネットワークやディズニー映画をひたすら見続けていた」「1週間くらい引きこもって『フレンズ』を英語字幕で全シリーズ観るのは常識」なんて答えが返ってきました。切実な例では、「LGBT当事者だったので当該情報が英語でしかなく、それを見ていたら英語が上達していた」という人もいました。

お母さんもユーチューバーから英語を学ぶ

ーーネットが普及した今なら、なおさら「ネイティブ脳みそ」になる方法がありますね。

 白川さん:
「ネイティブ脳みそ」活動が、以前より何百倍もやりやすく、楽しく、多面的になったと私は解釈しています。英語「で」学ぼうと思えば、飽きっぽい英語圏の子ども向けに作られた学習アプリや動画から、Crash Course、カーンアカデミーのような良質な教養動画、さらにMITやアイビーリーグなど世界中の有名大学の講義まで、全部無料ですぐそこにあるのです。

 

ーーなるほど。とはいえ英語ビギナーにとってそうしたアプリや動画は、まだまだ敷居が高そうな気もしますが。。

 白川さん:
それも大丈夫ですよ。まだ英語「を」学ぶ段階で、「本物コンテンツは難しいかも」という人にも優しいような、どんなにレベルが低くスタートしても、無料で良質コンテンツを発信してくれるユーチューバーはたくさんいます。この前、「英語は諦めた!」と20年前に宣言していた実家の母も、自力で英語をマスターしたというバイリンガルのユーチューブ動画を食い入るように見ていました。

自由に生きるには英語圏の住人になる

ーーお母さんもユーチューバーから英語を学ぶ時代に!?

 白川さん:
そして、例えば英語「で」サボったり現実逃避しようと思えば、ネットフリックスやディズニープラス、ゲーム配信動画サイトのTwitchがあるし、英語「で」クリエイターになったり発信しようと思えば、すぐに思いを同じくする世界中の人間と交流もできますよね。「常に勉強しなきゃ!」と身構える必要はありません。みんなが限りなく自分らしく自由に生きるには、世界の情報のほとんどが流れている英語圏の住人になることが必要だと私は信じています。オンライン活用はそのための必須ツールであり、プラットフォームであるという位置づけです。

 

ーー日本の場合、英語学習は基本的に学校や学習塾に依存していますが、休校のいまだからこそオンラインを使って、自分が好きなようにどんどんやってみることが可能ですよね。
 

 白川さん:
非英語圏でも素晴らしい英語の先生というのは、「英語の基礎は教えたんだから、あとはドラマとか見とけよ」とか「自分で好きな分野の授業を、オンラインでは英語であるので取ってみよう」とか、世界が広がるように生徒をエンパワーするのが自分の仕事だと信じています。日本ではそれが出来る学校や先生が少ないので、「この機に英語圏の住人になってやる」という子どもにとって休校はすごいチャンスだと思います。

 

休校は英語圏の住人になるチャンス

ー一方で英語を頑張ろうと思っても、「英語は嫌い」とか「なかなかハードルが高いなあ」と思う子どもは多いです。

 白川さん:
基本的にどんなことを学ぶ際にも、「より自分に相性のいいやり方」というのは存在します。「あなたに合った学び方が、隣の子には致命的に相性が悪かった!」とか、その逆もあるので、「オンラインで自律的に何かを学ぶ際には、その自由度を最大限に活かしていいんだよ」と、まずは頭に入れておいてください。学校で英語が嫌いになった子はいっぱいいるけど、それは100%あなたのせいでも英語のせいでもありませんから。

ーー「自由度を最大限に活かしていいよ」と言われて、逆に途方に暮れる子どももいますよね。

 白川さん:
たしかに全部自分で決めろと言われても、キョトンとしちゃうかと思います。そんなときは、ベンチマークがあると楽しいですね。憧れとかロールモデルとか。

 

英語圏の同年代が何を読んでいるのか

ーーロールモデル、ですか?

白川さん:
例えばあなたが中学2年生の女子で、本を読むのが好きで、ちょっとオタクで、ハリポタファンで、そろそろ「指輪物語」に手を出しそうなら、「英語圏にいる同い年のファンタジー好き女子は、どんな音楽を聴いて、どんな本を読んでいて、何に悩んでいるのだろう」とちょっと妄想してみましょう。中学2年生はだいたい8th gradeなので、「popular 8th grade books」とググれば、英語圏の同年代が何を読んでいるのかわかりますよね。

ーーそうやって同年代のロールモデルを探すんですね。ただ英語ビギナーにとっては、英語圏の同年代と同じ本を読むのはかなり難しいのではないですか?

白川さん:
英語圏の同い年の視聴しているものがすぐ楽しめたら、そりゃ世話はないですよね。「同じレベルの読書は英語力的にまだ無理!」っていうなら、まずどれくらいレベルが足りないのか知るだけでも励みになります。やり方も、映画化されている作品は映画を観るとか、学年レベルを下げてみるとか、オーディオブックと文字を並行で視聴してみるとか、色々あるので安心してください。まずは日本語字幕で入る、とかでも全然ありですよ!同じようにアプリでもYouTubeでも雑誌でも探してみればいいだけです。

「このレベルの本が楽しく読めたらゴールだ」

ーーそれなら、英語嫌いな子どもでもやっていけそうな気がしますね。

 白川さん:
成長した先の自分が、どんな英語圏の住人になっているかイメージできないと、いつまでもたどり着けませんから。例えば、「このレベルの本が楽しく読めたらゴールだ」とわかっていると、下手にレベルアップ感を求めて「英検3級取れたから次は2級をめざす」とか、不毛な勉強ばかりしなくてもよくなるわけです。海外進学に必要な試験の点数をとるなら応援しますが、「点数のための勉強を延々とくりかえす万年英語勉強家」みたいになるのは残念なので、「自分はきっと近いうちにこれが読めてあれが楽しめて…」という妄想をすることはめちゃくちゃ重要です。

 

ーー「万年英語勉強家」・・苦笑。

 白川さん:
「今自分は日本で中学2年生だけど、英語では小学1年生の本を読むのがやっと。だけど、休校の1ヶ月の間でせめて小学4年レベルにはなるぞ!好きなSF関係の本でオーディオアシストがあったらたぶんいける!」とか、そういう目標を立てようというのが、私のアドバイスです。今Audible.comが子ども向けのオーディオブックをすべて無料開放しているので、チャンスですね。また、小学生のときに読んだ『エルマーとりゅう』や『ドリトル先生』の英語原著に挑戦しようと思ったら、これも英語があまり難しくない上に原文・オーディオともに著作権切れでLoyalbooks.comに上がっているのでそこから挑戦してみてもいいかもしれません。

 

ーーなるほど。何か私もやれそうな気がしてきた(笑)。では次回は、子どもへのおすすめオンライン英語学習について伺います。

【聞き手:フジテレビ 解説委員 鈴木款】