リオパラリンピックから正式種目となったパラトライアスロン。
スイム750m、バイク20km、ラン5kmの合計記録を競う、過酷な競技だ。

リオ大会で2位、様々な世界大会で優勝経験も持つ日本のエースが秦由加子選手だ。
 

 
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スリップの恐怖との戦い

「レースでは砂利があったりとか、ビショビショに濡れている路面という中で、ソールが滑って転びかけたんですね。それが悔しくて悔しくて…」と右脚が義足の秦選手は話す。

トライアスロンは街の中、一般道を走る。
ヨーロッパなどでは石畳のコースもあり、何度かスリップして転倒する事があったという。
そのため、恐怖で本気で走れなくなってしまうこともあったそうだ。

そんな時に、ブリヂストンがタイヤ開発で培ってきた技術で義足用のソールを開発した。
 

 

「走ったその瞬間に、なんだこのグリップ感はと思って、本当に感動して。どんな路面でもいけるっていう安心感があります。滑らなくて走りやすい」
秦選手は、最初に渡された試作品の義足用ゴムソールを使った時の感想をそう表現した。

「義足で走るということは、どういうことが起きているのか深く理解して、ものにするところに非常に苦労しました」と語るのは責任者だった小平美帆さん。

 

秦選手の要望に応えるために何度も試行錯誤し、走りに応じたパターンデザインを分析。
グリップが良く、耐久性に優れたゴムを開発して、レース用のソールを完成させた。

しかし今のソールで満足しているわけでは決してない。

「選手も毎日毎日のトレーニングで成長しているので、私たちもその成長に負けないように自信を持って作ったものを出していきたい」

 

プレッシャーが背中を押してくれる

元パラ水泳選手である秦選手は、得意のスイムで他の選手を離してもバイク、ランで追いつかれ、抜かれることがあった。
滑る心配をせず、安心して走れる義足用ソールは小さな部品だ。
しかし、2020年に向かって、とても大きな武器となる。

「秦さんはトレーニングを積んで、もっともっと上を目指していると思うので、私たちも負けないようにもっともっといいものを作って、私たちのゴムソールをつけて笑顔でゴールをするところを見たいです」と、小平さんは更なるソールの進化を目指す。
 

 

「心をこめてこのソールを作ってくれたと言うことが、力になりますし、プレッシャーを感じてそれが背中を押してくれることだと私は思うので、そのプレッシャーも抱えて東京2020を目指していきたいです」

そう笑顔で語った秦選手。
想いのこもったソールを手に、東京2020での大活躍が期待される。
 

 

秦由加子(ハタユカコ)

1981年4月10日生まれ 37歳 千葉県出身 
マーズフラッグ・稲毛インター所属
13歳で骨肉腫を発症し、右大腿部より切断。
幼少のころに経験した水泳を2007年に再開し、2008年から障がい者の水泳大会に出場。
2010年から2012年まで「日本障がい者水泳連盟」の国際大会強化指定選手として国内外の大会に出場。
2013年にトライアスロン競技へ転向し、2014年7月にはJTU(日本トライアスロン連合)のパラトライアスロン強化指定選手A指定を受ける。
2015年ITU世界シリーズ横浜大会パラトライアスロン(PT2-W)優勝。
 

(PARA☆DO!:毎週水曜夜10時54分放送
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