新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、
日本感染症学会理事長で政府専門家会議、諮問委員会のメンバーでもある
舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)に、
医療機関の抱える問題、今後求められる医療体制のあり方を聞いた。

『市中蔓延期』に“隠れコロナ”を危惧

Q:日に日に感染者数は増しているが

日本感染症学会・舘田一博理事長:
3月末から、市中で散発的な感染例がどんどん出てくる状況になってきた。「市中蔓延期」と言われるような状態。その中で、都内の感染症専門ベッドがあるような施設でも、満床になってしまう切迫、緊迫した状態になってきている。

Q:医療機関に不足していることは何か?

日本感染症学会・舘田一博理事長:
医療崩壊を防ぐ為に重要なファクターになるのは、「ハコ、モノ、ヒト」の3つ。ハコは、
ベッドをちゃんと確保できるかということ。モノは、重症例に対しての人工呼吸器、ECMO
(人工心肺装置)、医療用マスクがちゃんと供給できるかどうか。一部の施設においては、
マスクが手に入らないという状況が報告されている。そういうことが起きてしまうと、院内
感染が起こり、医療崩壊に繋がってしまう。ヒトは、ひとりの新型コロナウイルス感染症の
患者さんに対して、専門医師、専門看護師が必要で、非常に人手がかかると言うこと。どう
やって感染症を診ることのできるスタッフをこちらに振り向けるかが非常に大きな問題。
ハコ、モノ、ヒトの不足が起きないような準備、対応していく必要がある。

Q:すでに医療現場での感染も出ているが

日本感染症学会・舘田一博理事長:
難しいのは、新型コロナ感染症と診断しケアしていく時は、医療機関側もちゃんと防護
服を着けて、という対応をとれるが、最近は市中から、いわゆる「隠れコロナ」というよう
な状態で患者さんが入ってくる。そうすると、どうしても防御が後手後手になってしまう。
そういう中で医療従事者が感染する事態になる。これは増えてくるんじゃないかと危惧し
ている。院内感染を起こしてしまうと、その医師、その看護師も含めて、濃厚接触をしてい
る人は2週間自宅待機ということになってしまい、マンパワーを失うことになってしまう。
非常に大きな問題になってきていると思う。「すべての外来患者さんがコロナを持っている
かもしれない」という意識で診療を行っていかなければいけない。
飛沫、接触感染対策を徹
底しながら、それを見逃さない、広げないという対策が重要になってくると思う。

死者を減らすため、緊急性低い手術は後回しを

Q:新型コロナ陽性ではない他の患者にも対策が必要とは。いま現場では何が起きているのか?

日本感染症学会・舘田一博理事長:
市中蔓延の中、陽性の患者が入院し、ベッドをどんどん使わなければいけない状況になってきている。この危機的な状況のなかで、新型コロナ感染症の人をケアできるベッドを確保していくことが重要。そういう意味では、例えば、新型コロナとは関係ない病気などで、今診なくても良い、今入院しなくてもいい、今外来で診なくても良いような患者については、遅らせていただき、5月あるいは6月に移動していただくような考え方が重要になってくると思う。緊急事態宣言が出ている1ヵ月間に関しては、感染症に関わるかどうかに限らず、医療機関みんながそういう風に考え、病院全体の業務を「シフト」していく、という対応が必要になってくる。

Q:世界各国で様々な取り組みがある。韓国では軽症者を治療センターに隔離。ドイツではオンライン診療も。これから日本はどう取り組むべきか。

日本感染症学会・舘田一博理事長:
日本でもオンライン診療をやる方向が出てきている。また軽症者が自宅安静、自宅待機、あるいはホテル、施設での待機という風な方向性も出てきた。なかなか難しい部分もあるが、早く進めて、とにかく重症の患者をしっかりとケア出来る体制、ハコ、モノ、ヒトを準備していくことが重要だと思う。とにかくこの新型コロナ感染症で亡くなる方を1人でも減らす、減らしていくということが私たちの目標になる。そのために何が出来るのかということを考えていかなければいけない。どうやって検査を使っていくのか、どうやってモノを使っていくのか、あるいはマンパワーを使っていくのか、患者さんが1人でも亡くならないようにしていくためにどのように使っていくのか、ということを考えていかなければいけないと思う。検査の数だけを増やすのではなく、その検査を賢く使いながら、患者さんが亡くなる数をいかに減らせるか、というような形で考えることが重要になると思う。

“4月22日”に注目、企業トップは決断を

Q:私たちが意識すべきは。

日本感染症学会・舘田一博理事長:
緊急事態宣言が出され、ひとつの目標として人と人との接触を80%、少なくとも70%以上は抑制するといった方向性が示された。これは非常な大事なこと。感染症は、人と人が接触することにより感染する。人と人との接触を抑えることができれば、感染は止まっていく。80%抑えることが出来れば、おそらく5月6日の緊急事態宣言の終了までには、かなりの効果が出る。そういう意味で我々一人一人がまさに行動変容、人と人との接触を抑えるよう行動に繋げて行かなければいけない。

Q:「必ずやめるべきこと」は何か。

日本感染症学会・舘田一博理事長:
80%はよくイメージもできないし、なかなか難しい数字。やはり大事なのは、最近よく言われる「3密」の状態になるようなことはとにかく控えること。そして、「夜の街クラスター」。夜の街で感染が広がるということが分かってきているため、これは100%抑えるということの徹底。あとは不要不急の外出は控えること。自宅で仕事が出来る環境があるならば、自宅にもっていく。そういう少しずつの積み重ねにより80%という数字に近づく。リスクの高いことは100%しない。国の危機的状況になりつつある。夜の街には100%行かない。そして3密と呼ばれる状態には、100%ならないことが大事だと考える。

Q:仕事についてはどうか。

日本感染症学会・舘田一博理事長:
80%の方が仕事場に行かないというのは、今までに経験が無いことで難しいと思う。企業のトップが決断して自宅で仕事をさせるような方向に持って行くことが大事だ。社員が、いくらそれを努力しようとしても、会社自体がそれを進めていなければできない。ぜひ企業のトップが決断してほしい。トップが決断することで、進めていかなくてはならない。

Q:7都府県が現在、緊急事態宣言の対象。宣言の効果はいつくらいから出始めるのか。

日本感染症学会・舘田一博理事長:
この感染症は、感染してから病院にいって診断されるまでにだいたい2週間くらいかかるということが分かってきているので、4月8日に出されてその2週間後、4月22日頃までに傾向が出てくるのではないか。それまでに分からない場合には、そこからさらに1週間、2週間ということで、5月6日にはこの緊急事態宣言の効果が判断できる。

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