東京・大田区の自宅アパートに、3歳の長女を放置し死亡させた、保護責任者遺棄致死などの罪に問われている梯沙希(かけはし・さき)被告(26)の判決公判が、午後3時から行われた。東京地裁は、梯被告に対して懲役8年の実刑を言い渡した(求刑は懲役11年)。梯被告は起訴内容を認めていた。

保護責任者遺棄致死などの罪に問われている梯沙希被告(26)
保護責任者遺棄致死などの罪に問われている梯沙希被告(26)
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起訴状などによると、梯被告は、2020年6月5日から13日にかけて、大田区の自宅アパートに、長女の稀華(のあ)ちゃん(当時3歳)を9日間放置し、十分な食事をを与えずに死亡させたとされる。

梯被告は、シングルマザーとして稀華ちゃんを育てていたが、鹿児島県に住む交際相手の男性に会うために、9日間、自宅を空けて、稀華ちゃんを1人で放置したという。発見された際、稀華ちゃんは、おむつを2枚重ねて履かされ、胃や小腸には食べ物などがない状態で、病院に運ばれたが、脱水症と飢餓により死亡した。

初公判で梯沙希被告(26)は起訴内容を認めた(イラスト:大橋由美子)
初公判で梯沙希被告(26)は起訴内容を認めた(イラスト:大橋由美子)

稀華ちゃんがいた寝室は電気が消され、扉には鍵がかけられ、外側にはソファーが置かれていた。このため稀華ちゃんは、外に逃げ出したり、助けを求めたりすることができなかったとみられている。

検察側は、ペットボトルの水1本とスナック菓子1袋だけが置かれていたと指摘。これに対して梯被告は「たくさんの食べ物を置いていた」と反論していた。。

検察側は「稀華ちゃんが、最後までもがき苦しんで亡くなったのは一目瞭然」「交際相手に会いたいという自己の欲求を優先させた身勝手な犯行」と指摘。起訴内容以外にも、19回に渡って稀華ちゃんを放置したまま外出したことを明らかにした上で「育児放棄を常習的に繰り返す中で起こった犯行」として懲役11年を求刑していた。

希華ちゃんは、十分な食事も与えられず、脱水症と飢餓により死亡した。
希華ちゃんは、十分な食事も与えられず、脱水症と飢餓により死亡した。

一方、弁護側は、梯被告が、自分の母親から虐待を受けていたことを明らかにし、施設で育った過去が、事件に影響したと主張。その上で「強い愛情欲求があり、交際相手の男性に愛されたい自己が強く出ていた」と述べ、加えて「(稀華ちゃんを)積極的に傷つける意図はなく、憎しみを抱いていたわけではない」などと情状酌量を求めた。

最後の意見陳述で、梯被告は、「ずっと変わらず、のんちゃんごめんねって思いでいっぱいだし、全部後悔しかないです」などと涙ながらに語っていた。

9日の判決で東京地裁は、「最もそばにいて欲しかったであろう母親に助けを求めることもできないまま、ひとり衰弱していった稀華ちゃんのつらさと苦しみは、言葉にしがたく、悪質かつ身勝手」などと断罪した。

一方で、部屋には「一定量の食べ物が置かれていた」と認定。さらに、交際相手のところに遊びに行く誘いを断れなかった背景には、梯被告が、子どものころに受けた壮絶な虐待などにより形成された性格が、「複雑に影響を及ぼしている」と指摘。これらの事情を考慮し、懲役11年の求刑に対して、懲役8年を言い渡した。

梯被告は、最終意見陳述で、涙ながらに謝罪の言葉を口にしたが・・・
梯被告は、最終意見陳述で、涙ながらに謝罪の言葉を口にしたが・・・
社会部
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