新型コロナウイルスに対して沈黙を続けた国連・安保理

WHO(世界保健機関)が世界各地でいまだに感染が拡大している新型コロナウイルスのパンデミックを表明してから1カ月を迎えた。その直前に国連の安保理はやっと重い腰を上げ、4月9日にビデオシステムを使った非公開の会議が開かれた。しかし「国連事務総長への支持」を表明しただけの簡素な「報道発表」が出されただけだった。

国連のグテーレス事務総長は、新型コロナウイルスの感染が広がりを見せる中、各国に繰り返し団結と連帯を呼びかけてきた。医療体制が脆弱な国、手洗いができる場所が確保さえままならない悪い衛生環境にいる人たち、女性や子供など普段の生活を送ることも厳しい人たちなどは新型コロナのため、さらに苦境に立たされるとして、記者会見やビデオメッセージを通じて訴えてきた。

新型コロナウイルスの呼び名をめぐって米中が舌戦

一方で世界中が対策に追われている中、安保理は何をしていたのだろうか。
感染の勢いは中国、ヨーロッパ、アメリカなど世界各国に拡大していった。3月11日にWHOはパンデミックを表明。感染拡大は国連本部のあるニューヨークにもあっという間に広がり、16日には国連職員の大半が在宅勤務となった。安保理も対応を迫られたが、初めてのビデオシステムによる初めての会議が行われたのは1週間以上先の24日。しかも議題は新型コロナウイルスではなかった。実はこのころ、国連の外ではアメリカのトランプ大統領が「中国ウイルス」とツイートし、中国が反発を強め2国間の争いは経済問題からウイルスの呼び名にまで至り、対立を深めていた。

実は3月は、中国が安保理の議長を務めていた。安保理の議長は持ち回りで、1か月ごとに各メンバー国が担当する。最初に中国で感染が拡大し、さらにそれをめぐってアメリカと対立している中国としては、議長として新型コロナウイルスを議題に進めづらいこともあった。その後、4月になるとドミニカが議長に就任。記者会見でシンガー国連大使は「安保理メンバー数か国から新型コロナウイルス問題で会議開催を求められている」とし、グテーレス事務総長を会議に招いていることも明らかにした。

そして9日に行われた新型コロナウイルス問題での初めての安保理。ビデオシステムで行われたが、世界中から注目されているにも関わらず非公開で行われた。会議ではグテーレス事務総長が新型コロナウイルスに立ち向かうために結束と連帯を訴えた。しかしアメリカが「国際的な公衆衛生において情報の共有と透明性が必要、ウイルスの起源を調べなくてはならいない」と名指しこそ避けたものの、新型コロナウイルス発生の公表の遅さなどを指摘されている中国を暗に批判。

ビデオシステムで非公開で開催された安保理(ドイツ国連代表部のツイッターより)
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一方、中国は「誰かをスケープゴートにしても解決にはならない」と反論し、これまでの両国間の争いを安保理の場でも続けた。これに対して新型コロナウイルス問題で安保理の開催を呼びかけてきたドイツのホイスゲン大使は「安保理メンバーは『長い沈黙』を続けてきたことを認めなければならない。ドミニカから会議の開催を促されても、なお開催まで9日もかかっている」と、対立してきた国を批判した。

結局、会議では安保理として一致して取り組む方向性を示す『決議』や『声明』を出すことはできなかった。

国連・安保理の存在意義は?

グテーレス事務総長は、世界各地の紛争地域では医療や衛生状態が悪くこれまでの両国間の争いを新型コロナウイルスによってより深刻な被害が出ることが容易に予想されるため、停戦を呼びかけている。また今後、アフリカなどで感染拡大も懸念され、国連は発展途上国支援のため20億ドル(約2200億円)の基金も設立した。

2度の世界大戦後を経て設立された国連は今年、『75周年』を迎える。

国連の中でも『安保理』は世界の平和と安全のために、国際的なルールに違反した国に対しては、制裁を課すことができ、軍隊も派遣できる『最も強い実行力』を持った組織だ。それにも関わらず、第2次世界大戦以降、『最大の危機』と言われている新型コロナウイルスに、安保理がこのまま何の対応もできなければ、世界各地で苦しんでいる人たちから『厳しい目』が向けられるのは当然だ。

【執筆:FNNニューヨーク支局 新庄壮一】