5Gのサービスが3月に始まった。
しかし、その事を実感している人は少ないかもしれない。
もちろん、新型コロナウイルス感染増加が影響したことが大きな理由のひとつだが、それにしても印象が薄い。
それはなぜか?
フジテレビ報道局の通信担当記者が解説する。

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あまり実感はありませんが…5Gはもうスタートしている

Q:5Gのサービスはもう始まっているんですよね?
A:そうですね。3月25日から27日にかけて各社が商用サービスを開始しました。
通信料金は平均して月額7500円くらいです。
この料金は4Gより500~1000円ほど高いですが、キャンペーンを実施するなどして4Gと同じ価格帯で利用できるようにしている社もあります。
また、家族割りやインフラとのセット割りなども設けていて、全ての割引が適用されると、KDDIやソフトバンクは最低で1ヶ月 約3500円から使える設定になっています。

Q:もっと高くなると思っていましたが、プランの内容は?
A:各社のプランにはそれぞれ特徴があります。
ドコモは100ギガバイトの大容量プランを設けたり、KDDIは完全無制限でありつつNetflixなどの動画配信サービスとセットにするなど工夫がされています。また、ソフトバンクはインスタグラムなどのSNS使い放題のプランになっています。

Q:3月には5G専用の携帯電話も発表されましたね
A:はい、端末はソニーのエクスペリアやシャープのアクオスなど日本メーカーのほか、中国メーカ―の製品も並びました。
でも3月のサービス開始時に購入できる製品は、かなり限られていました。
2020年の夏ごろに向けて各社の新モデルが発売されるので、自分が気に入っているメーカーの5G端末が出れば買い換えどきかもしれません。
価格は10万円を切る低価格モデルから、約13万円の高価格帯のモデルまでそろっています。

Q:ちなみに、米中ハイテク摩擦の渦中にあるHUAWEIの5G端末は?
A:HUAWEIも5G対応の新機種を発表しました。
しかし、携帯大手3社では取り扱いはありませんでした。

Q:HUAWEIの5G端末は日本では買えないということでしょうか?
A:SIMフリースマホとして、公式HPや家電量販店などオープンマーケットで購入するができます。
しかし携帯電話各社の店舗での端末の販売はないということです。
SIMフリースマホを購入して、5G通信を契約しSIMを差し込めば使用できるとされています。

スタートしたものの…イマイチ盛り上がらない理由は?

Q:5Gは静かにスタートした印象です。もちろん新型コロナ感染拡大の影響は大きいと思いますが、正直なところ、あまり盛り上がっていません。「5G対応のスマホに買い換えた」という話も聞かないのですが…
A:新型コロナウイルス感染拡大の影響で盛大にイベントできる状態ではないことも要因としてあると思います。
ただ、新しい通信は急に広がって盛り上がるというよりも、具体的なサービスが出てきて、一般の人が利用する機会が増えることで広がっていきます。
ですから、徐々に数年かけて広がっていくものなんです。
ゲームやライブ鑑賞、スポーツ観戦など一般消費者向けのエンターテイメント分野のほか、工場内の効率化や機器の整備・遠隔操作、さらには自動運転などへの5G活用も見込んでサービス開発が進められています。

Q:日本全国で5Gのサービスは始まっているんでしょうか?
A:現時点では、サービスが始まったエリアは、ドコモは29都道府県の150カ所、
KDDIは15都道府県の一部、ソフトバンクは7都道府県の一部の地域にとどまるなど、限定的です。

Q:どうしてそんなに限定的なのでしょうか?
A:5Gは4Gに比べると1つの基地局でカバーできるエリアが少ないんです。だから、どうしても最初はエリアが限定的になってしまいます。
携帯各社は2~3年かけて全国で5Gの基地局を増やしていく予定です。
当面は、スタジアムでのスポーツ観戦や音楽フェスでのサービス展開などに合わせて利用が広がっていくでしょう。

Q:その基地局の工事というのは、カンカンカンカンと工事をして建てこみをするイメージ?
A:そうではなく、もっと小さい規模をイメージしてください。
建物の屋上などにアンテナのようなものを設置します。通信各社にとっては会社の心臓部のような重要なものなので、詳細な場所はほとんど公にされていません。
もちろん、水害や大地震への対策として防水扉や防火シャッターなどを設けて強度を確保しています。

Q:基地局の設置のために人手や費用が必要になるから、先に進まないのでしょうか?
A:携帯各社は以前から計画的に設備投資をしているので、それらが理由ではありません。

Q:では基地局を作るには時間がかかるということですね。どうしてそんなに大変なのでしょうか?
A:設置に一定の時間がかかる理由としては、ビルの耐震基準や景観条例を確認する必要があるほか、同じ周波数を使っている衛星システムやヘリコプターなどとの電波干渉を考慮する必要もあるためです。
4月1日にはKDDIとソフトバンクが5Gの地方における基地局の整備について合弁会社を作り、土地や建物、アンテナなどを相互利用していくという協力関係ができました。
これにより都心部以外でも基地局の整備が進んでいきそうです。

Q:基地局の設置に新型コロナ感染拡大の影響はあるのでしょうか?
A:基地局の部品は中国など海外から調達しているケースが多いので、今後は影響が出ざるを得ないと思います。
KDDIの高橋社長は「現状は影響ないが5月、6月までと長続きすれば影響がでるだろう」と話していますし。

「5Gのない生活は考えられない」と感じる日は来るのか?

Q:ところで、私の携帯電話はまだ4Gなのですが、十分サクサク検索できるので満足しています。それでも5Gは必要ですか?
A:そうですね、普通に動画などを見るために5Gは必要ないですよね。
でも5Gを使うと、例えば4Kや8Kの高精細な画質が見られるようになります。
また、遠隔地から機械などを操作するなど、高度な技術を使用するためには5Gが必要です。時代の進化ですよね。

Q:確かに、3Gから4Gに移行した時も、当初は「3Gで十分」と言っていた人も4Gに移行し、今や「4Gがないと無理」と言っていますね。同様に、「5Gじゃないと無理」と言う日が来るのでしょうか?それはいつなのでしょうか?
A:3Gから4Gに移行するときも、徐々に広がっていきました。
今はまだ3Gもあり、3G・4G・5Gの3つが共存しています。
ただ、3Gのサービス終了が見えているように、だいたい10年単位でGが移行しています。
それを考えると、「5Gがないと無理」と人々が言うようになるのは2030年代かと思います。
さらに、ドコモは2030年ごろのサービス提供を目指して、すでに6Gの開発を進めています。空や宇宙、海などとも通信ができるようになるとも言われていて、可能性が広がっていく未来があります。

Q:私はiPhone使っていますが、アップルは5G携帯をリリースしていません。今後、予定はあるのでしょうか?
A:アップルは秋に新機種を出すことが多いことや、すでに発表されている各メーカー5G携帯が夏までをめどに発売されることなどを考えると、それに合わせて秋頃に新しいiPhoneが出る可能性はありますね。

Q:iPhoneが5Gに参戦すると、日本での5Gは盛り上がってくるのでしょうか?
A:日本ではおよそ半数がiPhoneを使っているというデータがあります。とは言え、仮に秋に5G対応のiPhoneが販売されるとしても、すぐには盛り上がらないかもしれません。
普通、一つの携帯端末は2~3年くらい使われると言われているので、今からそのくらいの年月が経つと5G携帯を手にする人が多くなると思います。
例えば、最近 携帯を新しい機種に変えた人は、2~3年間は使おうと思いますよね。
すると、次に買い換えるのは2022年~2023年ごろ。すると、そのときに出ている5G端末を買うことになるのでしょう。
ちょうど2023年ごろに5Gのカバー率も今の4Gのカバー率に近づいてくると思います。そしてその後、2026年頃に3Gのサービスが終わる予定です。

Q:なるほど。古いものと新しいものがうまく共存して、その後新しいものへスライドして…と、うまく回っているのですね。
A:そうですね。

(フジテレビ報道局経済部 奥山未季子記者)