2021年12月28日、東京地検特捜部は、無登録で不正な融資仲介を繰り返したとして、公明党の元衆院議員・遠山清彦被告(52)ら4人を貸金業法違反(無登録)の罪で在宅起訴した。遠山被告の他に在宅起訴されたのは、太田昌孝元議員の秘書を務めた渋谷朗被告(61)、環境関連会社会長・牧厚被告(74)、コンサルタント業の川島裕被告(78)。

そもそも特捜部が公明党の議員事務所などに強制捜査に踏み切ったのは2021年8月。そこからおよそ5ヵ月に及ぶ捜査の結果明らかになったのは、公明党の議員事務所で無登録の貸金業が行われていたという前代未聞の実態だった。

捜査で判明した遠山被告の不正な融資仲介とは

特捜部は2021年8月4日、公明党の吉田宣弘議員・太田昌孝議員(当時)の事務所や遠山被告のコンサルティング会社・自宅など複数の関係先を家宅捜索し、融資に関する資料や手帳・メモなどを押収した。押収品や関係者の聴取を基に捜査を続けた結果、判明した不正な融資の口利きは、以下のルートで行われたとみられる。

元衆院議員・遠山清彦被告(52)は在宅起訴された後、公明党を除名処分となった
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~融資の口利きの流れ~
・事業者→遠山被告→遠山被告の政策秘書の男性ら→日本政策金融公庫の融資担当者
・事業者→牧被告→吉田議員の事務所(遠山被告の政策秘書の男性ら)→日本政策金融公庫の融資担当者
・事業者→川島被告→太田議員の事務所(渋谷被告)→日本政策金融公庫の融資担当者

事業者から“コロナ特別融資“を受けたいと依頼を受けた遠山被告・牧被告・川島被告は、日本政策金融公庫に対して事務所の秘書らを通して口利きを行う。その後、公庫の融資担当者が事業者に紹介されていた。融資の事前や事後には“手数料“が遠山被告・牧被告・川島被告にそれぞれ支払われていた。調べに対して4人は手数料の受け取りについて認めている。

特捜部は遠山被告の秘書らについても日本政策金融公庫に電話やメールを送るなどした幇助の疑いで捜査をしたが、秘書という立場であることなどを考慮し、関与が従属的だとして不起訴処分(起訴猶予)とした。

立件の決め手となったのが、遠山被告が単独で82件(2020年3月頃~2021年6月頃)の不正な融資仲介を行い、事業者から謝礼を得ていたことだ。遠山被告・牧被告の共謀により29件(2020年4月頃~2021年1月頃)、渋谷被告・川島被告の共謀により87件(2019年6月頃~2021年4月頃)だったことを考えると、遠山被告はおよそ1年3ヵ月の間に111件の貸金業法違反を犯していたことになり、その数の多さがうかがえる。遠山被告が得ていた謝礼はあわせて1100万円超で、実行された融資額はおよそ10億円超にのぼるという。

東京地検特捜部は、2021年8月、衆議院議員会館の事務所を家宅捜索した

遠山被告は家宅捜索直後のFNNの取材に対して、「(日本政策金融公庫の)窓口を紹介することは自公野党含めて日常的にやっていること。窓口を紹介しただけでプレッシャーをかけるようなことは一切してない」と説明。また在宅起訴された牧被告らからの金銭の受け取りについては「ノーコメント」としていた。

衆院選が終わった11月から遠山被告に対する特捜部の聴取が都内ホテルで始まった。当初は牧被告らからの現金の受領に関して、「人間遠山の応援のためだと思っていた」と説明し、融資に関する謝礼であることを否認していた。しかし、否認を続ければ逮捕される可能性も考慮したのだろうか、最終的には融資の口利きを行ったことやそれに伴う謝礼を受領したことを認めた。

遠山被告は在宅起訴されたことを受けて、「厳粛に受け止め、公職の身にあった者として国民の皆様には心よりお詫び申し上げます」とコメントした。

“ブローカー”牧被告が語った遠山被告の不正な融資仲介とは

“遠山ルート“に関して注目すべき人物がいる。同じく在宅起訴された環境関連会社会長・牧被告だ。家宅捜索の数日後から、記者の単独取材に5カ月以上に渡り応じ続けている。

牧被告:当時は緊急事態宣言下で、政府が3000万円を無利子・無担保で貸すと言ったから多くの事業者が申し込みを試みた。貸金業者として登録せず免許も持っていないのに、『俺は有力な政治家知っているから、(融資が早まるよう)口利きするけど、折半だよ』と言ったブローカーが暗躍した。そういうブローカーを摘発しないと。

当初は“ブローカー”をまるで人ごとのように話していた牧被告だったが、次第に不正な融資仲介について口を開いた。

牧被告:俺の顧問先の人が『なんとか早く融資を実行できるように』って言ってくるので、遠山事務所に自分の秘書から電話を入れて、『担当者だけ早く決めてやってくれ』と伝える。そうすると担当者が1週間以内に決まる。融資が下りるか下りないかは別として、早く結論が出る。それをやった。

遠山被告とは以前から関係が深かったと話す。

牧被告:遠山は将来、公明党を背負って立つ人間だと見越して応援していた。政治家を応援って言ったらわかるでしょ?応援って何をするの?みんなで応援しようと、みんなで支えようと言って音頭をとっていた

その“応援”は6年前から始まり、自分の“子分”らなどと一緒に、遠山氏を囲む酒宴も行っていたと言う。そうした中で遠山被告から次第にある相談事を電話でされたと話した。

遠山被告は、牧被告から6年間で3000万円以上受け取っていたとされる

牧被告:(遠山被告から)『会長来月1本お願いします』と電話が来る。1本とは100万円のことで、銀座のクラブを出たタクシーの中で2人きりの時に、菓子折の袋に現金が入った封筒を入れて渡していた。遠山被告には1年間で500万~700万円、6年間で現金で3000万円以上は渡した

遠山被告の政治団体の政治資金収支報告書を調べても、牧被告についての記載はなかった。特捜部の捜査も大詰めを迎え、在宅起訴される直前、牧被告は、以下の金額と融資額について「担当検事から指摘された」と深刻そうな面持ちで記者に話した。

A氏:200万円を牧被告へ、牧被告からさらに遠山被告へ→融資実行されず
B氏:100万円を牧被告へ、牧被告からさらに遠山被告へ→3500万円の融資実現
C氏:100万円を牧被告へ、牧被告からさらに遠山被告へ→3500万円(2社)の融資実現
D氏:50万円を牧被告へ、牧被告からさらに遠山被告へ→1000万円の融資実現

A氏~D氏はそれぞれ牧被告の“子分”のことで、あわせて450万円を牧被告を経由して遠山被告に渡すことで、あわせて8000万円の融資が実行されていたなどとして起訴された。起訴内容の中には、A氏のように融資の審査に落ち、実行されなかった人物も含まれていた。つまり、融資が実行されなかったにも関わらず、遠山被告は“謝礼”を得ていたことも判明した。(後編に続く)

(フジテレビ社会部・司法クラブ 熊手隆一)

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