東京・代々木の焼き肉店で1月8日起きた立てこもり事件。

荒木秋冬容疑者(28)は、刃物と爆弾に見せかけたものを持ち、店長が人質となったにもかかわらず、警視庁捜査員の突入により事件は3時間で無事にスピード解決した。あの日、何があったのか?

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FNN記者のイチオシのネタを集めた「ネタプレ」。今回は社会部警視庁担当の石竹爽馬記者が「スピード解決の裏に3つのポイント」を伝える。

事件に対処した警視庁の「SIT」とは

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
事件発生の流れから振り返ります。約2週間前に長崎県から上京し、路上生活をしていた荒木容疑者は夜6時半ごろ、たまたま見かけた代々木の焼肉店に入店し、約2時間半に渡り飲食をしました。その後の午後9時すぎに「店長に渡せ」と言い、女性店員にメモを書いた紙ナプキンを渡しました。「爆弾を起動した 警察に連絡しろ 騒ぐな」と書かれていまして、これを見た店長が110番通報し、警視庁が事件を把握しました

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
その際に荒木容疑者は人質になった男性店長を店内に残し、20人ほどいたお客や従業員を全員外に出しています。もし全員が人質となっていた場合、この事件は違った展開になっていたとみられます

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
立てこもりに対処したのは、SITと呼ばれる警視庁捜査一課の特殊犯捜査係です。SITは立てこもり誘拐といった事件を専門に扱う精鋭部隊で、日ごろから突入などの訓練を行っています。現場に急行したSITは現場の状況を確認しながら突入の機会をうかがっていました。そして日付が変わって間もない午前0時過ぎに突入するわけですが、その際の映像には爆発音が残されています

加藤綾子キャスター:
この爆発音は何ですか?

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
閃光弾と呼ばれる道具の音なんですね。閃光弾は大きな音とともに瞬間的に強く光る道具で、犯人の視界を奪って隙を作ることができるため、立てこもり犯の突入の際によく使用されます

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
実際にどのように使われるのかわかる、別の部隊が訓練した際の映像もご覧ください。特殊部隊が突入を図る直前、ドアの前に立った隊員が手に持っているものが閃光弾です。これを投げ入れると激しい光とともに爆音が鳴り響いて、その隙に隊員が一気に突入し、犯人の身柄を確保するわけです

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
今回事件が起きた店には出入口が2つありましたが、まず正面から閃光弾を投げ入れた捜査員が荒木容疑者を確保。そして裏側から入った捜査員が人質の店長を救出して解決に至りました

スピード解決に至った3つのポイント

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
今回スピード解決に至った裏には3つのポイントがありました。一つ目は容疑者との交渉です。今回は店長が人質となっていたため、交渉を行う上で最も大事なのは容疑者を興奮させないことです。荒木容疑者は現場で捜査員に対し「死刑にしてくれ」「俺の人生を終わらせてくれ」などと話していて、感情に波がある状態だったことがうかがえます。加えて、荒木容疑者は立てこもり中にワインを飲んでいました。刃物を持った、酔いが回った状態の容疑者を興奮させると思わぬ結果を招くおそれもあります。そこで交渉にあたった捜査員は、感情を逆なでしないように落ち着いたトーンで話すことで、容疑者を興奮させないように心がけていたということです

加藤綾子キャスター:
どんな言葉をかけていたんですかね?

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
会話の具体的な内容は分からなかったのですが、あえて強い言葉で説得するようなことはしない。雑談や世間話を交えながら語りかけるような口調で話していたということです。2つ目は店内の状況を把握することです。立てこもり事件で突入するには、中の状況や構造を把握することが非常に重要になります。事件が長期化するような場合には、特殊班は実際に現場の建物を再現して突入の訓練を実施することもあるということです

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
今回の現場の店は実際に中を把握できる状況だったのか。事件翌日に撮影した映像を見ると、お店は半地下のような構造で、ガラス張りになっていたんですね。外から店内の状況を把握できますので、これもスピード解決の一因になったということです

“安全に確保できる”タイミングで突入

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
最後に3つ目。最大のポイントともいえるのが突入する判断です。立てこもり事件で一番重要なのが突入した際に人質の安全を確保することです。しかし今回のケースでは容疑者が爆弾を持っている可能性があり、突入には難しい判断が伴いました

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
荒木容疑者が店員に渡したメモには「爆弾を起動した」と書かれていまして、実際に荒木容疑者は刃物とは別に、爆弾に見せかけた箱状のもの、4つを持ち込んでいました。1つはガラケーを巻き付けたものでこちらは手に持っていた。残る3つは机の上に置いていたということです。これらは解決した後に偽物だと判明するわけですが、立てこもっている段階では調べることはできません

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
そこでSITはこの爆弾を本物だと想定して、店長・荒木容疑者・爆弾すべてを安全に確保できるタイミングで突入することを決めました。この状況で安全に確保できるタイミングは、荒木容疑者が刃物を振り回しても人質になっている店長に届かない距離が保たれていること、なおかつ、ガラケー付きの爆弾が荒木容疑者の手から離れている瞬間のことを言います。ガラス越しに見える店内の様子からこの条件がそろったと判断したのが、日付が変わった午前0時過ぎでした

社会部警視庁担当 石竹爽馬記者:
現場の責任者が突入を指示すると、正面から捜査員が閃光弾を投げ入れて荒木容疑者を制圧すると同時に裏口から店長を救出し、あわせて爆弾のようなものも確保しました。日ごろの訓練で鍛えられた捜査員が3つのミッションを完璧に遂行したことにより、無事解決に至りました

犯罪はよくない…だが“社会のSOSボタン”も必要では

イット!のスタジオでは、コメンテーターでジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
誰もけがをせず、傷つかず、無事解決に至って本当によかったなと思うんですけれども。なんだか最近、自暴自棄というか周囲を巻き込んでの犯罪というのが、多いように思いませんか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
追い込まれてしまい、こういう犯罪に結びついたということはよく言われますけど、追い詰められたからといって誰しも犯罪を犯すわけじゃなく、歯を食いしばって頑張っている人がいるわけです。ただひとつ言えるのは、自己責任という形で切り捨てられて追い詰められてしまうと周りを巻き込んで、普段の不平不満みたいなものをそこで発散しようとするような傾向の犯罪が多いような気がするんですよ。であるとすれば、そういうふうに至る前にどこかで“社会のSOSボタン”があって、誰かが相談に乗るとか、追い詰められたときに救いの手を差し伸べるような仕組みみたいなものがあれば、少しでもこういった事件、追い詰められた人が犯罪に結びつかないような環境を少しでもできるんじゃないかなと思うんですけどね。難しいですけどね

加藤綾子キャスター:
社会の孤立、孤独をね。どうなくしていくかというそこに、やはりかかってきますよね

(「イット!」1月13日放送より)