女性は「精子提供者」を求めて面談まで その条件とは

SNSを通じて知り合った男性から精子提供を受け、実際に出産まで至った女性が、精子提供者である男性を提訴するという、全国でも初めてのケースが明らかになった。

訴状などによると、原告である都内に住む30代の女性は、夫との間に第1子をもうけたが、出産後、夫に遺伝性の難病の疑いがあることが判明したという。そこで、女性は、ツイッターなどを通じて、「精子ドナー=精子提供者」を探し、15人程度とダイレクトメールで接触。その中の5人とは、直接会って、面談までしたという。

弁護士が記者会見を行い、提訴の経緯などについて説明した(11日 東京・千代田区)
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原告の女性が精子ドナーに求めた条件とその理由は以下の通り。●東京大学卒の夫と同等の学歴であること=夫との子(第1子)と、精子ドナーにより生まれてくる第2子の双方が、できる限り差を感じることがないようにするため。●配偶者などがいないこと=倫理的問題に配慮し、精子提供を受けることにより、不貞慰謝料請求をうけるなどの法的リスクやトラブルを回避することなどが目的。●自身や家族と同じ日本人であること=将来、臍帯血幹細胞などを活用し高度医療を受ける際、日本人同士の方が利用可能性が高くなると考えたため。

「京大卒」「大企業勤務」の男 10回に及ぶ”性交”で妊娠

そして女性は、最終候補として、1人の男性を選んだ。この男性のSNSのアカウントには、身長・体重・血液型に加えて「20代」「大手金融機関に勤務」「国立大卒」など詳細な自己紹介が記載されていた。さらにメッセージのやりとりの中で出身大学を尋ねた際、男性は「京都です」と答えたという。

女性は京都大学卒であると信じ、この男性と2回面談。「塾に通っていたか否か」「努力をするタイプか天才タイプか」「家族に精神障害やガンの人はいないか」などの質問をしたという。

男性は、自分の名前を明らかにしなかったが、大手企業の社員証を見せ、改めて京大卒であることを確認されると、うなずいたという。条件に合致することが間違いないと考えた女性は、この男性から精子提供を受けることを決心した。

およそ10回に及ぶ”性交”の末、女性は、妊娠に至ったという(画像はイメージ)

その後、最も妊娠しやすい日を狙って性交におよぶ“タイミング法”を、およそ10回に渡って試みた結果、2019年、女性は妊娠したという。当初は、赤ちゃんができたことを素直に喜んでいた女性だが、状況は一変することになる。

「京大卒」「独身」「日本人」はウソだった

女性が信じていた「京大卒」「独身」「日本人」という精子提供者の経歴は、全てウソだと判明したのだ。この男性は、実は、中国籍で、京大とは別の国立大学を卒業していて、さらには既婚者だった。

その事実を知った時点で、すでに妊娠後期だった女性は、翌2020年、子どもを出産。弁護士によると、女性は重度の睡眠障害に悩まされ、起き上がることすらできない状態が、頻繁に生じているという。

東京都は「女性の心身の状態」から判断し、赤ちゃんを児童福祉施設で受け入れることにしたという。

このため東京都は、「女性の心身の状態では共に暮らすことができない」と判断し、現在、生まれてきた子どもを、児童福祉施設で受け入れているという。そして、女性は、2021年12月末、精子提供者の男性を東京地裁に提訴した。

3.2億円の損害賠償を求めて 精子提供者を提訴

女性は、ウソの国籍や学歴で、望んでいた条件と合わない相手と性交を強いられ、精神的苦痛を受けたなどと主張。精子提供者の男性に対して、およそ3億3200万円の損害賠償を求めている。代理人の弁護士は、記者会見で、女性が提訴した理由を明らかにした。

弁護士よると、原告の女性は「自分と同じような被害者が出ることを防ぐため」、今回の事案を公にしたという。

代理人弁護士:原告は精子提供をめぐって自分と同様の被害者が出ることを防ぐために本訴訟を提起することに踏み切りました。本訴訟を契機として、精子提供に関する法整備の具体的な議論が進むことを願っています。

今回のケースで、一番の被害者は、生まれてきた子どもだろう。一方で、原告の女性は、すでにネット上で非難されているものの、「自分と同じような被害者が出ることを防ぐため」と考え、事案を公にして、提訴に踏み切ったという。法整備が整わない中、増えていると言われるSNS上での精子取引。裁判の行方が、その現状に一石を投じることが望まれる。
(画像は一部イメージ)

(フジテレビ社会部・司法クラブ 松川沙紀)