ウエットスーツ会社がマスクを生産
ウエットスーツを作る宮城・石巻市の会社が、新型コロナウイルスの影響で減産を強いられている。
震災による津波被害を乗り越えてきた「モビーディック」。
今度は新型コロナという荒波を乗り越えようと、独自の「マスク」の製作に取りかかった。
創業は、1963年。
東北初のダイビング用品店としてスタートした。
三陸の漁師たちの潜水服作りに始まり、やがてダイビングが広く認識されるとこの分野の草分け的存在になった。
現在、年間2万着以上のウエットスーツを生産。
海外にも販路を持ち、国内トップのシェアを誇る。
人気の秘密は、高い品質と動きやすいデザインにある。
国内外のダイバーやサーファーはもちろん、海上保安庁や警察など命を守る現場でも使われている。
震災時は海上保安庁のウエットスーツを仕上げた
2011年の東日本大震災。
内陸側にある本社は無事だったが、海寄りにあった建物が津波で全壊した。
倉庫に保管していた商品もすべて出荷不能に。
そこへ、海上保安庁から急ぎのオーダーが入った。
モビーディック・三浦清晃さん:
海上保安庁から注文いただいて途中まで進んでいたスーツがあったんですけど、それを震災ですぐ使うから出してくれという連絡があって
当時、まだ電気も復旧しない中、スタッフたちは手分けして作業を始めた。
一刻も早く行方不明者の捜索にあたってもらいたい…そう願って海上保安庁のウエットスーツを仕上げた。
あれから9年…。
津波被害から立ち直ったこの会社に、今度は新型コロナウイルスという、荒波が押し寄せている。
モビーディック・木村秀一さん:
中国にある工場で生産を予定していたものが工場が閉鎖されてしまったので、生産できないという状態になりまして
海外の生産拠点が閉鎖されたうえ、国内ではウエットスーツの販売が伸び悩んでいる。
モビーディック・木村秀一さん:
例年に比べて10%以上減っています
ウエットスーツ素材を生かした洗って何度も使えるマスク
そこで、この会社では最近、新たな取り組みを始めた。
全国的に品薄状態が続く「マスク」の製作。
モビーディック・三浦清晃さん:
今僕らができることって何だろうと考えたときに、うちにある素材、技術、設備を使って具現化したいなと思ったのがスタートです
マスクの素材には、扱いなれたウエットスーツの生地を使用。
市内の関連会社と、アパレルショップの協力を受け、今週ようやく商品化にこぎつけた。
柔軟性と耐久性を兼ね備えたマスク。
モビーディック・三浦清晃さん:
ウエットスーツ素材なのでストレッチ性がありますので、かなりフィッティング的な部分は良い素材かなというところと、あとは実際に海で使用するものを材料としているので洗って使えるというメリットも大きいです
モビーディック・木村秀一さん:
十分これなら飛まつは出ないかなと思っています
ウエットスーツの生地で作った、洗って何度も使えるマスク。
津波を乗り越え、新型コロナという新たなうねりに立ち向かう石巻からの挑戦。
(仙台放送)