仕事は真面目だが「カッとなる」

工場で働く仲間たちとともに写真に収まる男…
谷本盛雄容疑者(61)。

これまでに24人が犠牲となった大阪・北新地の放火殺人事件で、19日未明、容疑者として特定された。

今回、谷本容疑者についてMr.サンデーの取材に答えたのは、元職場の社長。

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元職場の社長:
屋根の板金、屋根張ったり、雨どいの交換をしたり、仕事に関しては抜群の技術者でしたね。こんな事件を起こす原因は何でやろうって感じ

そして関係者も…

元職場の関係者:
みんなに縁切られて、ひとりぼっちになった

数々の証言から、谷本容疑者の人物像と現場への足取りが浮かび上がってきた。

元職場の社長:
仕事態度は非常に良かったんですけどね、きちきちとした仕事をしていた。任された仕事をほったらかしで休むとか、そんなことは一切なかった。仕事、もう頭から最後まできちっと自分でやってしまう、そういう性格

谷本容疑者がこの板金工場で働き始めたのは、2002年。
仕事は真面目で責任感が強かったという。

かつて谷本容疑者は妻と2人の息子と暮らしていたというが、近隣住民は谷本容疑者についてこう語る。

近隣住民:
おとなしい人だから。ここにいる時は、すごく穏やかな人でしたよ。

その反面、職場でのぞかせた顔は…

元職場の社長:
何かあったことにカッとなることはあった。気が短いのはなんかあって、自分に対しての意味が通じなかったら、わーってはねてしまう癖があった。日にちが経って自分が悪いことに気がついたら、社長すみませんでしたって、そういうことがよくあった

真面目さと気の短さを併せ持っていたという谷本容疑者。そんな中、2010年ごろ…

元職場の社長:
家庭内でのトラブルがあって奥さんと離婚したと、なんかそんな言ってました

元職場の関係者:
みんなに縁切られて、親も兄弟も子供さんにも、ひとりぼっちになった。そういう心の悩みを打ち明けてます

そして、工場を辞めたという。その翌年、社長が耳にしたのは…

元職場の社長:
警察の方から問い合わせがあったのは、なんか谷本容疑者と息子さんとかとトラブルがあってケンカしたかなんかあって、息子さんにケガさせたとか

その後は、近隣住民や職場の関係者も知らない空白の数年間があったという。
それが最近になって…

町会長:
4、5日前に(谷本容疑者が)来たみたい。おばちゃんが挨拶して、こっちに引っ越したんですかって聞いたら、ちゃんと覚えてた

谷本容疑者は、かつて住んでいた家に突然、戻ってきたという。その生活は、ひっそりと暮らしていたことが伺える。

町会長:
電源もガスも切ってるから住めないはず。住めないはずだけど、住んでいたっていうか野宿してたんじゃない。ガスも電気も切れてるから

近隣住民:
(谷本容疑者と)会話もないです…全く挨拶もしませんし…

紙袋を持ってビルへ…防犯カメラが捉えた当日の「足取り」

そして、事件当日の朝…

近隣住民:
(朝)8時頃も会いましたよ。見ました。普通の人。玄関の鍵を開けてはるのか、閉めてはるのかしらんけど

近隣住民が見かけた谷本容疑者の姿。そのわずか30分後のことだった。

近隣住民:
煙がぼわーって出てきました。ぼやという感じ?赤い火が出て、ぼわーって

家に消防が駆け付けたという。

谷本容疑者がこのボヤを起こしたのだとしたら、狙いは一体、何だったのか…

この時、既に谷本容疑者は家から約3.5キロ離れたクリニックに向かっていたと考えられる。
その移動手段は、現場で発見されたシルバーの自転車。

防犯カメラには、自転車を置き、2つの紙袋を持ってビルに入る谷本容疑者の姿が映っていたという。

この時、クリニック内には20人以上がいたとみられる。
警察によると、院内の防犯カメラにも谷本容疑者の姿があり、まず受付で診察券を出したあと、紙袋を床に置いて、蹴飛ばし、しゃがみ込んだ際に出火したという。
その時、谷本容疑者が自ら炎の中に突っ込むような姿も捉えられていた。

なぜ多くの犠牲者が出たのか? 専門家が語る被害拡大の要因

突然、奪われた多くの命…
12月19日に新たに8人の身元が判明。そのうちの1人は、クリニックの西澤弘太郎院長だった。
そして谷本容疑者自身も病院に搬送され、重篤な状態だという。

だが、火災発生からほぼ消し止められるまでは約30分…
なぜ、多くの犠牲者が出てしまったのか?

話を聞いたのは、ビル放火殺人の現場となった心療内科クリニックに通院中だった男性。
院内の詳細な間取りを描いてくれた。

このビルは1フロアに1つのテナントが入っていて、広さは約93㎡。
エレベーターを出ると、すぐスリッパに履き替え、受付兼待合室へ。
その先に診察室などがあり、狭い通路の奥が診察室だったという。

男性によると、クリニックの出入り口は受付のそばにあるエレベーターと、防火扉を挟んだ階段。
今回、放火されたのは受付付近だった。

中にいた人たちは、エレベーターや階段への道を閉ざされ、奥の診察室側へ逃げ込んだとみられる。
しかし、そこは…

患者:
こっち(奥)はビルと接してますからね。隣のビルと。袋小路です

4階という高さで窓からは脱出できず…。階段は1つしかなく、逃げ場を失った状況。

建物の防火・避難に詳しい神戸大学の北後明彦教授は、被害が拡大したさらなる要因をこう指摘した。

神戸大学 北後明彦教授:
避難経路が一方向しか無いという。ひどい事態になった原因としては大きいと思います。奥の方はそれほど空気の供給がないので、そうすると不完全燃焼になります。一酸化炭素もたくさん発生しやすくなるということになります

人々が逃げ込んだクリニックの奥は逃げ場がないだけでなく、空気も通りにくい状況だったとみられる。
そのため酸素濃度が減りやすく、一酸化炭素が発生しやすかったと考えられる。

警察によると、死者24人のうち、これまでの司法解剖で19人の死因が一酸化炭素中毒だったことがわかっている。
今回、火が消し止められるまでは約30分。一酸化炭素はどのくらいの早さで充満したのか?

東京理科大学 水野雅之准教授:
30分で消火できたっていうのは、避難しようとしている人にとっては決して早い消火時間ではなくて。CO(一酸化炭素)濃度が高い状態になってますから

そう話すのは、火災の煙について研究する東京理科大学・水野雅之准教授。

一酸化炭素は無色透明で臭いもない。だが、その見えない危険は煙に遅れて広がっていくという。

受付付近の放火地点から、煙は水の波紋のように広がっていき、天井付近を伝い、そこに煙の層ができる。そして壁まで到達すると跳ね返り、下へ下へと層が重なっていくという。

また、煙が広がった空間は酸素が減り、一酸化炭素が発生しやすくなる。それが部屋に充満するまでの時間は、炎の強さや広さによるというが…

東京理科大学 水野雅之准教授:
CO(一酸化炭素)が発生し始めるのは煙が充満したころじゃないかなと思いますので、5分ぐらいではCO(一酸化炭素)が本当に部屋全体に充満している状況にはなっていると思いますね。一酸化炭素の濃度が上がって、1%ぐらいになると、1、2分で意識障害や死亡に至りますので、(今回は)非常に危険な環境にあったと思います

今回のようなビルは、世の中には少なくない。
あらためて雑居ビルでの火災の恐ろしさを思い知らされた事件だった。

(「Mr.サンデー」12月19日放送分より)

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