吉野家に押し入った刃物男 厨房で「警察を呼べ」
15日午後、千葉県・八千代市の吉野家で起きた立てこもり事件は、わずか1時間半弱で解決。ちょっと不可解な事件の真相を、事件記者の立場で考察してみた。
午後4時10分、50代ぐらいの男は、吉野家の店内に入るなり、厨房に直行。店員らに向かって「警察を呼べ」と叫んだ。店内には、店員2人と客1人。男は、長さ16センチの包丁を持っていたが、店員らに突きつけるような仕草は見せなかったという。

110番通報を受けて、警察官が到着したのは6分後。警察官は、男に対して投降するよう説得を始めた。金銭などの要求はなかったとされるが、男は「カスタマーセンターの対応が悪い」などと話していたそうだ。
およそ1時間半後に身柄確保 男は完全黙秘
午後5時29分、警官隊が実力行使に出る。たばこを吸うタイミングを狙ったという。男は、その場で取り押さえられ、建造物侵入と銃刀法違反の現行犯で逮捕された。人質のいない立てこもり事件は、ケガ人を出さずに解決した。逮捕後、男は、完全黙秘を続けている。
身分証明書の類いを所持しているが、本人が何も喋らないため、千葉県警は「年齢等不詳の男」として報道発表をしている。当然、動機などについても分かっていない。男は酒を飲んでいたようだが、事件との関係は不明だ。

男は、カスタマーセンターの対応に抗議する目的で、立てこもり事件を起こしたのか?いや、それは違うのではないか。事件記者の”勘”は「年末に現れる”逮捕されたい願望男”に違いない」と告げている。
年末に現れる「逮捕されたい願望男」とは
ご存じの方も多いと思うが、年末になると、わざと逮捕されるような行為をする人たちが現れる。私の取材歴から言うと、ほとんどが男だ。意味も無く交番のお巡りさんに絡んだり、道行くカップルに殴りかかったり、飲食店でたらふく食事をした後、「金はない」と開き直ったり・・・。
そんな男たちは当然のように逮捕される。いや、逮捕されるために、あえてそんな行為に及んでいるのだ。なぜか?年末年始を警察署の留置場で過ごすためだ。年末を迎えて、金もない、住む所もない、日に日に寒くなってくる、このままでは年も越せない。

ただ、留置場に入れば、食事も出るし、寒さもしのげる。そんな動機で、事件を起こすのは許せないが、警察としては、逮捕しない訳にはいかないのだ。今回の事件に当てはめてみると、男は、開口一番「警察を呼べ」と叫んでいる。まるで逮捕されるために立てこもったようなものだ。
春ごろまで”留置場暮らし”を狙ったか
店員らに危害を加えるつもりがないところを見ると、”微罪”で済ませるつもりだったのだろう。黙秘を通していれば、釈放されるなんてことはない。このまま裁判が終わる春ごろまで、留置場・拘置所に”滞在”することができる。
これは、あくまで事件記者としての仮説だ。今後、違う真相が明らかになった場合は、お許し願いたい。とは言え、この記事を読んで、苦笑いをしている警察関係者も多いのではないか。

(フジテレビ報道局・解説委員 平松秀敏)