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“ドン”の次は“女帝”か?本気の特捜部は、“妻”をも狙う』について、フジテレビ社会部の平松秀敏解説委員が伝える。

東京地検特捜部は日本大学をめぐる背任事件に着手。元理事らの逮捕に発展し、その後“日大のドン”とも呼ばれる田中前理事長が脱税容疑で逮捕される事態となった。

そして今、田中前理事長の妻の関与も取り沙汰されている。

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脱税事件の構図は“シンプル”

フジテレビ社会部・平松秀敏解説委員:
この事件、連日報道されていますが、前理事長の田中容疑者が逮捕された脱税容疑の構図をまず説明すると、非常にシンプルなんです。日大の出入り業者側から約1億2000万円のお金が田中理事長に渡っていたにもかかわらず、税務申告をしなかった。税金を払わずに約5300万円を脱税したということなんです

平松秀敏解説委員:
この1億2000万円はどういう名目で渡ったのかですが、「誕生日のお祝い」「理事長の再任祝い」だと。「本当かよ?これは」というような名目で大金が渡っていた。実は「ナントカ祝い」じゃなくて「リベート=謝礼」などの名目で渡っていたのではないかとされています

平松秀敏解説委員:
では何の謝礼なのか?例えば日大の出入り業者にとってみれば、日大関連の工事を受注できればすごい儲けになりますから、その受注したものの見返りとして謝礼がこの田中理事長側に渡っていたということなんです。えっ!これは「賄賂じゃないですか」ということですが、公務員ならば賄賂で収賄容疑で逮捕される可能性がありますが、私立大学の日大は民間なので「リベート」とか「謝礼」というのを罪に問うというのはなかなか難しい

だから特捜部は、このカネの流れを、脱税というカネの流れでとらえて捜査に切り込んでいる。そして今どういう展開かというと、脱税に田中容疑者の妻が関わっているのではないかということなんです

特捜部の“日大の女帝”を捜査する狙いは?

平松秀敏解説委員:
確かに社会部の取材でも妻が関わっているような要素がある。そもそもが田中容疑者は容疑を否認している上に「税務申告は妻に任せたんですよ」と供述している。さらには独自で取材している日大関係者はお祝いを持っていたら、渡す相手は妻だったんだと。しかもどうも見ていると「妻が実権を握ってるように見えた」と…

平松秀敏解説委員:
資産の管理は妻が主導権を握っていたんじゃないか
ということ。さらに妻はちゃんこ店を経営している。ちゃんこ店と自宅というのは一緒の建物ですが、その自宅兼店舗から約2億円もの現金が見つかっている。こういうのを見ると確かに妻が脱税に関与しているのかなというのは、ぱっと見てそうですね

加藤綾子キャスター:
そう感じますよね

平松秀敏解説委員:
ところが私はちょっと別の見方をしたいと思っています。どういう見方をするかというと、この妻への捜査というのは「揺さぶり」、田中容疑者を揺さぶる「プレッシャー」なんじゃないかなというような見方を私はしているんです

加藤綾子キャスター:
本当の狙いは夫の方で、だから妻の方を取り調べて、それでちょっとプレッシャーを感じて何か言うんじゃないか、そういうとこ期待していると?

平松秀敏解説委員:
その通りです。過去のケースを見ると、やっぱり捜査対象者が自分ではなくて、妻や家族、息子・娘が対象になると「うわっ」と嫌な気分になるんです。「それだったら自供すればと思った」というケースも過去にはあります

ゴーン被告・小沢一郎氏…過去にも“妻をターゲット”

平松秀敏解説委員:
特捜部は時々、賛否あるけれどもこういう捜査手法をとるんです。過去の有名な事件でもこの手法が取られていたフシがある

平松秀敏解説委員:
最近一番有名なのはカルロス・ゴーン被告。2018年に逮捕されました。そのときに東京地検特捜部は何をやったかというと妻のキャロル夫人、今この人は逮捕状が出ているので「容疑者」なのですが、今日は「夫人」と呼びます。キャロル夫人の携帯電話とパスポートを没収して、東京地検に出頭しなさい、と出頭も要請したということ…

平松秀敏解説委員:
特捜部としては、この妻のキャロル夫人を要は捜査対象にして狙っているよ、という姿勢だった。明らかにこれ“自供狙い”で揺さぶってるんじゃないかと当時は見えたんですよね。結局「揺さぶり」が効かずに、キャロル夫人が国際手配されているというのが現状です

平松秀敏解説委員:
もう少し前では、小沢一郎議員の資金管理団体「陸山会」の土地取引などを巡る事件、いわゆる「陸山会事件」というのがあった。2009年ですが、特捜部は小沢一郎さん本人から事情を聴くだけではなく、なんと妻からも事情を聞こうとした。これは確かに口座の名義人は妻ではあるのですが、いやいやでもそれは…と。

平松秀敏解説委員:
当時の印象としてはやはり捜査を優位にしよう、小沢一郎議員を揺さぶろうという自供を引き出す狙いで妻の事情聴取も要請したんじゃないかと。当時取材していましたが、本当にそんな奥さんから話を聞く必要があるのか、正直私も、多くの人も思っていました

加藤綾子キャスター:
これいいんですか、事情聴取は?

平松秀敏解説委員:
事情聴取は、口座の名義人なんで一応大義名分は立つのですが、(単に名義だけの)奥さんから話を聞いてもという話なんです。最終的にこの捜査は失敗して、小沢一郎さんは無罪になって、当然妻は事情聴取にも応じなかったということなんです

平松秀敏解説委員:
過去の特捜部の事件、このようにちょくちょく事件の主人公の家族・妻を捜査対象にするケースが見られる。それは自供狙いや捜査を有利に進めるということなんですが、実際に奥さんが逮捕されたケースもあります

平松秀敏解説委員:
防衛装備品をめぐる汚職事件、贈収賄事件があり、防衛事務次官だった守屋さん、防衛省の「ドン」と言われた人。業者側からゴルフ接待などを受けて結局収賄容疑で逮捕起訴されて有罪判決になりましたが、なんと一緒にゴルフ接待を受けていた妻も逮捕された

平松秀敏解説委員:
守屋さんは事務次官でゴルフ接待を受けていたから逮捕されるのはわかる。ところが一般人の妻まで逮捕されたというので当時驚いた、さらに驚いたのはなんと最終的に起訴しなかったんですね、東京地検特捜部は。だからこれは明らかに守屋氏への揺さぶり、プレッシャーだったんじゃないかということで当時は大騒ぎになった。捜査手法としては賛否があるのは確かですね

加藤綾子キャスター:
一般の方(なのに逮捕)だとなると、ちょっとそう感じてしまいますね

平松秀敏解説委員:
(捜査対象者は)妻とか子どもが対象になるとドキッとするらしいんですよ

過去には「人質捜査」批判も

平松秀敏解説委員:
今回の日大事件は田中容疑者の妻が捜査対象になっているのが「揺さぶり」なのか、それとも「本当に脱税の嫌疑がかけられている」のか、これが今後明らかになってきます。「揺さぶり」だとすると今否認していますから自供を狙うんじゃないかなという気がしますし、妻が「ターゲットになっている」ということであれば、東京地検特捜部は日大事件に本気で本腰で取り組んでいるのだろうだと思われます

加藤綾子キャスター:
「揺さぶり」にはそういう意味合いもあったのかと、取材記者ならではの見方だと思いましたが、柳澤さんはどうですか?

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
カルロス・ゴーン事件の時に、海外から日本の検察当局の捜査の仕方が「人質捜査」じゃないかと、つまり家族を人質に取って揺さぶりをかけることはどうなんだという見方があった。やっぱり人権を侵害するようなことがあってはいけないわけで、本当に嫌疑があるんだったら正面から捜査をしていくというのがやっぱり王道ではないかなと思います。国民の目から見たときに「何かこれ変だな」と思われるような捜査はしてほしくないなとは思います

(「イット!」12月9日放送より)