日銀短観が7年ぶりマイナス 実態はさらに…?

4月1日に日銀が発表した3月の短観(全国企業短期経済観測調査)は、代表的な指標である「大企業・製造業」の業況判断指数が「マイナス8」と、前回12月の調査から8ポイント低下し、7年ぶりのマイナスとなった。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、自動車、造船・重機、繊維などを中心にほとんどの業種で悪化した。

「大企業・非製造業」や「中小企業」も大幅に悪化し、幅広い業種で企業マインドが冷え込んでいる実態が浮き彫りとなった。

しかし、実際には事前の民間予測の悪化幅よりも、ややマイルドなものにとどまっていた。

今回の短観の調査期間は2月25日~3月31日だったが、回答の基準日は3月11日で、それまでに7割の企業は回答していた。

その後に東京オリンピックの1年延期や週末の外出自粛要請など、経済活動に影響を与える様々な事象が起こったため、現状を正確に反映しているかは不透明だ。

日銀も「設備投資はこの時点では堅調な形になっているが、新型コロナウイルスの影響がどこまで織り込まれているかという論点はあろうかと思う。この点については6月短観も合わせて見ていく必要がある」と指摘している。

感染拡大が続けば、次回の6月短観はさらに大幅な悪化となる可能性もある。

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「経済全体が相乗的に悪化も」

また、同日に就任記者会見を行った全国銀行協会の三毛会長(三菱UFJ銀行頭取)は、短観の結果について次にように述べた。

全国銀行協会 三毛会長;
感染拡大の影響がこの先もしばらく続くことに対し、多くの企業が懸念を強めていることを示唆するものだった。企業の落ち込みが長引き、仮に雇用や賃金に本格的に波及していくことになると、個人消費の減退を経てさらに企業収益が悪化する。経済全体が相乗的に悪くなっていく状況にもつながりかねない。

このように危機感を示した上で、銀行界として、政府・日銀と歩調を合わせ、資金繰り支援などのサポートに全力を挙げる考えを示した。

全銀協 三毛会長
全銀協 三毛会長

経営破綻は既に全国に拡大

しかし、短観で調査開始以来最低となる「マイナス59」を記録した「宿泊・飲食サービス」を中心に、新型コロナウイルス関連の経営破たんはすでに全国に広がりつつある。

民間の信用調査会社「東京商工リサーチ」によると、4月2日18時の時点で、新型コロナウイルス関連の倒産は15件、法的手続き準備中は18件に及んでいる。

以下の表が、倒産企業をまとめたものになる。

提供:東京商工リサーチ
提供:東京商工リサーチ

産業別では、旅館や飲食などのサービス業が8件で最多。その他、食品製造、婦人服販売など、消費者対象の業種が目立つ。

いくつかのケースを挙げてみる。

・「北海道三富屋」(コロッケ製造・北海道)
近隣商業施設のイベントに出店したが、新型コロナの影響で外国人来場客が伸び悩み、売り上げを確保できず、資金繰りに行き詰まった。2月25日、破産開始決定。

・「ルミナスクルーズ」(レストランクルーズ船運営・兵庫)
新型コロナの影響で多数のキャンセルが発生し、事業継続を断念した。3月2日、民事再生法適用申請。

・「ニューステップ」(レンタカー業・沖縄)
新型コロナ感染拡大で旅行自粛が広がり、3月は大幅な減収が見込まれ、リース債務を中心に約定通りの債務弁済が難しくなると判断した。3月23日、民事再生法適用申請。

・「豆匠たかち」(豆腐製造・東京)
新型コロナウイルスの感染拡大で、購買客が減少して売り上げが急減し、事業継続が困難となった。3月25日、破産開始決定。

コロッケ製造や豆腐製造など、影響は思わぬところにまで及んでいることがわかる。

東京商工リサーチは「影響はサービス業・小売業から次第に全産業へと広がっている」と指摘する。

体力の脆弱な中小企業を中心に、早期の資金繰り支援の実行が急がれる。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者