170億円を不正送金 ソニー生命社員を逮捕

今年5月、イギリス領バミューダ諸島にあるソニー生命の再保険を担う子会社「SA Reinsurance Ltd」(以後、SA社とする)が、アメリカに持つ銀行口座から、およそ1億5500万ドル、日本円にしておよそ170億円が、別のアメリカの銀行口座に“不正”に送金された。

ソニー生命は、8月、この件について公表。「対策本部を設置し、社内調査を進める」「監督当局および捜査当局にも報告した」としていた。そして170億が消えてから半年以上が経った11月29日。警視庁捜査二課は、ソニー生命の現役社員を逮捕した。

逮捕された石川伶容疑者(32)(1日 王子警察署)
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不正送金の”偽装手口”は不明

逮捕されたのは石川伶容疑者(32)。ソニー生命の子会社であるSA社の口座から、およそ170億円を不正に送金し、だまし取った疑いだ。勤務態度に問題はなかったという石川容疑者は、口座から金が消えた5月の時点で、ソニー生命からSA社に出向中だった。

SA社は、9月末で解散することが決まっていて、石川容疑者はそのための清算作業を都内で担当。社員は数人で上司は1人だけだった。ただ、清算担当だからといって送金のハードルが低かったわけではない。

不正送金当時、石川容疑者は、不正送金の舞台となったソニー生命の子会社に出向中だった

SA社が持つ口座に送金の指示を出すには、上司の承認と取締役会での承認、そして別の資産運用会社を通した上で、やっと”送金”が実行に移されることになっていた。しかし、今回は、この段階を踏むことなく、石川容疑者が、上司の承認を偽装する手口で直接送金を指示していた。

この”偽装方法”について、捜査が進められているところだが、送金の指示を受けた銀行側は、普段から大きな金額のやり取りを行っていることもあり、不正な指示だとは気づかなかったという。

170億円の送金指示は”テレワーク”中か

石川容疑者は、テレワーク中に、不正送金の”指示”をしていたとみられる。

なぜ巨額な不正送金を行うことができたのか。その一つに“新型コロナ”が影響している。事件がおきた5月中旬、東京都の新規感染者数は連日500人を超え、3回目の緊急事態宣言が出されていた。

全国的にテレワークが呼びかけられ、石川容疑者も在宅で勤務をしていた。上司や周りの目を気にせず仕事ができる環境下だったのは確かだ。石川容疑者は、SA社の口座がある米銀行のオンライン取引ポータルに自宅から接続、不正な送金を指示したとみられている。

170億円の行方分からず FBIも参戦

そして、気になるのが、170億円の行方だ。石川容疑者は、SA社の口座からアメリカの銀行口座に移すよう指示を出したとされるが、その後の金の行方が分かっていないのだ。石川容疑者には多額の借金もなく、タワーマンション暮らしでもない。

石川容疑者が私腹を肥やすために不正送金を行ったのではないとすると、犯行の目的は何なのか。今回の事件、アメリカの口座が登場することなどから、FBIも捜査に協力。警視庁はFBIと連携し、石川容疑者の承認偽装の手口、“消えた170億円”の行方を調べている。

警視庁捜査二課は、FBIと連携し、”消えた170億円”の行方を追っている

(フジテレビ社会部・警視庁担当 山口祥輝)