「ウイルスなんて吹っ飛びそう」 笑える“壺”に注目
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各地で“外出自粛”の要請が出るなど、先の見えない現在。都市封鎖(ロックダウン)の実施は本当にあるのかといった不安が続き、何かと不自由な生活へのストレスがたまっている人も多いだろう。
そんな中、見ているだけで思わず笑ってしまうアート作品が誕生した。
新作『笑いの壺』が完成しました。どうぞご笑覧くださいませ。 pic.twitter.com/axsoIQW6oM
— 原田和明 カラクリ作家 (@kazu_automatist) 2020年3月15日
それが、いわゆる西洋からくり人形、オートマタ作家の原田和明さんが作った、「笑いの壺」。
一見、台座にのった普通の白い壺だが、その表面をポコリと叩くと、壺がクルクル回りながら大笑い!ふたをピョコピョコと跳ね上げる姿もユニークだが、あまりの大笑いっぷりにつられてニヤリとしてしまう。
最近、大笑いしたことがない…という人も、見ているだけで元気になれそうな「笑いの壺」。
実は、完成前の壺の“中身”を投稿した際、作者の原田さんは「こんなご時世だからこそ、思わず肩の力が抜けるような作品を作りたい」とコメントをしている。
こんなご時世だからこそ思わず肩の力が抜けるような作品を作りたいと思って、新作の実験中。 pic.twitter.com/sy8mkxU1d2
— 原田和明 カラクリ作家 (@kazu_automatist) March 4, 2020
動画を見た人からは「サイコーです」「これいいなあ!」というコメントの他、「コロナウイルスなんて吹っ飛んじゃいそうなほど豊かでおもしろい」との声も寄せられているが、そんな「笑いの壺」に込めた思いについて、作者の原田さんにお話を伺った。
「笑いのツボ」という言葉が頭に浮かんだ
――「笑いの壺」を作ったきっかけは?
僕は言葉や音楽から創作のヒントを得ることが多いのですが、今回も「笑いのツボ」という言葉がふと頭に浮かびもし本当にそんな壺があったら面白いだろうなぁ、と思って作りました。
――「笑いの壺」の仕組みはどんなもの?
金属の円板がセンサーで振動を感知すると笑い声の再生とモーターの回転が同時に起こります。モーターで壺を動かしています。
――「笑いの壺」は「オートマタ作品」ということですが、オートマタとはどんなもの?
お茶を運んだり、矢を射ったりする日本の伝統的なからくり人形は、仕組みが見えないように作られていて、人形がまるで生きているかのように見えます。
僕たちが作っている「オートマタ」は、仕組みもデザインの一部として見えるようにつくられた
からくり人形です。人間や動物の動きをリアルに再現することより、作家の自己表現に重きを置いています。
2002年からオートマタ制作を始め、イギリスのオートマタ作家であるマット・スミス氏に師事したという原田さん。2008年からは山口県山口市秋穂に工房を構え、オートマタの制作やワークショップ、世界のオートマタ展の企画制作などを行っているという。
そんな原田さんがこれまでに手がけた「オートマタ」の作品は、公式サイトをはじめYouTubeなどで公開されているが、どれもユニークで細やかな動きが魅力的だ。
「大変な時期だからこそ、作品で気持ちが軽くなってくれたら」
――「笑いの壺」を見た人に伝えたいメッセージは?
新型コロナウイルスの影響でみなさん大変な時期を過ごされていると思うのですが、そんなとき僕の作品でクスっと笑って少しでも気持ちが軽くなってくれたら嬉しいです。
――作品に通じるコンセプトやテーマは…
ふと思いついた他愛もないアイデアを手間暇かけて美しい作品に仕上げたいと思っています。
――今後、どんな作品を作っていきたい?
昨年、念願叶って僕の作品集「話せば短くなる」が出版されたので、今後はその本を扱ってくださっている全国のお店で個展を開催して、作品と本の紹介ができたらいいなと思っています。
今は6月に新宿のBギャラリーで開催される個展に向けて制作をしています。次回作、『思う壺』もいい感じになりそうです。どうぞお楽しみに。
眺めているだけで元気になれる、「笑いの壺」をはじめとした作品たち。
普段と違う生活のテンポに、知らず知らずのうちにイライラがたまりがちな時期だからこそ、肩の力を抜いて笑える時間を大切にしてほしい。
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