福岡市内にある認可外保育園。外国人スタッフが勤務し、英語などを学ぶことができることから人気となっているが、3階の利用は行政への届け出がされていない状況だった。なぜ不適切な状態だったのか、経営者を直撃した。

3階の保育室使用 防災上での危険性を指摘

怒りをあらわにする保護者。向けられた矛先は、わが子が通う保育園だった。

問題の保育園に子どもが通う保護者:
子どもにとっての大切な時間を何だと思っているんだろうと。保育園の建物自体も古い感じではあるので、何かあったときのことを思うと本当に、とにかく許せない

保育園への怒りを語る保護者
保育園への怒りを語る保護者
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関係者から入手した動画では、保育園内を1階から上がって行くと、2階は保育室として利用されているようにみられる。さらに3階に上がると、そこにも保育園のスタッフと園児の姿があった。

行政への届け出がされていない3階にもスタッフと園児の姿が
行政への届け出がされていない3階にもスタッフと園児の姿が

動画を見る限り、3階も保育室として利用しているようだ。しかし、3階の利用は行政への届け出がされていない不適切な状況だった。

これを見た防災の専門家は…。

防災コンサルタント・中野秀作さん:
3階を保育園の用途に使うには、それなりに防火対策、消防法に定められている最低基準は守っていただかないと。何かあったときに死傷者が出る可能性は高い

 
 

濱田洋平記者:
問題となっている保育園ですが、福岡市の登録では1室のみ、2階だけとなっています

届け出は2階のみの使用にしているにもかかわらず、数年前から3階を使用していたという疑惑があるのだ。

3階以上は「2つの避難経路」が必要 保護者が怒り

認可外保育園は待機児童の受け皿として注目され、福岡市でも2016年の166から2021年には309と倍近くになっている。

一般の保育園と比べて保育士の数が少ないなど、運営のハードルが低い一方、自治体は一定の安全基準を求め、年に1回立ち入り調査をしている。

問題の保育園は、なぜ3階での保育を届けずに行っているのか。専門家への取材でその理由の一端が見えてきた。

防災コンサルタント・中野秀作さん:
3階は何があっても2方向で避難できるような対策が必要。動画を見る限りでは(避難経路が)1カ所しかない。収容人員もかなり多そうでしたので、それを誘導しながら全員を逃がすというのは、なかなか難しいかなと

避難経路が1つしかないことで、大きな被害につながったケースがある。

2001年の東京・新宿歌舞伎町の雑居ビル火災では、避難経路が屋内の1カ所しかなく、3階以上にいた44人が死亡している。

多くの人が犠牲となった新宿歌舞伎町の雑居ビル火災
多くの人が犠牲となった新宿歌舞伎町の雑居ビル火災

自治体は、認可外保育園が3階以上を保育室として利用する場合、2つの避難経路を設置するよう要求している。しかし、問題の保育園には、建物の中の階段以外の避難経路がなかった。

問題の保育園に子どもが通う保護者:
最初に2階で朝の朝礼みたいなのがあって、そのあとは3階に上がって、迎えに行く午後4時くらいまでずっと過ごしている。もし何も対策を考えずに3階を使用しているんだったら、正直、怒りをぶつけたい

さらに別の保護者は…。

問題の保育園に子どもが通う保護者:
私たちも3階が普通に許可が取れていると思って、安心して預けていたので。火事が起きた場合は逃げられない。どこに逃げたらいいんだろうと。本当に怖いので、すぐにでも退園して別の保育園に移りたい

鉄製の屋外非常階段 子どもが使いやすい設計に

ほかの認可外保育園では、園児の避難経路をどう確保しているのか。

春日市にあるオハナ保育園では現在、0歳から6歳までの園児40人が在籍している。2階建ての園舎に設置されていたのは、鉄製の大きな非常階段だった。

オハナ保育園が設置する避難経路(福岡・春日市)
オハナ保育園が設置する避難経路(福岡・春日市)

オハナ保育園・山本勇伍園長:
避難経路の非常階段ですね。2階から降りてくる用に。使うのが小さい子どもなので、段差を低くして幅を広げた。保育士が子どもを抱えて降りる場合もあるので、幅がないと避難できない

この保育園は、もともと企業の事務所だった建物を利用して4年ほど前に開園。階段は屋内の1カ所しかなく、開園前に数百万円かけて屋外階段を設置したという。

オハナ保育園・山本勇伍園長:
僕たちは命を預かっているので、最低限の基準は持っていないといけないと思う

オハナ保育園・山本勇伍園長
オハナ保育園・山本勇伍園長

「一時的な利用なら問題ないと思っていた」

一方で福岡市にある問題の保育園は、なぜ不適切な状態だったのか。経営者を直撃した。

――危険な認識は持っている?

保育園の経営者:
はい、そうですね。実際に3階も使うときもあるというのが事実で。(園児の)人数も増えて、コロナもあるので…

保育園の経営者:
僕が(保育園に)入ったのが6~7年前で、(経営を)引き継いで3年目。今は僕が代表だけど、その前から恒常的に一部の時間、(3階を)使ってはいたので。それを引き継いでいるかたちはあった

3年前に経営を引き継いだという男性は、3階の利用については認めつつも違法性があるとは思っていなかったと話す。

――3階の使用にはもう1つ避難経路がいると思うが、それはクリアしている?

保育園の経営者:
それはない

――クリアしていない?

保育園の経営者:
なので、朝から晩までずっとは使わずに、やむを得ないときだけ

――どれくらいの時間?

保育園の経営者:
だいたい5時間半くらい

経営者の男性は、「一時的な利用であれば問題ないと思っていた」と主張する。

今後の3階の利用はどうするのだろうか?

保育園の経営者:
我々の認識が甘かったというのは、正直思うので。(3階の使用について)1分たりとも厳しいということであれば、2階だけで人数的にぎゅうぎゅうではあるけど、できなくはないので

福岡市によると、取材を受けた男性はその後、市に自ら連絡を入れ、3階を使用していた事実を伝えた上で基準を満たすまでは2階のみを使用すると約束したという。

待機児童の受け皿にもなってきた認可外保育。最優先されるべきは、子どもたちの命でなくてはならない。

(テレビ西日本)