コロナウイルス感染拡大が続く中、今月の学校再開に向けて文科省では、ガイドラインのさらなる厳格化を検討している。だが一方で、学習塾や予備校は、現在も春期講習として授業を継続しており、保護者から「本当に大丈夫か?」といった苦情や不安の声が上がっている。現状を取材した。

「秋まで休校といった案も出ている」

「新学期からの学校再開については、引き続き警戒緩めることなく準備することが必要です」

 
引き続き警戒は緩めないと主張する萩生田文部科学相
引き続き警戒は緩めないと主張する萩生田文部科学相
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萩生田文科相は先月30日の閣議後会見でこう述べ、今週中に行われる専門家会議の見解をもとに、再開ガイドラインのさらなる厳格化を行う考えを示した。

その具体例として萩生田氏は、「分散登校」や「時差通学」の実施を挙げたほか、感染の急拡大が懸念される地域では、臨時休業を実施する可能性もあると述べた。

また、感染者が急増している東京都では、今月から予定していた都立高校の再開を、ゴールデンウイーク明けに延長する方向で調整している。

学校再開については、政府の中でも「秋まで休校といった案も出ている」(関係者)など意見が割れており、感染拡大の状況を見ながらぎりぎりの判断を迫られる状態が続きそうだ。

「本当に子どもを行かせて大丈夫か」

果たして学校再開はいつになるのか・・・
果たして学校再開はいつになるのか・・・

このように学校再開に関係者が神経をとがらせている一方で、「本当に子どもを行かせて大丈夫か」と保護者が心配しているのが、春休み中も授業を続ける学習塾や予備校だ。

小学校6年生の子どもの保護者はこう語る。

「春期講習が先日の土日の自粛のタイミングと重なったので、迷いましたが子供を休ませて家で勉強させました。周囲にも同じ判断をしたご家庭があったようです」

子どもに学びの場を与えたい一方で、コロナウイルス感染リスクは何としても避けたいのは、どの保護者も同じ気持ちだろう。

「すでに1ヶ月、子どもたちは学校を休んでいるので、みんなと顔を合わせさせてあげたいのですが、感染の可能性を考えると躊躇してしまいます。一方、今年は受験なので勉強が遅れるわけにもいかず、本当に悩んでいます」(保護者)

「予備校には受験生を預かる責任がある」

都内で春期講習を行っている、ある大手予備校は「受験生と保護者にご迷惑、ご心配をおかけしないよう、あらゆることをやっています」(担当者)と強調する。

この予備校では、講師・スタッフの体調管理、うがい手洗いの励行、教室・自習室の定期的な換気や消毒のほか、生徒同士が密接しないような席の配置を行っているという。

一方で担当者は、苦しい胸の内をこう語った。

「どこまでやっても、保護者の心配は終わらないと思います。私たちも今後状況がどうなるかわかりません。しかし未成年者をお預かりしている責任があるので、きっちりやらなくてはいけないと思っています」

授業参加か動画配信か、家庭が選択を

すでにオンライン授業を検討している学習塾も
すでにオンライン授業を検討している学習塾も

大手進学塾の日能研でも現在、春期講習を行っている。その際には、授業に参加するか、配信する動画で学習するかを、家庭が選択出来るようにしている。

日能研関東の小嶋隆代表取締役はこう語る。

「今のところ9割以上のお子さんが通って来ていますが、来週以降はZoomなど映像ツールを利用し、授業を行う可能性も考えています。今後については状況を見ながら柔軟に対応するつもりですが、現時点では休室を前提でとは考えていません」

文科省では地域ごとの臨時休業なども検討しているが、日能研では「文科省と足並みをそろえるかはまだ分かりません」(小嶋氏)という。

「3密」対策が不十分な学習塾も

学習塾や予備校を所管する経産省では、一斉休校要請の翌日、大人数の講義の自粛やオンライン講義の導入・振替について学習塾に要請を行った。また3月上旬にも、大手25社や全国学習塾協会、小規模塾の組合を集めた会議の場で、引き継ぎ徹底した対策を要請した。

これを受け学習塾協会では、新型インフルエンザ当時のガイドラインを改訂。多くの学習塾ではオンライン授業の拡充や、衛生対策の徹底、少人数でのクラス運営など対策を講じている。

「しかし一部に、『3密』対策が不十分な中で大人数の講義をしている、学習塾についての苦情が経産省に寄せられています」(経産省 教育産業室・浅野大介室長)

こうした声を受けて経産省では2日、大手25社や学習塾協会などを集めた連絡会議をオンラインで開催し、対策徹底を要請する予定だ。

学校も学習塾・予備校も、子どもが集い学ぶ場としては同じである。そうであれば休校・再開の判断は、統一した基準で検討する必要はないか。そうしないと混乱するのは保護者であり、リスクを負うのは子どもたちである。

 【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。