被告人質問で「覚えていない」 法廷には遺族の嗚咽

運転手の梅沢洋被告(61)は、21年6月、業務中にパーキングエリアで酒を飲んだ後、トラックを運転。千葉県八街市で、居眠り状態のまま下校途中の小学生の列に突っ込み、7歳と8歳の男の子2人を死亡させ、3人に大ケガをさせたとされる。

初公判で、起訴内容を認めた梅沢被告。15日の被告人質問では、弁護士から事故当時の状況について細かく質問が飛んだ。しかし「覚えていない」との答えを繰り返した。捜査段階の取り調べでは「事故の直前に右方向から黒い影が飛び出してきた」と供述していたのだが・・・。

危険運転致死傷の罪に問われている梅沢洋被告(61)
この記事の画像(7枚)

 弁護士:右から黒い影が飛び込んできた?
梅沢被告:(野球の)ボールというか、拳というかそのくらいかと思いますが、とっさで分からなかった。左にハンドルを切ったような気がします。
 弁護士:ブレーキは?
梅沢被告:いつもなら踏んでいると思うが覚えていません。
 弁護士:事故後防犯カメラの映像を見たでしょう?
梅沢被告:(黒い影は)いませんでした。
 弁護士:今思うと黒い影はあったと思う?
梅沢被告:なかったと思います。

曖昧な答えを繰り返す梅沢被告。発生直後は、電柱と衝突した「物損事故」との認識だったという。しかし、小学生が持つ防犯ブザーの音が耳に入り、異変に気づいたとのこと。ここで法廷に遺族の嗚咽が響いた。裁判は一時中断となった。

梅沢被告は起訴内容を認めたが、被告人質問では「覚えていない」を繰り返した(15日 千葉地裁)

勤務中に「マグロつまみに焼酎をストレートで」

道路を歩く子ども達の姿に、なぜ気がつかなかったのか原因を問われると、梅沢被告は「飲酒による居眠りだと思います」とはっきりと答えた。居眠りをしていたら、子ども達が見えなかったのはもちろん、自分の運転がどうだったのか思い出せないのは当たり前だ。

事故が起きた現場(6月28日 千葉・八街市)

事故当日、梅沢被告は、午前と午後の運搬を終えた後、市川市内のコンビニで、カップの焼酎を購入。量は220ミリリットル、アルコール度数は20%。そのまま高速道路に乗り、幕張パーキングエリアに昼食のために立ち寄った。

自分で用意した弁当のおかずはマグロの刺身だった。ところが味が薄かったため、醤油に加えて、買ったばかりの焼酎を調味料としてたらしたという。その後、マグロの刺身をつまみに、焼酎をストレートで飲んでしまったという。

勤務中に飲酒は当たり前 「イライラして酒飲んだ」

一見幼稚な言い訳に聞こえるが、驚くのは「業務中に酒を飲むこと」が常態化していたことだ。業務中に酒を飲んだのは今回が初めてかを問われると「何度もあります」と即答。週に1~2回は、運搬先から帰る途中にパーキングエリアで飲んでいたとのこと。

梅沢被告は、週に1~2回、勤務中に、酒を飲んでいたことを明らかにした。

さらには、週に2~3回、会社に戻った後、日報を書きながら、酒を飲むことは当たり前。もちろん自宅に帰るのも車で、飲酒運転だ。理由を問われた梅沢被告は「会社に帰った時は(仕事が終わって)一段落して飲みます。パーキングエリアでは、現場でイライラすることがあったときに飲みました」と悪びれずに打ち明けた

運転のプロであるはずのドライバーが、なぜ、ここまで好き勝手ができるのか。被告人質問の前に証言台に立った、梅沢被告の上司によると、ドライバーに対する、アルコール検査などのチェック体制はなかったという。

取引先から「酒臭い」苦情も放置 そして事故が・・・

しかし、去年の夏以降、取引先から「梅沢が酒臭い」という苦情が、4回ほどあったとのこと。にもかかわらず、「前の晩の酒が残っていたのだろう」と思い、何の対処もしなかったそうだ。当然、二日酔いの状態でもハンドルを握ってはいけない。

取引先から、梅沢被告の”飲酒”について苦情が寄せられていたが・・・。(6月28日 千葉・八街市)

この上司は、一度、直接、注意をしたが、梅沢被告は「ああ、わかった」と空返事のみ。結局、梅沢被告の”悪行”は放置されたまま。そして重大な事故が起こってしまった。こんな無責任な大人たちのせいで、2人の子どもの命が失われたのか・・・。

梅沢被告が所属していた会社の親会社と、その会長は、大型トラックを5台以上所有する際に置かなければならない「安全運転管理者」を置いていなかったとして略式命令を受けた。罰金の額は、わずか5万円だ。

次回12月1日の公判では、検察官による被告人質問が行われる(15日 千葉地裁)

(フジテレビ社会部・千葉支局 風巻隼郎)
(イラスト:法廷画家 石井克昌)