ファスト映画をめぐり、全国で初めての司法判断が下された。

映画を10分ほどに無断編集した「ファスト映画」を投稿サイトに公開したとして、著作権法違反の罪に問われた男女3人に対し、仙台地方裁判所は11月16日、有罪判決を言い渡した。

裁判長は「映画の収益構造を破壊し、映画文化の発展を阻害しかねない」と厳しく非難し、3被告に「ファスト映画の公開はあなた方が思っている以上に重い罪です」と説諭した。

仙台地裁で開かれた判決公判
この記事の画像(7枚)

5作品の映像を無断編集 “ファスト映画”初の司法判断

判決を受けたのは、札幌市の無職・高瀬拳也被告(25)、札幌市の無職・下田和奈被告(25)、東京都渋谷区の自営業・菅喬之被告(42)の3人。

送検される高瀬被告(2021年6月)

判決によると、3人は2020年6月から7月にかけて、高瀬被告の自宅で5回にわたり、東宝など13社が著作権を持つ『アイアムヒーロー』など5作品の映像を無断で編集し、あらすじを説明した字幕やナレーションをつけた「ファスト映画」を動画投稿サイトに公開したとして、著作権法違反などの罪に問われた。

警察が公開した押収品

「映画の収益構造を破壊し、映画文化の発展を阻害」と厳しく非難

16日に開かれた判決公判で、仙台地裁の大川隆男裁判長は「ファスト映画の作成及び公開は、映画の著作権者が正当な対価を収受する機会を失わせ、映画の収益構造を破壊し、映画文化の発展を阻害しかねないものであり、厳しい非難に値する」「著作権を侵害された著作権者は21社にのぼり、被害額も多額になることがうかがわれ結果は重大」などと指摘。

一方で「これまでファスト映画で刑事責任を問われた事例がなかった」とし、「被告には前科がなく反省の態度を示していることから執行猶予付きの判決が相当」とした。

判決は、主犯格とされた高瀬被告に懲役2年・執行猶予4年、罰金200万円。共犯とされた下田被告に懲役1年6カ月・執行猶予3年、罰金100万円、菅被告に懲役1年6カ月・執行猶予3年、罰金50万円が言い渡された。

左から高瀬被告、下田被告、菅被告(塩釜警察署への移送時)

約2100本もの投稿…映画会社の損害は956億円に

判決言い渡し後、大川裁判長は3被告に対し「ファスト映画を作成し公開することはあなた方が思っている以上に重い罪です。今後予想される著作権者からの損害賠償請求には誠意をもって対応するよう努めてください」と説諭した。

仙台地裁 大川隆男裁判長

「ファスト映画」は著作権法違反にあたるとして、宮城県警が全国で初めて摘発した今回の事件。しかし、現在も動画投稿サイトには多くの「ファスト映画」が投稿されている。

映画会社やアニメ制作会社などで作るCODA(コンテンツ海外流通促進機構)によると、2021年6月時点で少なくとも55アカウントから約2100本の「ファスト映画」の投稿が確認されていた。投稿者は再生回数に応じて広告収入を得るが、本編を見られなくなることによる映画会社の被害は約956億円にのぼると推計されている。

「軽い気持ち」では済まされない大きな代償

今回の裁判でも、高瀬被告は「犯罪にあたるかもしれないと思ったが、生活費を稼ぐ必要があった」と述べ、共犯とされる下田被告は「他にも映画紹介をしている人がいたので大丈夫と思ってしまった」と述べていた。

3被告の共犯として7月に書類送検された20代の男性は、仙台放送の取材に対し「オンラインゲームで知り合った高瀬被告に頼まれ、軽い気持ちでナレーションを引き受けた」と話していた。この男性が受け取った報酬は10万円弱だったが、男性は映画会社1社に1000万円以上の和解金を支払うことになった。

「ファスト映画」をめぐり全国で初めて下された司法判断。今回、3被告に執行猶予付きの判決が言い渡されたが、大川隆男裁判長は「本判決等により、ファスト映画の違法性が一段と周知された後もファスト映画の作成や公開が横行するのであれば、その量刑傾向は重い方向にシフトすべきである」と述べ、安易な著作権侵害に警鐘を鳴らした。

3被告は刑事責任に加え、今後、映画会社からの損害賠償請求という民事責任を負うことになる見込み。「軽い気持ちでやった」では済まされない大きな代償を払うことになる。

(仙台放送 澤田滋郎)