Su-27と間違えられた露Su-35S戦闘機

9月19日午前、日本海の北海道沖から能登半島沖を飛行していた3機の航空機に、航空自衛隊がスクランブルを掛けた。一時、日本の領空に接近する可能性があったからである。

Su-35(上)・Su-24(下)撮影:航空自衛隊
この記事の画像(9枚)

航空自衛隊のパイロットが撮影した画像から、1機はロシア軍のSu-24戦術偵察機、1機はロシア機と推定されたものの機種不明。
もう1機は当初、ロシア軍のSu-27戦闘機と防衛省は判断した。だが翌日、防衛省・統合幕僚監部は、Su-27と判断していた機体を、Su-35に訂正した。

航空自衛隊のスクランブルで、Su-35が確認されたのは、今回が初めてであり、機種を訂正するのも異例である。
もともとSu-35は、Su-27戦闘機の発展型のひとつであり、噴射口の向きを変えることで空中での高い機動性を誇るが、最大の特徴は、強力なイルビスEレーダーを搭載したこと。

イルビスEレーダー(スホーイHPより)

このレーダーは、強力なパワーで、90㎞先の0.01平方メートルのモノを感知するという。
つまり、10cm四方のモノを90㎞先から感知できるというわけだ。従って、中途半端なステルス性能の機体や、ステルス機であっても姿勢によっては探知されるかもしれない。

Su-35S戦闘機(ロシア国防省YouTubeより)

今年8月、北方四島のひとつ、択捉島・ヤースヌィ空港に3機のSu-35S戦闘機が飛来。
試験戦闘配備」が行われたとされており、日本政府も注目している戦闘機だ。
では、なぜ防衛省で、識別を修正せざるをえなかったのか。

外観が似ている最新型Su-27SM3とSu-35S

航空軍事評論家・石川潤一氏:
極東ロシアのコムソモルスク・ナ・アムーレのドジョムギ基地の第23前線航空連隊所属の単座型フランカーとしては、Su-27SMとSu-35Sが確認されているが、濃いグレーのレドームや翼端のL265M10 Khibiny-M電子戦ポッドが付いていることからSu-35Sとみられる。

だが、Su-27の最新型のSu-27SM3はSu-35Sのアビオニクスに換装。Su-35と同じ、Khibiny-Mポッドの搭載も可能であるため、公開された画像からは、判別は困難だったと思う。

Su-27(ロシア国防省YouTubeより)

Su-27戦闘機の最新型Su-27SM3は、性能向上を目的に、結果として外観がSu-35Sに近づくよう改造されているため、遠くからでは、外見からの判断は難しくなっているという。

性能は極端に異なるのに、外観が遠目では区別がつかない”というのは、相対する側にとっては厄介な存在に間違いないだろう。
だが、このSu-35S戦闘機が、ロシアと中国にとっても悩みの種になりつつあるようだ。

露Su-35を購入し、米に制裁対象とされた中国軍の装備調達部局

9月20日、米国務省は「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」に基づき、ロシア連邦に対する新たな制裁対象を発表。
ロシアの情報部門の人物等、33人を新たに制裁対象に加えて、72人とした。

そのほか、制裁対象であるロシアから2017年に10機のSu-35を購入し、さらに、2018年にS-400地対空システムの関連部品を導入した、中国のEDD、中国軍の調達を担当する中央軍事委員会装備発展部と、その長である李尚福部長を制裁対象リストに載せた。

S-400地対空システム

これにより、EDDも部長個人も、米国との取引が出来ないのは勿論、米国の金融システムを通じた取引が出来なくなり、EDDは、装備の調達で、ドル決済が難しくなるようだ。

このため、中国外務省が「アメリカの行動は国際関係の基本原則に違反する。即座に、いわゆる制裁措置を撤回するよう強く要請する。さもなければアメリカはその結果を負わなければならない」と反発したのは予想されたことだろう。

ラブロフ露外相

しかし、ロシアのラブロフ外相は「競争行為としてアンフェアだ。ドルの制度が完全に信用できず、ドルに対する信頼が急落していることを再び皆が理解しただろう」と述べた。
うがった見方かもしれないが、ロシアの兵器・武器輸出がドル決済に依存していることを裏返しに示した格好になった。

さらなる仕掛け、S-400地対空システム

中露が、この米政府が仕掛けた問題をどのように解決するかも、興味深いのは、EDDの制裁理由に、S-400地対空システムの名前もあがっていること。
NATO諸国であるトルコが、S-400導入を決めたことに米議会は、トルコへのF-35Aステルス戦闘機を停止する法的措置をとっており、トルコにとっては、今回のEDDの件は、さらなる圧力と映るかもしれない。

S-400地対空システム

米議会が反発したのは、S-400をトルコが配備すれば、その前を米軍をはじめとするNATO加盟国の軍用機が飛ぶことになりかねず、また、NATOの防空システムにトルコのS-400を連接するなら、S-400を通じて、ロシアにさまざまな情報が筒抜けになりかねないと危惧したからとみられている。F-35Aを導入している日本にとっても、安全保障上、気掛かりなことだ。

日本のF-35A(提供:航空自衛隊)

また、S-400に関しては、インドも導入を検討しており、こちらにも影響するかもしれない。インドは元々、その非同盟政策から、装備導入がどこかの陣営に偏らないよう、ロシアからも米国や欧州からも装備を導入している国である。インドにとっては、米国から踏み絵を踏まされるようなかっこうになるかもしれない。


関連記事:「能勢伸之の安全保障」をまとめて読む