「京王線でおきた事件をニュースでみてやった」

8日、熊本県内を走行していた九州新幹線の車内で、床に液体をまいてライターでレシートに火をつけて燃やそうとした男が逮捕された。新幹線は非常ブザーで緊急停車し、車内で煙があがっていたため車掌らが消火にあたり、けが人はいなかった。

放火未遂の現行犯で逮捕された福岡市の三宅潔容疑者(69)は「東京の京王線でおきた事件をニュースでみてやった」と供述しているという。

三宅潔容疑者(69)
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10月31日におきた京王線の刺傷事件で逮捕された服部恭太容疑者(25)は乗客をナイフで刺した後、ライターオイルで床に放火し、「たくさんの人を燃やして殺したかった」と供述している。

京王線刺傷事件 服部恭太容疑者(25)

今年8月には小田急線で乗客が男に刺される事件があったが、服部容疑者は「小田急線の事件を見てこれだと思った」と供述していて、通勤通学で必要不可欠な公共交通機関の鉄道で、同様の事件が相次いでいる。

8月・小田急線刺傷事件

鉄道会社が進める安全対策

鉄道各社では警備員の同乗や防犯カメラの設置、警察との訓練など安全対策を進めている。

東急電鉄はほぼ全車両に防犯カメラを設置していて、カメラは4Gデータ通信に対応し、LED蛍光灯と一体型になっている。1両で2週間程度かかる配線などの工事が不要で30分程度で設置ができ、カメラの映像はデータ通信によって迅速に本社などの権限を与えられたパソコンで確認することができるという。

東急線車内の防犯カメラ

去年、乗り入れている東京メトロの車内でおきた放火事件では、警察に映像が提供され、その後容疑者が逮捕されたという。

東急線車内の防犯カメラ

ただすべての映像を監視続けることはできないため、乗客が非常通報装置を押すなど車内で不審な動きがあったことが確認されると映像を確認する仕組みになっている。東急電鉄では将来的にはカメラに温度センサーの搭載やAIを活用した不審物の自動検出を目指すなど、各社の取り組みも始まっている。

車内の防犯カメラのイメージ

また駅のホームには緊急停車ボタンのほかに、駅員と話せるインターホンが設置され、線路への転落などの非常時や不審なことがあればすぐに連絡できるようになっている。

東横線ホームの通報装置

「Run(逃げる)  Hide(隠れる)  Fight(闘う)」スマホ撮影には警鐘

鉄道各社はこのように様々な安全対策を進めているが、一連の事件のように凶器などを準備して計画的に犯行が行われた場合は、防犯カメラは抑止力にはなっても犯罪を未然に防ぐ決め手となるかと言えば難しい。

乗客自らが車内やホームで不審な動きがないか注意することが重要になるが、警察庁で捜査1課理事官や警察大学校長などを務めた安田貴彦氏は「航空機のような厳格な手荷物検査は難しいが、鉄道でも可能な範囲で手荷物検査をすることで、一定の抑止にはつながる」と指摘する。東京オリンピック前の今年7月、テロ対策強化のため国交省令が改正され、鉄道会社も手荷物検査ができるようになっている。

安田貴彦氏

さらに被害に遭わないために「こうした緊急事態に遭遇したときに備えて分かりやすい言葉を共有することも必要」で、無差別の発砲事件が多い銃社会のアメリカでは「Run(逃げる)」「Hide(隠れる)」「Fight(闘う)」という事件に遭遇したときの取るべき行動が優先順位をつけて知られているという。

安田氏によると実際に日本でも屈強な警察官であっても容疑者を組み伏せたときに隠し持っていた刃物で刺されるケースもあり、ましてやそうした状況に遭遇したことがない人が対処することは危険を伴うので、「まず逃げることと通報することを優先してほしい」と話す。

また一連の事件ではスマートフォンで犯行の状況や容疑者の様子が撮影されたが、「非常に危険な行為だと思う。安全が確認されていない状況での撮影は逃げ遅れることもあるし、撮影行為が犯人からは挑発していると思われることもある」と警鐘を鳴らしている。

【執筆:フジテレビ報道局 解説委員室室長 青木良樹