クリエイティブなユーザー向けのペンタブレット分野で常に業界をリードし続けている株式会社ワコム。2017年にリリースしたクリエイターやプロフェッショナル向けの液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 16」から大幅にアップデートされた「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」が11月5日に発売されました。アップデートするにあたり、お客様の声をいかに反映できるかを最大限に考え、根底となる製品企画を見直しました。今回は前後編で「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」の製品企画プロジェクトや製品の変更ポイントをお届けします。後編では「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」の特に大きな10個の改善ポイントについて、プロジェクトに参加したテクニカルサポートの松本健太郎、プロダクトマーケティング マネージャーの小幡幸結、エンタープライズ / デザイン教育グループ統括マネージャーの角井健一、デザインテクノロジー&エクスペリエンス マネージャーのホルヌング ティロ、プロダクトプロジェクトマネージメント マネージャーの坂本裕介、プロダクトプロジェクトマネージメントの佐藤照子の6名に、話を聞きました。

1.簡単な接続に大幅リニューアル


松本「今回の大きな変更点は、まずは接続ですね。『USB Type-C+電源ケーブル』または『USB Type-C to Aケーブル+HDMIケーブル+電源ケーブル』での接続が可能になりました。一般のケーブルが使えるのが大きな特徴です。今までのWacom Cintiq Proシリーズは、Wacom Link Plusという変換アダプタを使わないと、HDMIなどの端子に接続ができませんでしたが、Wacom Link Plusを経由するとケーブルがゴチャゴチャとしてしまうのでシンプルに接続できるほうがお客様の作業環境がより良くなるのではないかと考えました。」


ティロ「接続に関してはいくつか改善したいと考えていたポイントがありました。1つ目は、お客様が簡単にケーブルを接続できること。2つ目が可能な限りケーブルを隠してスッキリ見せること。そして3つ目は、さまざまなPC構成との互換性を確保することが重要でした。一言で言うと、私たちの目標は『ユーザーの皆さまが純粋に自分の作品制作に集中できること』です。いかに手間をかけずに迅速に作業が開始できるようにするかを考えました。また、制作環境をヒアリングしている中で、利用している机がそれほど広くないため、デバイスの配置にとても苦労していることがわかりました。これを解決するためにWacom Cintiq Pro 16(2021)のディスプレイ背面端に接続端子を配置したので、ケーブルを気にせずに、作品を制作していただけます。」


角井「学校や企業に設置する場合ですと1台だけではなく20台、30台と並ぶので、ケーブルも20本、30本あります。Wacom Link Plusが使われていると1台につき3本のケーブルが必要になってしまうため、液晶ペンタブレット1台繋ぐのに何本のケーブルがあるのかという状態になります。他にもデュアルやトリプルでモニターを使っていたり、別の周辺機器を接続している人も多く、ケーブルが多いのは作業環境としてあまり良くないと感じていたので、今回シンプルな接続方法に改善できたのは良かったと思います。」


松本「専用製品のWacom Link Plusを排除したのはとても大きいですね。例えばケーブルが断線してしまった場合は、家電量販店に行って市販のケーブルを買うだけで、すぐ使えるようにすることを優先して考えました。Wacom Link Plusの場合は、この製品が壊れてしまうと新たにWacom Link Plusを買い直さないと作業が止まってしまい、負荷が大きいなと感じていました。万一のときでもお客様の作業の手を止めないようにという観点をとても大切に考えましたね。」

2.タッチメニューの削除

前モデルにあったタッチメニュー


松本「前モデルのWacom Cintiq Pro 16の場合、画面右上にタッチメニューがあるのですが、それが誤操作の原因になってしまうという声を多くいただきました。一番右上という位置は、右利きの人が使っていると、どうしても当たってしまう場所です。なおかつ、静電のタッチパネル式のボタンを使っているため、指が少しでも触れるとタッチとして認識して勝手にオンやオフになってしまうので、意図しない誤作動が起こってしまうというお問い合わせが多かったです。やはり液晶ペンタブレットの表面には操作機能を持たせないほうが誤作動は生まれないので、タッチメニューを削除しました。」



ティロ「タッチメニューを誤って押す回数が多いと、制作の集中を乱してしまうことに加えて、タッチメニューにアクセスするために、ユーザーによって異なる設定や機能を必要としていることもわかりました。そこで、元のタッチメニューの各機能を評価し、アクセス方法とカスタマイズ性を再定義しました。」


小幡「タッチメニューは利用されている方ももちろんいらっしゃるのですが、どちらかというと、ネガティブなご意見の方が多かったです。この機能を入れるか削るかを判断する際は、直接お客様にご意見を伺ったり、過去にいただいたお問い合わせの内容もふまえているのですが、実際に体感してもらうためにサンプルをクリエイターやユーザーの方々に試してもらった上で、削除する方向に決まりました。」

3.マルチタッチ機能と物理スイッチ・スイッチの推し感のこだわり


ティロ「新製品のWacom Cintiq Pro 16(2021)には、ディスプレイのベゼルの上端に、マルチタッチのオン/オフを切り替える物理スイッチを搭載したのですが、これは意図してデザインしました。手動で切り替えられるマルチタッチのオン/オフ機能は一般的に人気があり、専用の簡単なアクセススイッチを用意しました。スイッチを左に押すとオフ、右に押すとオンと、素早く簡単に切り替えられるので、作業効率を高めることができます。」


松本「ユーザーはクリック感というか『押した感じ』を、大切にしているということもわかりました。従来のタッチパネルの場合は押している感じがしなく、何回かカチカチ…とやってしまうことがあります。また、電源ボタンに関しては、前モデルだと押している感触がわかりづらく、どうしても『ぬるっ』とした感じの押し感になってしまい、電源が入っているか入っていないかわかりにくいとお客様からのご指摘もありました。」


小幡「新しいWacom Cintiq Pro (2021)は、押し感についてもきちんと私たちでテストしています。柔らかいとか硬いとか、問題ないかきちんとチェックしました。」


松本「スイッチの位置もミリ単位で調整しましたね。試作機では、爪の長さがある程度ないとスイッチをオンオフできないという問題がありました。爪を短く切っている方も多くいらっしゃるので、指の腹でスライドできるスイッチにしようと話し合い、デザインしてもらいました。」


坂本「設計的には感覚も重さもこだわりました。あまりカチカチと音がするのも嫌ですし、全く音がしないというのも嫌だし、硬すぎても嫌だし、柔らかすぎても嫌だし…という感覚にも応えていきたかったので。様々な材料で試したり、作り方やスイッチの置き方などを微調整して、一番気持ちが良い押し感はどこかというのを探りながら設計しました。」

4.ExpressKeyを左右に4個ずつ搭載


ティロ「Wacom Cintiq Pro 16(2021)の筐体をコンパクトに保つために、背面両サイドにExpressKeyを配置するというアイデアを思いつきました。液晶ペンタブレットの両側に4つずつ8個のExpressKeyを配置したので、利き手に関わらず利用いただけます。ExpressKeyをデザインする上での課題は、見えない場所に配置したExpressKeyを正確にどうやって押すかということでした。操作方法は4本の指のうちの1本をそれぞれのキーに置くか、筋肉の記憶に頼って1本の指で一つ一つのキーを押して操作することになります。操作性を考慮して、新しいExpressKeyの形状と周囲に段差を持たせたデザインにしたので、操作はすぐ慣れると思います。」


松本「Wacom Cintiq Pro シリーズには、ショートカットを設定できるExpressKeyがないデザインを採用していたのですが、今回はあえてExpressKeyを採用することにしました。理由の1つとしてはデスクトップセンターを開いたりといった、前モデルでできていたことができなくなることは不便だと感じていたことです。機能を削除することが全てではなく、やりたい操作にどうやったらすぐにたどり着けるのかと考えたときに、ExpressKeyは1つのソリューションだと考えました。そうなると表面にExpressKeyがあると、先程お話ししたように人によっては邪魔になるケースも多く、筐体の左右や上下にあると手に当たって違和感があります。当初は側面か裏面にExpressKeyを配置しようと考えていました。キーの数についてはいろいろなアイデアが出ましたね。10個など多ければいいわけではなく、左右に4つや3つ、あるいは2つにするなど使い勝手をふまえていろいろ考えました。」


ティロ「ExpressKeyを活用することを考えたときに、ある程度の数は必要だと思いました。背面の両サイドに配置した場合、軽く親指を画面に乗せた状態で人差し指から小指までを使ってピアノのように操作をする可能性を考慮してキーを4つにしました。またExpressKey自体に凹凸をつけて、操作がしやすいようにデザインしました。」


松本「複数モニタをペンタブレットで操作する際に使う『マッピング画面切り替え』といったワコムの特有の機能を知っていただくという意味でもExpressKeyは必要だなと感じました。ユーザーそれぞれの使い方に合わせて、ExpressKeyにcontrol+Zなど自由に割り振って使っていただければと思います。そういった観点から今回は「ワコムの便利機能」というような形で背面にExpressKeyを搭載しました。」

5.VESAマウントに対応


小幡「このWacom Cintiq Proというシリーズは、基本的にはプロ向けの製品になっているので、クリエイターの作業を止めないことを重要なポイントとして掲げています。カスタマイズ性や使いやすさも重要ポイントに含まれていて、VESAマウントへの対応もその1つです。アームやスタンドの選択肢が増えるといった点を大切に考えて企画しました。」


こちらが前モデルの背面


松本「前モデルのWacom Cintiq Pro 16のスタンドは、角度の自由度が限定されていました。ユーザーのお好みの角度はそれぞれ違うので、作業角度を自由に調整できるオプションのWacom Adjustable Standのほうが適しているのではないかと考えました。」

6.わかりやすいクイックスタートガイド

こちらはアジア版


小幡「クイックスタートガイドにもいろいろと手を加えました。クイックスタートガイドは、日本国外の意見も聞いた結果、国・地域によって好みが異なることがわかりました。日本は取扱説明書のような詳細なものを求めていて、ヨーロッパはシンプルなものが好まれますが、ヨーロッパは営業地域がとても広いので、15言語以上に翻訳する必要があります。アメリカは日本やヨーロッパの中間くらいの情報を必要としているというのが大きな違いです。それをふまえて今回はアジア版、ヨーロッパ版、アメリカ版の3種類を作ることにしました。アジア版は、接続の仕方も一から細かくご案内して、イラストだけではなく文字でもご案内する形になっています。アメリカ版と比べるとページ数も全然違うんですよ。そして、今回からQRコードを新規に取り入れたので、お客様の反応を楽しみにしています。」

7.液晶の色味も向上


松本「ディスプレイの色域も、プロフェッショナルの方々は色を気にされるので、Adobe RGBカバー率98%の色味に重点を置いたディスプレイに切り替わっています。」


坂本「プロフェッショナルにご満足いただける色再現性に関しても、前モデルよりも向上するよう開発を進めました。ディスプレイ部門の専門チームに製品コンセプトにあった液晶を選定してもらったので、より良いディスプレイの色再現や表現が実現に繋がったと思います。」

8.表面温度とファン音への徹底したこだわり


坂本「表面温度の熱というのは、かなりお客様からのご不満が強かったので、前モデルだけでなく常にワコムが抱える課題だと感じています。いかに表面が冷える空気の流れや、熱を抑えられるかというところにはかなり力を入れましたね。」


佐藤「それに対比してノイズ問題も、坂本さんはがんばってくれていましたね。」


坂本「熱を抑えるために内部にファンを入れるというのは、一つの対策ではあるのですが、熱を下げるためにファン音を回せば当然ファンの音は出てきてしまいます。お客様にとっては、作業の邪魔になることもあるので、いかにファンの音を下げつつ、熱を下げるかバランスを考慮しています。」


松本「ファンの音は、実際に何度も聞き比べました。回転数をどれくらいにするかというところも課題でしたね。例えば回転数が数百回転落ちるだけでも、不快と感じられる音にならなくなる場合もあります。回転数が変わることで感覚は変わるものなので、温度とファンの回転数のバランスを探していましたが、満足なものが作れたと思います。」

9.描き心地もさらに向上


坂本「描き心地も良くなっています。描き心地を良くするためにガラスにアンチグレア加工で凹凸を付けていて、それが光を反射してキラキラして見える現象があるのですが、このディスプレイのギラツキもだいぶ改善しました。描き心地も前モデルと比べるとペンの追従性が上がりました。エンジニアリングで改善して、かなり良くなっていると思います。」

10.PVCフリー化・サステナブルへの配慮を徹底


松本「PVCという素材はポリ塩化ビニルなんですが、燃やすと有害な気体が出たりするので、そういった素材を使わないように取り組みました。内部の機構の部分では、一部のモデルではすでにPVCフリーは達成していたのですが、これまではUSB Type-Cケーブルといった一般的なケーブル類にPVCフリー素材は採用していませんでした。PVCフリーはエコフレンドリーではあると思っているのですが、そこは佐藤さんが苦労しましたよね。」


佐藤「そうですね、電源ケーブルに関しては、PVCフリー素材を使用できない国もあるため、一部の国ではPVCのままとなってしまいましたが、とても苦労しましたね。エコを追求しはじめるとコストが結構かかってしまうので、私たちが今後取り組んでいかなければいけない課題だと感じています。パッケージも段ボールだけにしたり、余分なケーブルを入れないで廃棄を減らしたり。ビニールも減らして全部紙にしました。これからは世界環境を考えて、製品を作っていかなければいけないと感じています。今回発表した新製品が先駆けとなり、今後も環境に配慮した製品作りにチャレンジしていければと思います。」


坂本「やはり『サステナブル』は製品開発する上での鍵になっています。当然材料だとか作り方だけでなく廃棄も含めてですね。ワコムとしても世界環境にどう貢献して協力できるか、今とても考えられていますね。」




―最後にユーザーのみなさまへメッセージをお願いします


松本「今回の製品は、お客様の声を強く反映できたと思っています。お客様からいただいた改善点を真摯に受けて形として、お客様にご提供できると感じています。」


小幡「ワコムのチームメンバーが同じ方向を見て、ご用意できた製品だと思っているので、コロナ感染が心配な状況が続いていますが、ぜひいろいろなところで新しくなったWacom Cintiq Pro 16(2021)を体験して、満足してご購入いただけるよう、ご検討いただければ嬉しいです。」


坂本「今までのWacom Cintiq Pro 16の評価を聞いていて、購入を躊躇されているお客様は、ぜひWacom Cintiq Pro 16(2021)と比べてほしいと感じています。ワコムとしてお客様の声を真摯に受け止めて、製品作りに取り組んでいるということを知っていただければ幸いです。」


佐藤「お客様の声を受け止めて、今できる最大限の改善を盛り込んだ渾身の作だと思っています。チームメンバー全員でお客様の声を、絶対にこの製品に反映して、改善するぞという、並々ならぬ意気込で取り組みました。ぜひ触って感じていただいて、ご購入を検討いただければ幸いです。」


角井「今回の製品だけではなく、これからの製品もまだまだ控えていますので、ぜひ触ってもらって、正直な声をお聞かせいただければと思っています。」


ティロ「新しいWacom Cintiq Pro 16に加えた改良ポイントによって、ユーザーの皆さまが作品制作をする上で、さらに使いやすくなったと思います。ユーザーの創造性をさらに高める一助になれば嬉しいです。引き続きお客様の声に耳を傾け、お客様のニーズに応じて製品をさらに発展させていきますので、今後もフィードバックをいただきたいです。」



今回「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」は、個人や企業といったさまざまなお客様の声から誕生した製品です。製品企画チームの発足から、製品に落とし込むまで新しいチャレンジを経て「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」の発売に繋がりました。「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」の開発にあたり、特にこだわったアップデートのポイントを10個伺いましたが、それ以外にも細部にわたって改良が加えられています。「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」だけでなく、これからのワコム新製品も、新しい開発体制でお客様の声を第一に考えた製品作りを行っていきますのでぜひご期待ください。



→ 前編はこちらから

「製品作りの根底から見直す、お客様の声を第一に考えて生まれ変わった「Wacom Cintiq Pro 16(2021)」の制作秘話【前編】





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