「うらやましいほど仲良し」家庭で起きた虐待事件

「すごい仲のいい親子だった。うらやましいくらい」近隣住民がこう語る家族に何があったのか。傷害の疑いで逮捕されたのは根岸優貴容疑者・34歳。東京・大田区の自宅で、1歳5カ月の次男の体をつかみ、揺さぶるなどの暴行を加え、ケガをさせた疑いが持たれている。

事件は10月23日朝に起きた。「子供の意識がない」との通報が消防に入り、次男は病院に搬送された。意識不明の重体だった。警視庁大森警察署の調べに対して「子どもがぐずったの、しつけのためにやった」という趣旨の供述をしている。

逮捕された根岸優貴容疑者(34)(25日 大森署)
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大森署は、暴行の経緯を調べているが、もしかしたらこの事件は防げたのかもしれない。事件発生からさかのぼって取材すると、すでに虐待の”兆候”が見られていた。

近隣住民から“虐待疑い”の通報

事件のおよそ4ヶ月前。「親の怒鳴り声と子供の泣き声が聞こえる」近隣住民から1件の通報が児童相談所に寄せられていた。児相では、虐待の疑いがあるとして家庭訪問を実施。叱り方などについて助言・指導を行い、根岸容疑者と妻は素直に聞き入れたという。

事件が起きた根岸容疑者の自宅アパート(25日 大田区)

その際、長男、次男の体に傷やアザは確認されなかった。その2カ月後、児相では、経過観察として2度目の家庭訪問を行った。虐待を疑うような通報は寄せられておらず、親族との付き合いも確認されていた。

近くの児童館を利用していたため、そこでのケアも可能で、虐待のリスクは減ったと判断。児童相談所としては対応を終えることになった。しかし、事件は起きてしまった。

警視庁に情報提供はなし・・・

2020年4月、児童虐待防止法が改正された。しつけ名目の体罰を禁止する規定が盛り込まれた。この背景には、東京・目黒区で起きた結愛ちゃん虐待死事件、千葉県・野田市で起きた心愛ちゃん虐待死事件では、いずれも、「しつけ」と称した虐待が繰り返されていた。

児童相談所は、2回に渡って、根岸容疑者宅を訪問していたが・・・(25日 大田区)

今回の事件では、児相から大森署に対する情報提供や相談などはなかった。根岸容疑者らが助言を受け入れ、様々な支援も受け入れる意思を示していたことから、警察との”情報共有”には至らなかったという。今後、児相では、対応に問題がなかったか検証する方針だ。

“おせっかい”が子どもを救う

今回の事件を取材すると、誰かがもっと根岸容疑者の家庭を気にしていれば、防げたのではないかと思えてならない。近所の住民がおかしいと思い通報し、児相は動いた。しかし、虐待の芽は摘めなかった。その後、何らかの兆候はなかったのだろうか。

調べに対して根岸容疑者は「子どもがぐずったの、しつけのためにやった」などと供述している

東京都では、児童虐待防止のため、「東京OSEKKAI計画」として、心遣いや声かけなど、ちょっとしたことで地域の親子を見守ろうと呼びかけている。2020年度、都内の児童相談所が対応した虐待の件数はおよ2万5000件。この10年間でおよそ6倍も増えた。

ただ、我が子を虐待する親が激増しているという訳ではない。児童虐待が社会問題化する中、”おせっかいな”大人が増えて、通報件数が増加したことを意味する。11月からは児童虐待防止推進月間が始まる。自分ができることはなにか、改めて考える機会にしたい。

(フジテレビ社会部・警視庁担当 山口祥輝)