日本なら違法!「ブルームバーガー」タダで大盤振る舞い
この記事の画像(6枚)“超・後だしジャンケン”戦略で3日の「スーパーチューズデー」から野党民主党の大統領候補者レースに本格参戦する、大富豪のマイケル・ブルームバーグ前NY市長。これまでに450億円をつぎ込んでいると報じられた桁違いの資金力が注目されている。
“最大のヤマ場”、スーパーチューズデー直前の1日、激戦区テキサス州の集会では、
「私が大統領になったら、大統領執務室からツイートをしない!」とツイッターを多用するトランプ大統領をチクリ。これに会場はかなりの盛り上がりをみせた。
しかし驚いたのは「盛り上がらせ方」。会場の中にはワインやビールを無料で配るバーが設置され、会場の外のフードトラックには「ブルームバーガー」、こちらもタダ。ジューシーな牛肉のサーロインにカリカリベーコンでかなり美味しいと評判だ。日本だったら完全に公職選挙法違反のレベルだが、その資金力にモノを言わる戦略は次元が違う。
マンハッタン一等地に””55億円”邸宅
いったいどれくらいの「お金持ち」なのか。
総資産6兆円、世界第9位の大富豪と言われているが…これだけでは、ピンと来ない。
いったいどんな家に住んでいるんだろうと思い、所有する大豪邸を取材することにした。
ブルームバーグ氏が所有する不動産は国内外に数えきれないほどある。大手メディアの報道や、公開されている納税情報などを基に取材に向かった。
まずは、ニューヨーク・マンハッタンの高級住宅地。セントラルパークはほぼ真横で庭のように見下ろせる(←住民になった気分を妄想)。メトロポリタン美術館も目と鼻の先。映像でみると、細長い白壁のアパートに見えるが、隣の建物ともつながっていて、一つの住宅とみられる。推定評価額は55億円!(ウォールストリート・ジャーナル紙の推計)
ぴっちりと閉じられたカーテンの向こうからは、シャンデリアの光が漏れている。扉から出てきたのは「2020年(大統領)にブルームバーグを!」と書かれたバッヂを付けた男性。カーペットらしきものをこの豪邸に大量に運び入れていた。これほどの優雅な邸宅にも、選挙というものはあわただしさを運ぶのだろうか。
ホームパーティも桁外れ!招待客”1500人”
ブルームバーグ氏はニューヨーク郊外にも不動産を所有していて、スゴすぎる逸話が多数ある。馬術のプロ騎手である娘のために広大な牧場付きの土地を買ったとか、ベッドルームが11ある物件などなど。そのうちの一つ、ウェストチェスター郡にある住宅を訪れた。
上品なベージュの外壁、二階建ての家。確かに大きいが、“そびえ立つ“というほどではない…と印象を持ったが、あるウェブサイトが載せている衛星写真を見ると、星形の巨大な建物が広がっていた。(お見せできず残念!)私たちが公道から撮影できたのは、「星」の尖った部分の先端、ほんの一部だったようだ。
公道から取材していて、とかく目を引くのは、ドーンと広がる大きな池。日本なら大きな公園にあるような規模の池だ。初夏に池のほとりに置かれているボートにでも乗ったら、さぞかし気持ちいいだろう。(再び妄想)
ブルームバーグ氏は、ここでどんな生活を送っているのだろう?近所の男性が教えてくれた。「マイケルは何年も見ていないなあ。彼はナイスガイだよ!20年くらい前に、近所の住民や従業員をあのお屋敷に呼んでくれて、パーティーをしてくれたんだ。1500人くらい来たんじゃないかな!」
1500人のホームパーティー…もはや、妄想すら追いつかない。
幻の「特大ソーダ禁止条例」 NY市民に心境の変化?
大富豪のブルームバーグ氏。では、政治家としては、どう思われているのか。
多くのニューヨーク市民の記憶に残っている幻の政策がある。「特大ソーダ禁止条例」だ。2012年、ブルームバーグ市長(当時)は、肥満防止対策のため、一部飲食店で、470ミリリットル以上の特大のソーダ飲料の販売を禁止する条例を提出。しかし、一部市民や飲料業界が猛反対。翌年、裁判所が、「独断的だ」として無効の判断を下し、ブルームバーグ氏肝いりの条例は幻のものとなった。
8年前のこの騒動について尋ねると、ニューヨーカーたちは確かに覚えていた。
ある男性は、「馬鹿げているよ!何を飲んじゃいけないか、なんて、政治家が決められるものじゃない!」
たしかに、ニューヨーカーは指図されることを嫌う。一方で、こんな意見も多く聞かれた。
「確かに不健康だよね、特大サイズのソーダは砂糖がいっぱい」
「あの当時は、クレイジーな考えだと思ったよ。でも、市民の健康面を考えてくれていると思うと、数年経ったら理解できた」
なるほど。後になって、理解できたという人もいる。ひょっとすると、時代の先駆け的な存在だったのだろうか。
ブルームバーグ氏の公式サイトを見てみると、今回は「特大ソーダ禁止」は公約に入っていない。ただし、「風味付きたばこ(電子たばこ、メンソール風味含む)」も禁止するほか、たばこの税金も上げるとのこと。国民の“嗜好”に切り込む形での健康政策は多いようだ。
ヤマ場、スーパーチューズデーで現在トップを走るサンダース候補やバイデン候補にどれだけ迫れるか。健康志向の大富豪、国民の判断は、いかに。
(取材:中川真理子、柳川晶子/撮影:Andy Toshio Mrose)