患者を殺害した心境「ホッとした」

「本当に申し訳ないのですが、ホッとしたという気持ちでした」振り絞るような、か細い声だった。元看護師の久保木愛弓(34)被告は、消毒液入りの点滴で、患者を殺害した時の”心境”を、そう答えた。

殺人などの罪に問われている元看護師・久保木愛弓被告(34)
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久保木被告は、2016年、当時勤務していた、横浜市神奈川区の旧大口病院で、入院患者の西川惣藏さん(88)、八巻信雄さん(88)、興津朝江さん(78)の点滴に消毒液を混入し、3人を殺害するなどした罪に問われている。初公判で起訴内容を認め、裁判の争点は刑事責任能力となった。

22日に開かれた論告で、検察側は「心神耗弱の状態にあったとはおよそ言えず、完全責任能力があったことは明らか。身勝手極まりない動機で酌量の余地はない」として死刑を求刑した。一方、弁護側は「事件当時、心神耗弱状態、無期懲役が相当」と反論した。

「死んで償いたい」最終意見陳述で死刑を覚悟

この日、久保木被告は、グレーのスーツ姿で、メガネをかけ、静かに被告人席に座っていた。長い髪は後ろで束ねられていた。ベージュ色のハンドタオルを、ずっと握りしめていたのが印象的だった。最終意見陳述で久保木被告は用意していた紙を読み上げた。

久保木愛弓被告:看護師という人の命を守る仕事に就きながら、自分の芯の弱さ故に、このようなことをしてしまい深く反省しています。私の身勝手な理由で、大切な家族を奪ってしまい大変申し訳ないと思っています。死んで償いたいと思っています

最終意見陳述で久保木被告は「死んで償いたい」と語った

久保木被告は死刑を覚悟していた。しかし、久保木被告を、連続点滴死事件へと追い詰めた「身勝手な理由」とは何だったのか。それは、17日に開かれた被告人質問で、彼女の口から語られていた。

入院患者が急死 その後の”出来事”が運命を変えた

久保木被告は、2015年、大口病院に就職した。終末期の患者を受け入れることで知られる病院だ。翌年3月、ある入院患者の容体が急変。久保木被告が、救命措置を行ったものの、その患者は亡くなったという。その後の”出来事”が彼女の運命を変えた。

  弁護士:急変したのに気が付いたのは
久保木被告:私です
  弁護士:救命措置も取った?
久保木被告:はい
  弁護士:でも患者が亡くなった、看護師に殺されたようなものだとか言われた?
久保木被告:訴えると言われたような気がします。一番強く感じたのは怖いということです

久保木被告は、急死した患者の遺族への対応に”恐怖心”を抱くようになった。そして・・・

この”出来事”の後、久保木被告は、自分の勤務中に、患者が亡くなった際、家族に説明することが怖くなったという。

久保木被告:私の勤務中に患者が亡くなるを避けたくて、ヂアミトール(消毒液)を入れて、私がいない時に亡くなれば、私の勤務中に亡くなるリスクを避けられると思いまいました。

そして、消毒液入りの点滴で興津朝江さんが亡くなったことを、知った時の気持ちを聞かれ、
「本当に申し訳ないのですが、ホッとしたという気持ちでした」と答えた。久保木被告を擁護するつもりは毛頭ない。間違いなく「身勝手な理由」だ。ただ全ての事件にキッカケはある。判決は11月9日に言い渡される。

(フジテレビ社会部・横浜支局 魚住菫)