「与党でも野党でもない」維新が指摘した「予算案」質疑の少なさ

国会では参議院予算委員会の審議が始まり、新型コロナウイルス対策や東京高検検事長の定年延長問題、そして桜を見る会の問題などをめぐっての質疑が繰り広げられている。ただ、本来の審議対象である来年度予算案に関する直接的な議論は盛り上がりに欠けている。

実は、2月26日の衆議院予算委員会で、「野党にも与党にも交ぜてもらっていない」という日本維新の会の遠藤国対委員長が次のような指摘をした。

「予算委員会に関し、地元に帰ると、予算案の質疑、国民生活の議論を聞きたいとよく言われる。私たちの生活がどうなっていくか聞きたいと指摘を受ける」

その上で遠藤氏は、日本維新の会で調べたという、この国会での予算委員会の質問時間に関するグラフを提示した。そのデータでは、2月3日から20日の間の12日間の予算委員会で行われた大臣に対する質問時間・約68時間のうち、「予算案」に関しての質疑は与野党共に13時間ずつにとどまっていた。

日本維新の会の遠藤国対委員長

そして「新型コロナウイルス」に関しての質疑は、与党が約3時間、維新を除く野党が10時間50分。さらに配分時間が元々多い野党の質問を見ると、桜を見る会などの「政権批判やスキャンダル追及」についての質疑が24時間以上と、質問時間の約半分となっていた。

遠藤氏はこのデータを元に、立憲民主党などの野党を批判すると共に、予算案の担当大臣である麻生財務相は74時間も着席しているのに、20回しか答弁していないと指摘。麻生大臣は次のように皮肉を述べた。

「20回、こんなありましたかね…。正直な実感ですけども。国会の運営の話ですから、よくわかってますよね、何を運営したいんだか。財務大臣としてコメントはありません」

麻生財務相

遠藤氏は安倍首相と「たこ焼き問答」で和やか質疑に

そして、遠藤氏は、安倍政権の経済政策をたこ焼き店「安倍屋」の経営になぞらえ、国債という借金が増えて経営が厳しくなっていく中での今後の改革について質した。それは、たこのサイズを小さくする(行政サービスを効率化する)か、1パックあたりのたこ焼きの数を減らす(行政サービスを減らす・重点化する)か、たこ焼きを値上げする(増税)か、それとも維新の提唱するような工夫してたこ焼きをおいしくする(規制緩和や成長戦略の推進)戦略をとるかというものだ。その上で安倍首相に対して成長戦略や規制改革の手薄さを指摘し、「たこ焼きにちなんで説明を」と求めた。

「安倍屋」を建て直すには

これに対して安倍首相は、たこ焼きを半分にしてはいけないというルールを変えたり、たこ焼きは丸型でないといけないのか再考したり、たこ焼きを輸出していくといった観点で、規制改革・成長戦略を進めていく考えを示した。

両者の例えがわかりやすいかどうかはともかく、目をひく質疑ではあった。一方で、質疑は非常に和やかであり、やりとりに緊張感はなく、閣僚席からも笑いがこぼれていた。安倍首相の答弁も特に踏み込んだものはなかった。

枝野氏は大学のクラスメートと直接対決。

一方、この日の予算委員会では野党の立憲民主党と国民民主党の代表が相次いで答弁に立った。衆議院での予算委員会をめぐる攻防が山場を迎える中で両党が「勝負どころ」と判断したもので、立憲の枝野代表と国民の玉木代表は質問内容についても連携して臨んだ。

そして枝野代表は、新型コロナウイルスをめぐる政府の対応について、安倍首相や加藤厚労相を約1時間にわたって追及した。さらに最後の10分間では、現在の官邸に近いと指摘される黒川東京高検検事長の定年延長問題について取り上げ、国家公務員法と検察庁法をめぐる解釈変更を口頭で決裁したという森雅子法相を厳しく質した。

黒川東京高検検事長の定年延長問題

実は、枝野氏と森氏は共に東北大学法学部出身で、同じクラスで机を並べた正真正銘の“クラスメート同士”だ。さらに両者ともに弁護士資格をもっているほか、森氏は枝野氏のウグイス嬢だった過去もあるという。

そんな同級生同士の議論は、激しい法律論争となり、枝野氏は「森大臣も弁護士です。私も弁護士です」と言及した上で、「この人事は不当だ。(中略)日本の司法制度の崩壊です。こんなことをあなたはしているんだという自覚を持ってやっていただきたい」と声を張り上げた。

枝野氏が質問を終えた後には、質疑時間が終了しているにも関わらず森氏が歩み出てこちらも声を張り上げて答弁し、予算委員長が注意するなど、委員会室は緊張感に包まれた。

森雅子法相

「何でも質疑していい」予算委員会の適切なあり方は?

予算委員会は、「予算」の内容を議論するのは勿論だが、予算=国のあり方を決めるものという認識のもとに、時の政権をめぐるあらゆる問題について質疑を行うことのできる場と認識されている。そのため、閣僚の資質やスキャンダル追及を含め、野党が政権を批判する質疑が多く行われている。それは少なくとも一定の国民が求めている質疑ではあるが、結果として、維新の遠藤氏が指摘しているように、国民生活に直結する予算に関する質疑がおろそかになるという面もある。実際、枝野代表の今回の質問時間では予算案本体に直接関係する議論はなかった。

一方で、与党議員の質問や、維新の会のように政府与党と一定の関係を持つ野党の質問では、暮らしに関わる質疑であっても、緊張感という面では物足りない質疑がとなることが少なくない。

また、与野党どちらの質問であろうとも、首相や閣僚側の答弁姿勢が問題となることが多いのも周知の通りだ。

各党、あるいは各議員が、この予算委員会という花形の場でどんなテーマをとりあげ、緊張感があり、かつ国民にわかりやすく、国民のためになるような質疑を展開できるかは、その政治姿勢を象徴するものになる。参議院での今後の予算委員会の審議において、どれだけ充実した議論が展開されるかが見どころだ。

(フジテレビ政治部 大築紅葉)