鹿にまつわる「奈良ライフハック」が話題

日本国内に住んでいても、「こんなこと知らなかった!」という驚きがそこかしこにあふれているのが、“ご当地”の面白いところ。以前編集部では、福井県民が学校でカニの食べ方を習っていることを取り上げた。

(関連記事:福井県民は「カニの食べ方を学校で習う」らしい…うわさが本当か県に聞いてみた

そんな“ご当地”情報の中で、新たにSNSに投稿された奈良県の“独自ルール”が面白いと話題になっている。




「奈良の幼稚園、遠足のお弁当が『必ずオニギリにしてください』と書いてあって、キャラ弁とか力入れちゃうママがいて、わたしもあれがよかったー!とか羨ましがる騒動でもあったのかな…と思っていたら、お弁当だとシカに襲われたときすぐに逃げられないから、というナラ・ライフハックだった… 」


短歌を中心とした創作活動をしている天野慶(@utataneko57577)さんが投稿したのは、子どもが通う幼稚園から届いた、奈良公園への遠足のお知らせについての内容。

遠足の楽しみのひとつであるお弁当だが、その中身は「おにぎりのみ」と限定されていたそうで、このお知らせを不思議に思った天野さんが幼稚園の先生に聞いてみたところ、「鹿に襲われてもすぐに逃げられるように」という驚きの理由だったというのだ。
 

ぐいぐい来る鹿たち(画像はイメージ)
ぐいぐい来る鹿たち(画像はイメージ)
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奈良県ならではの生活術、“ナラ・ライフハック”と名付けられたこの投稿。

投稿に対して「鹿が弁当を奪いに来るのはガチです」という証言もあり、天野さんによると、お弁当はおかずやデザートなどもNGだったそうで、いかにスピード感を持って逃げることが求められていたかが伝わってくるが…

以前、編集部では奈良公園の鹿によるケガが増えている、という記事をご紹介した。
(関連記事:奈良公園のシカによるけが人が過去最悪...未然に防げる「シカサイン」のやり方を聞いた

天然記念物の鹿たちと間近で触れあうことができるのが魅力のひとつでもある奈良公園。しかし実はこのような危険も日常茶飯事で、「鹿から逃げるため」のライフハックを幼稚園に発信しているのだろうか。

奈良県庁にある奈良公園室の担当者にお話を聞いた。
 

奈良公園は「特に発信はしていない」

――この“ライフハック”を発信しているのは公園?

地元の幼稚園や小学校などに、遠足のお弁当の指導をしているということはありません。鹿から逃げやすいようにお弁当をおにぎりのみにするというのは初耳で、「こういうこともあるのか」という感じですね。

修学旅行生など、公園内にお弁当を持ち込む、というのは珍しい光景ではありません。公園には柵などもなく、誰でも自由に入ってこられる環境となっているので、特にゲートで飲食物の持ち込みについてチェックする、などということもありません。


――お弁当を食べている時に鹿に囲まれて危険…ということは本当にある?

特に大きなトラブルとなった報告はありませんが、人間が食べているものの匂いにひかれて鹿が寄って来るということはあります。


――では、「鹿から逃げやすいお弁当」というのは良いアイデア?

良い取り組み、と言えるかはわかりませんが…特別天然記念物である鹿を守るため、人間の食べ物を与えたり、ごみを捨てないよう注意してほしいと思います。
 

ぐいぐい来る奈良公園の鹿たち(画像:天野慶(@utataneko57577)さん)
ぐいぐい来る奈良公園の鹿たち(画像:天野慶(@utataneko57577)さん)

奈良公園室によると、「お弁当はおにぎりのみを推奨」というのは特別、来園者に指導しているというものではないそうで、あくまで幼稚園独自の“ライフハック”だったようだ。

しかし、実際にお弁当を食べているところを鹿がロックオン…ということはあるそう。そこで、奈良公園が注意してほしいと強調したのは、鹿に人間の食べ物を与えてしまわないこと。

噛まれたり、突進されるといった大きなトラブルは少ないかもしれないが、集まってきた鹿に驚いて弁当やごみを置いたままその場を離れてしまうということは、鹿の健康を害してしまうことにもつながるのだ。

また、奈良県の鹿の愛護団体にもお話を聞いてみたところ、やはりこの“ライフハック”は初耳だったそうだが、園内での飲食中に鹿に囲まれたときは「食べているものを隠したり、その場から離れるのが良い」とのこと。

食べ物を持ったまま逃げたり、隠したり…というのは鹿にとってストレスになってしまうのでは?とも思ったが、身の安全を守るだけでなく、鹿たちの健康を守る意味でも、「おにぎりのみのお弁当」は理にかなっているようだ。


ちなみに、「幼稚園ではいつもお弁当を持参しているので、おにぎりのみだとちょっと物足りないのでは?」と心配していたという投稿者の天野さん。しかし遠足後は「やはり襲われている方を見たり、鹿が寄ってくるのを体感して、おにぎりでよかったと思っていたようです」と教えてくれた。

また、天野さんのこの“ナラ・ライフハック”の投稿には、奈良県民と思われるユーザーが「奈良県民ですが本当です」「小学校の遠足が、奈良公園でした。母は大きなおにぎりを二つ握って持たせてくれました」「地元奈良です。すげー分かります」などと反応している。“奈良公園あるある”と言っても間違いではないのではないだろうか。

思わず笑いを誘われてしまう、一見コミカルな“ライフハック”だが、実は人間と動物たち双方にメリットがある大事な知識が詰まっていた。
 

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プライムオンライン編集部
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