国会では、参議院予算委員会で来年度予算案の審議が行われている。初日から自民党・松川議員の「高齢者は歩かない」のヤジで騒然とする場面があったが、この国会は衆議院での審議も含めて、野党・与党、そして安倍首相までがヤジを飛ばす「ヤジ国会」となっている。ヤジは「議場の華」とも言われるがこの国会では何が起きているのか、そして野党の「ヤジ将軍」に「なぜヤジるのか」を直接聞いてみた。

止まらない国会でのヤジ、典型例は?

2月18日の衆議院予算委員会では「桜を見る会の前夜祭」をめぐり、こんな質疑とヤジが繰り広げられた。

野党・今井雅人衆院議員:
「もう一回言います。営業の秘密に関わるためということをホテル側が言ったのか、言わないのかYESかNOです。この部分を言ったか言わないか教えてください」

野党・今井雅人衆院議員
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菅官房長官:
「申し上げたように総理自身がこの場で答弁して議事録に残っている。(中略)新聞社のこと(報道)とこの場で違うといわれてもきのう総理が発言を…総理がきのうここで正式に答弁されていること」

菅官房長官

ヤジ:
「違うんだよ」「答えていないじゃないですか」「時計止めろよ!」「棚橋!(予算委員長)」

野党の「ヤジ将軍」

また、小泉進次郎環境相が、政府の新型コロナウイルス対策本部の会合を欠席し、地元の新年会に出席していたことをめぐっては、同じ日に次のようなやりとりが展開された。

共産・宮本徹衆院議員:
「何度聞いても同じペーパーしか読まず、おっしゃる通りということだが、後援会の新年会行事に出たかYESかNOか」

共産・宮本徹衆院議員

小泉環境相:
「先ほどから答弁変わっておりませんで、宮本先生のおっしゃる通り…」

小泉環境相

ヤジ:
「質問に答えてないよ!」

棚橋予算委員長:
「ご静粛にお願いします」

棚橋予算委員長

このように、政府側が答弁に直接答えていない、あるいは不十分だとして野党がヤジを飛ばし、予算委員長が野党の抗議を受け付けず議事を進めようとするとさらにヤジが飛び、与党議員も野党議員を批判するヤジを飛ばすという光景が繰り返された。

そしてヤジで騒然とすることで質疑が止まったり、閣僚の答弁が聞こえなくなるなど、国会審議にも大きな影響を与えた。棚橋予算委員長が「静粛に」などと静止した回数は400回以上にのぼるという。

「静粛に」などと静止した回数は400回以上にのぼる

ヤジを浴びせ、浴びせられる国会の「ヤジ将軍」

このように様々なヤジが飛び交う中でもひときわ”存在感”を発揮していたのが「ヤジ将軍」の異名を持つ立憲民主党の本多平直衆院議員だ。大声のヤジで知られ、棚橋予算委員長から何度も名指しで注意され続けた”常習犯”だ。

本多議員の登壇・衆院本会議

しかし、ヤジを飛ばせば、浴びることもある。2月27日の本会議では、野党側が提出した棚橋予算委員長の解任決議案の趣旨説明を行うため本多議員が演台に立つと、与党側から本多氏にヤジが飛んだ。

反対多数で否決された棚橋予算委員長の解任決議案

本多議員:
「(解任決議案の理由は)総理寄りの全く不公正な委員会運営です。私が最初にあなた(棚橋委員長)のことを変だと思ったのは…」

本多議員

ヤジ:
「お前が変だー」

本多議員:
「光栄です」

(中略)

大島衆院議長:
「不規則発言には答えないでください」

大島衆院議長

与党側のヤジと言えば、この国会では、安倍首相が辻元清美議員に浴びせた「意味のない質問だ」や、杉田水脈議員が国民民主党の玉木代表に浴びせた「だったら結婚しなければいい」などもあったように、野党顔負けのヤジが出ることも少なくないのは事実だ。

実際に「ヤジ将軍」に聞いてみたら「あえてやっている」

こうした国会でのヤジについて、当の「ヤジ将軍」の本多氏自身はどう思っているのか、単刀直入に聞いてみると、次のように答えた。

「インターネットやテレビを見ている方からも批判されるのであまり自慢することではないと思うんです。あまりに政府側の答弁が何度も同じことの繰り返しで答えていなかったり、委員長のさばきが明らかにおかしくて、質問者が準備してきた質問が時間内にできなくなる、時間が削られても時計をとめない、そんなときに、明らかにおかしいことがあったときに、声をあげるというのは野党の国会議員として、一つの方法だと思っていて、自分は声も大きいし、それを頑張ってやらなきゃいけないときは、あえてやっているという思いです」

野党のヤジ

その上で本多氏は、野党が飛ばすヤジには2つの目的があると話した。1つは、質問に答えない閣僚や委員長の運営に対する“人としての怒り”だという。もう1つは、その場にいる与党議員に対する“問題提起”なのだという。つまり、おかしいことをおかしいとハッキリ言い、そのおかしさを周囲の与党議員らにも理解してもらうためにヤジを飛ばしているという。

また本多氏は、与党と野党では、ヤジを飛ばす意味には違いがあり、野党はヤジを飛ばす一定の権利があるが、与党はある程度控えるべきだという立場で、次のように話した。

「与党にヤジる権利がないと言っているわけではないが、(ヤジを)我慢するのが与党のふるまいではないか。ヤジは、(質疑や国会運営などについて)明らかにおかしいことがあったときに野党議員が反抗する一つの方法だ」

本多氏はヤジへの批判にどう答える?

確かに本多氏の言うように特に野党にとってヤジは必要という面もある一方で、大声でわめいたり、誹謗中傷をするような「不規則発言」とは分けて考えるべきだろう。

その点、本多議員は、恫喝とも捉えられかねないほど、大声でヤジを飛ばしていることもあり、「居丈高だ」「議事の邪魔になっている」などという批判も多い。本多氏に呼び捨てにされたことがある棚橋委員長は「本多さんはヤジを肯定していましたが、静かでないと当然質問答弁がよく聞こえません」と批判している。

本多氏は、自身のヤジに対する批判をどう受け止めているのか聞いてみると、次のように答えた。

「自分でも良くなかったと思うけど、そこまでの怒りだった。批判を覚悟でやっている。なので、なかなか国民すべてのみなさんに分かってくださいとは言えないし、批判もいただいているし、ちょっとなあっと思う方がいるのはよくわかる。参考までに、僕は安全保障委員会にも属しているが、ほとんどヤジったことないです。ヤジる必要ないから」

このように反省と開き直りともとれる姿勢が入り交じった気持ちを吐露した本多氏は、今後もヤジを続けるかについては、相手次第であり自身の問題ではないとの認識を示した。

今の野党のヤジは弱さ故の「泣き声」?あるべきヤジの姿は…

では、国会でのヤジはどういうものならばふさわしく、議論の活性化につながるのか。本多氏が登壇した先の本会議ではこんなやりとりがあった。

本多議員:
「私もヤジが少ない方ではありませんので」

ヤジ:
「多い方だよ。多い方だよ」

本多議員:
「まだまだ当意即妙で歴史に残る多くの方が納得するようなヤジができているとはとてもいえません。しかし私個人は議会を正常に運用するためにヤジが必要な場面や、ヤジが役立つ場面がやはりある」

本多議員

本多氏が言う「得意即妙で歴史に残る」ような品格のあるヤジならば、時に殺伐とした議場内でも笑いを誘い、問題の本質を浮き彫りにする「絶妙ヤジ」になりうるだろう。

ではなぜそうできないのか。本多氏を取材して率直に思ったことは、野党そのものが置かれている立場の弱さだ。「安倍1強」とも言われ野党が与党の半分の議席しか持たない中で、政権を追及しても納得のいく答弁は出てこない。そんな与党ペースの国会状況の中で、野党は泣き声をあげるかのようにヤジを飛ばしている面もあるのではないか。

本多氏は自らが「ヤジ将軍と呼ばれない局面が出来たらいいと思っている」と語った。議論が空回りしヤジが飛び交うだけの審議では、国民から「国会は何をやっているのか」と思われかねない。参議院は「良識の府」といわれる。野党は品位のない質問やヤジは自制しつつ自らの足腰を鍛え、政府側は質問をはぐらかすことなく真摯に答える。そんな「議論がかみ合った国会」の中でのキラリと光るヤジならば、国民の理解も得られるかもしれない。

(フジテレビ政治部 高橋洵)