市が定めた「100坪ルール」で土地が分断

東日本大震災で被害を受けた岩手・陸前高田市では、大規模なかさ上げを行い新たな街づくりを進めてきたが、そのかさ上げ地の65%で今も活用方法が決まっていない。

取材を進めるとその背景の一つに、市が定めた「100坪ルール」というものの存在が浮かび上がってきた。

震災から9年が経つ陸前高田市。1650億円をかけ、大規模にかさ上げされた市街地には更地が目立つ。

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その65%、35ヘクタールでいまだ活用方法が決まっていない。一方、市内では山を切り崩し高台の住宅地も整備されていて、新しい家が建ち並んできている。

2月22日、今泉地区の高台の宅地で新居を建てるための地鎮祭が行われていた。

中山浩さん(59)の一家。高台での住宅再建を希望した中山さんには市の区画整理事業に伴い、元々所有していた土地と交換する形で100坪分がこの場所にあてがわれていた。

中山浩さん:
やっと家が建つんだなというところですね

ーー高台に土地を求めたのは?

中山浩さん:
なかなか二度目はないと思うけど、また震災には遭いたくない

中山さんの一家は現在も4人で仮設住宅に暮らしている。市内では1月末現在、272人がプレハブ仮設での生活を余儀なくされている。

中山浩さん:
圧倒的に狭いです。窮屈でとても不便に感じる

長男・稜太さん(18):
人生の半分を暮らしているということなので。普通の家じゃないので、こんなところに友達も誘えるわけない

ようやくの自宅再建。その一方で、中山さんはある悩みを抱えていた。

中山浩さん:
この辺です。4メートル幅の12~13メートルくらい。せいぜい車何台か停めるくらい

区画整理事業で土地を交換する際、市は「高台について、造成できる広さに限りがある」などとし取得の上限を100坪までと決めた。

元々約110坪を所有していた中山さん。余った10坪分は高台の下に広がるかさ上げ地をあてがわれた。

しかし、細長く小規模な土地だけに活用法に困っている。

中山浩さん:
ほしい人がいれば貸すなり、売るしかないのかなと思いますけど。需要がなければ何ともならない

こうした声は高台に住宅を再建する他の被災者からも聞かれる。

仮設住宅の住民:
残されたかさ上げの土地が中途半端だから、皆さんその利用に困っているみたいですよ

仮設住宅の住民:
やっぱり20坪くらい残ったね、細長く20坪だからね、だから何も使われないのでは

震災前、今泉地区には約600世帯が暮らしていた。被災後、当時の住宅地はかさ上げされ平均8メートルの土が盛られた。しかし、多くの人が家を再建したのは高台で、かさ上げ地に残った土地を手放したいという人は少なくない。「100坪ルール」による土地の分断が、かさ上げ地の活用が進まない一因になっている。

そのいきさつについて戸羽市長は…

陸前高田市 戸羽太市長:
終の棲家に皆さんに移っていただくために、スピードをとにかく求められる中で、日本の歴史の中でもこんなことやったことがないから、(国などと)お互いに分からない中でやってきましたから、今その課題がもろに出てしまった。例えば15坪ずついくつかありました、合わせたら100坪になりますよ、というと使い道というのは出てくる。できるだけ有効活用できる区画にしていくというなかで活用を図っていければ

かさ上げ地に住宅を再建した人も

一方、かさ上げ地に住宅を再建した人もいる。菅野啓佑さん(78)だ。かさ上げ地であれば、元の土地と同じ程度の広さ(165坪)が得られるため、その道を選んだ。ここに暮らし始めて1年3か月になる。

菅野啓佑さん:
かさ上げ地にいれば自分の好きな木も植えられる。ちょっとした畑を作って好きなこともやれる

津波で姉を亡くした菅野さん。好きな映画を参考に被災直後から故郷に黄色いハンカチを掲げ、心の支えとしてきた。2019年の台風19号で中断したのち、3月、再び新居に掲げたが、その周辺に家はほとんどない。

菅野啓佑さん:
寂しいです。今はもう寂しいです。また皆さんがここにきてハンカチやっと揚がったなということで、またここに戻ってきてくれれば。何でもいいから家が建ってもらえればいいな、全部ふさがることはなかなかないでしょうけど。土地がふさがってほしい

市では2019年1月から土地の所有者と利用希望者を結びつけるための”空き地バンク”を設けているが、成約件数は8件に留まっている。

こうした陸前高田市の現状について都市計画の専門家は次のように指摘する。

東北大学工学研究科 姥浦道生准教授:
区画整理の規模感というものと、利用したいという人の利用意向が十分に釣り合っていなかった。中長期的にずっと続くのかというと、恐らくそうではないと思っていて、BRTの駅もありますし、ポテンシャルを持った場所をどう使っていくのかというのが、市の政策として重要になっていくんじゃないか

陸前高田市 戸羽太市長:
この街の雰囲気がいいからここに住みたいとか、やっぱり理由がなかったら人って来ないわけじゃないですか。復興期間の中でできる限り努力をして空き地を解消していくことも当然やっていかなければならない一方で、周りの環境を整えていくことによって人を呼び込みたい

前例のない街づくりを進める陸前高田。空き地を減らし住民が希望を持てるようにするための新たな取り組みが求められている。活用できていない土地でも固定資産税はかかり、被災者の負担になるという問題もある。今後、どうこの問題を解消していくのか、大きな課題となっている。

(岩手めんこいテレビ)