新型コロナ 新たにわかった特徴は…
国内で感染が拡大する新型コロナウイルス。3月6日には北海道で新たに7人、千葉県では新たに2人の感染が確認された。
感染拡大を防ぐ策が講じられる中、ウイルスの研究や感染者の治療を通し、新たにわかってきたこともある。
「Live News it!」では、感染症に詳しい昭和大学医学部の二木芳人氏に解説してもらった。
加藤綾子キャスター:
安倍総理の休校要請を受け、休校が実施されてから5日間、日ごとの感染者数をまとめてみました。潜伏期間があるので感染拡大防止に効果があったかわかるのはしばらく後になると思うのですけれども、やはり感染者数は増えていますよね
二木芳人氏:
ですが、例えばヨーロッパで今急激に感染が拡大しているドイツやフランスに比べると、1日の患者さんの数はまだそれほど多くありません。休校ですとか、イベントの自粛。そういうものの効果が出ているんじゃないかなと考えたいですね
WHOがインフルエンザと比較した新型コロナウイルスの特徴は以下のようなもの。
・感染力はインフルエンザが1人→1.4~4人に対して、新型コロナウイルスは1.4~2.5人。
・致死率はインフルエンザが1%未満に対して、新型コロナウイルスは3.4%。
・新型コロナウイルスはインフルエンザよりも重症化しやすい
二木芳人氏:
現時点で集積されているデータを見るとこの通りだと思うのですが、まだこの疾患の全貌が明らかになったわけではなくて、私たちが一番気にしているのは症状がないけれども感染している方々、あるいは非常に症状の軽い方が結構いるようですので、今から検査を進めてそういう人たちの数が増えてくると感染力もちょっと高くなるだろうし、逆に今度は致死率、重症度も下がってきますので、これらのデータは変わってくるかもしれない。
加藤綾子キャスター:
なぜ新型コロナウイルスは重症になりやすいのでしょうか。
二木芳人氏:
インフルエンザも状況によっては、特にお年寄りなどは毎年日本でも1000人、2000人が亡くなりますので、これも一概に重症化しやすいとも言えないです。
集団(クラスター)感染リスクの高い場所とは?
特に密閉空間でクラスター(集団感染)が発生している新型コロナウイルス。
クラスターが確認された場所は北海道のさっぽろ雪まつりと展示会、東京都の屋形船と病院、千葉県のスポーツジム、神奈川県の病院、新潟県の卓球スクール、愛知県のスポーツジム、大阪府のライブハウス、和歌山県の病院など、わかっているだけでも国内で10か所に及ぶという。
加藤綾子キャスター:
やはり密閉空間で猛威を振るうということなのでしょうか?
二木芳人氏:
そうですね。密閉空間、比較的狭いところにたくさんの人が入って距離が近いということが非常に重要で、そういうところでは飛沫感染あるいは接触感染も非常に起こりやすいので、やはりここに挙がっている場所だけじゃなくていろんなところで気をつけていただきたいというふうに思います
加藤綾子キャスター:
飛沫感染という言葉が出ましたけれども、飛沫感染だけではなくて新たな事象も次々と明らかになっているんです
ヒトからペットへの感染も?
加藤綾子キャスター:
まずはペットへの感染。5日、香港政府の発表によると、新型コロナウイルスに感染した60代女性のペットの犬から低レベルの感染が確認されたということで、これは飼い主からペットに感染した可能性があるということなんです。香港政府は「過剰な心配は抱かないように」ということなのですが、今後ペットを通して感染することも考えられるのでしょうか?
二木芳人氏:
そうですね。ウイルスは大体感染症を起こす相手は決まっているわけですから、動物にウイルスがつくということがありますけれども、動物が感染症という病気を起こしていないので一時のこと。ただし重症化しやすいような方はそういうところからウイルスをもらう可能性がありますので、動物に関してもやはり病気のある方は少しの間接触を避けた方がいいかもしれませんね
加藤綾子キャスター:
続いては排泄物なんですけれども、中国政府が発表した例では喉や鼻の検体で14回ウイルス検査をしても陰性だったのにもかかわらず、大便の検査で陽性となった。これはどんなことに注意していけばいいですか?
二木芳人氏:
もともとコロナウイルスというのは腸が好きなんですよね。SARSコロナのウイルスは腸から出てきて下痢もよく起こしたんですが、このウイルスに関しては下痢の症状も比較的少ないですからそこから感染するリスクは比較的低いと思いますけれども、そういうものにもウイルスがいるということを意識しておく必要があります
治療法に関する新たな報告
感染が広がる中、治療法に関する新たな報告も増えている。
1つ目がぜんそくの治療薬「シクレソニド」。
この治療薬をクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客で新型コロナウイルスに感染して酸素吸入を行っていた3人に対して投与したところ、2日程度で改善してうち1人は退院したという。
もう1つが、人工心肺装置を使った治療。
重篤な肺炎患者に人工心肺装置を使い治療したところ、少なくとも15人のうち4人に回復傾向が見られたという。
加藤綾子キャスター:
新型肺炎というぐらいなので、肺炎とか喘息と同じような特徴と考えていいのでしょうか?
二木芳人氏:
このシクレソニドというのは、吸入用のステロイドです。これを比較的重い患者にも使っているのですが、今のところたった3人のデータでも良い感触があります。実は国立感染研の方から「ウイルスをやっつける力があるのではないか」というものがあったので試してみたところ一定の効果が出たということです。まだ3人ですのでもう少し慎重に評価する必要があるかと思いますが、こういうものが効けば非常に有望ですね
ウイルスに「L型とS型の2つの型」
加藤綾子キャスター:
そしてウイルス自体の「型」についても新たにわかりました。
「L型」「S型」ふたつの型があり、「L型」の方が感染力が強いということなのですが、一度L型にかかって次にS型にかかるというなんてこともあるんでしょうか。
二木芳人氏:
まあそういうものもあったという報告ですね。これは今流行っているコロナウイルスを集めて遺伝子解析をして、どういうウイルスが流行っているのか調べてみるとこの2タイプがあると。S型の方が古いタイプ、動物から来た形に近い。そこからおそらく進化したのがL型で、こちらの方が感染力が強いということも分かっています。
面白いのは、武漢から出てきたウイルスはほとんどL型なんです。ところがその後いろんなところで見てみるとS型が少し優勢になってきている。その理由はいろいろ考えられますけれども、変わってきているんです。今後どちらが優勢になるかは見ていかなきゃいけませんね。
(「Live News it!」3月6日放送分より)